Rail & Bikes editorial postscript  ~ 鉄路と自転車な日々@東京西郊 ~

ガウディの伝言

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既に120年以上も建設が続いているガウディのサグラダ・ファミリア。日本語にすると聖家族贖罪聖堂という事になるが、その建設に参加している一人の日本人彫刻家が存在するという事は、この本を読むまで全く知らなかった。現在、サグラダ・ファミリア教会主任彫刻家の外尾悦郎氏著。(光文社新書)

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彼は石が彫りたくて彫りたくて、単身ヨーロッパへ渡った人だが、たまたま乗った列車でバルセロナに辿り付き、教会の脇に積まれていた石を見て、これを一つ彫らせて欲しいと頼み込む。そこから筆者の30年近い仕事が始まるわけだが、その経緯を含む内面から見たサグラダ・ファミリア、そしてガウディの設計思想の凄さが描かれていてとても興味深い。

一般に写真で良く紹介されているのはこの外尾氏が彫刻を手がけた「生誕の門」で、これだけでも驚愕に値する圧倒的な存在感を持った造形なのだが、実はまだ建物の側面入口にしか過ぎないというのが事実だ。この後、正面入口となるメインファサードや、主塔となるイエスの塔が建設される予定だが、主塔は高さ175mにも達するとの事で、現在の生誕の門100mに対し、さらに75mも高い建築物がその背後に聳え立つ計画なのだ。


この本の言及ポイントをいくつか挙げてみる。興味のある方はぜひ読まれたし。

・設計図なしでどうして建設出来るのか
・いったい、いつ完成するのか
・その構造は自然界を師とし、合理的
・曲線のようだが、実は直線を主体として構成
・当時から既にエコロジカルな設計をしていた
・絶賛する人(その一人がダリ)と酷評する人に分かれていた
・長年の危険な足場作業にもかかわらず、誰一人殉職者が出ていない
・当初は石で作られたが、途中からコンクリートに変更
・巨大な楽器であり、照明装置でもある
・その完成を、未来に実現するであろう技術に託していた?

もちろん、外尾氏が彫刻を手がけた経緯や、ガウディの残したヒントを頼りにそれらを実体化して行く過程についても詳しく書かれている。そして日本人の彼が、スペインの職工や指導者達にどうやって受け入れられ、信頼されるようになって行ったかについても。

私が学生の頃、講義の合間を縫っては学内の図書館に入り浸り、専門とは全く無関係の近代絵画や建築の本を読み漁っていた時期がある。その時に、写真を一目見てその威容...いや正直なところ「異様」さに大きな衝撃を受けたのがこの建築だ。数えてみるとちょうどその頃から、外尾氏はこの教会の建設に加わっていたようだ。

その後、写真やテレビ等で目にする機会がある毎に私の中では魅力が蓄積されて来ていたのだが、この本を読んでついに実物を見たい!という衝動が私を突き動かし始めた。さぁ、それが実現するのはいつの日か?そして、果たしてその時サグラダ・ファミリアは完成しているのか?あるいはさらに未来へと夢を繋いでいるのだろうか。著者の締めの言葉「サグラダ・ファミリアで会いましょう」が、今も心の中に響いている。

サグラダ・ファミリア外観(November 2004) Wikimedia Commons より

右側茶色の部分が生誕の門


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完成予想略図
関連リンク:

http://hiro1603.blog80.fc2.com/blog-entry-18.html

http://asayomi.seesaa.net/article/25955046.html

http://3daime.blog.shinobi.jp/Entry/101/

Gaudi and Barcelona Club

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