2007年3月but_s_l.gif [ メイン ] but_s_r.gif2007年5月

2007年4月 3日

サイドストーリー

第2話の執筆中で半分程度まで書けましたが、少し時間稼ぎ(^^;)。

えぇっと、本編の物語とはあまり関係しませんが、この駅周辺のエピソードをサイド(ショート)ストーリーとして合間合間でご紹介したいと思います。実は工作の手を動かしながら小ネタ考えてたのがたまっておりまして...。

以下の項目がありますので、ご希望があれば投票をお願いします。コメント不要ですので(もちろん頂ければさらに嬉しいですが)、この際通りすがりの方も一票どーぞ。トップから5つ位は掲載したいと考えております。

Quickvoter

Q.サイドストーリーどれが?

済:ストリートミュージシャン

済:下戸酒店

高架下モール

駐輪場

ビラ配り人

大型スクリーン

駅前ショッピングセンター

高架下駐車場

走る人

駅名標識





-結果を見る-


by pentacom.jp


気が向けばお一人様何票でも構いませんが、一時間内の再投票は制限されていますのでご了承を。

2007年4月 4日

ストリートミュージシャン

投票ありがとうございます。とりあえず、現状一位のやつで一発め。こんな感じで行きます。引き続きまだ投票はお受けしておりますので、よろしくお願いします。

ストリートミュージシャンのモノローグ

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ジャカジャーン♪ はい、「炎のデスマーチ」聞いてもらいました。さて次はっと…

でも何だね、昔は結構うるさがられたりとかしたもんだけど、最近は好意的に見てくれる人が多くなって嬉しいよな。路上出身でメジャーデビューするアーティストがたくさんいるせいかもしんないけど。でも俺はメジャーになるつもりはない。ま、なろうったってなれないのはわかっちゃいるけど、こうやって気ままにギター弾いてうたってんのが性に合ってるからやめられないんだ。昼間はしがない会社員だけど。

しかし、どうしてこう女子高生にばかり囲まれちゃうのかね?俺のソウルの叫びを聞かせたいのは、もっとジャンルの違う人たちなんですけど。それに、オジサンちょっと照れくさいじゃないか…、若く見えても実はもう40近いし。おい彼女ぉ、ケータイやってんならここにいなくてもいいんじゃないかぃ? …え?あ、電話のBGM代わりね。じゃあ少し…、彼の心に響くのを一曲、弾いてあげようか。

2007年4月 6日

下戸酒店

サイドストーリー、第二弾行きます。

クリックで拡大

喫茶店の隣りにある酒屋さんはこのほど、長年営業を続けて来た軌道線わきの店舗を閉めて駅前のビルへと移転した。店名の「下戸酒店」は”げこ”でなく店主の姓であり、かつ先代の出身地でもある某県「しものへ」町から名づけたという。その店の奥には立ち飲みの古びた小さなカウンターがあり、この先にあちこち散在する町工場の工員が帰宅途中に一杯引っかけていくのが常だったようだ。顔見知りの人達が店主と談笑しながら1~2杯飲んで、適度に体に染みて来た所で声をかけては駅へと去って行く。そんな角打ちの光景が目に浮かぶようだ。

ちなみに新しい店舗はすっかり洋風になり、店名も「リカーハウス・geko」としゃれている。みんな「しものへ」なんて呼んでくれずに「ゲコさん」で通っていたので、開き直ってその名前にしてしまったらしい。看板にでっかいカエルのキャラクターが描かれていると聞いたが、誰のアイディアなのだろうか。引越しを機に店主は隠居して息子が後を継いだそうだが、その息子、お酒の飲めない文字通りの下戸との事で、果たしてやって行けるのかどうか。

古い店舗は昼間はシャッターが閉ざされたままであるが、時々宵の口に少しだけ入口が開いており、その奥から元の店主と常連客の笑い声が響いて来る事もあるそうだ。

引き続き次作の投票はこちらで。

2007年4月10日

高架下モール

投票状況からすると次は「駅名標識」ですが、ストーリー上、第二話の後の方が良さそうなので、こちらから先にお送りします。
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高架下の商店街は小規模なものだが、一応その名を「Suijy」という。これは「すいじー」と読み、もちろん水神からの語呂合わせだが、結構読み辛いものがあるので、なかなかちゃんと呼んでくれる人のいないのが関係者の悩みの種だ。

土地柄特にお年寄りのために、「炊事」とか「粋爺」とかの漢字をあてがって憶えてもらおうと頭を絞ったのだが、考えてみるとそんな事する位なら「Suijy」なんてアルファベットにしないで、最初から「水神橋名店街」くらいで済ませておけば良かったのだと、当時CIを請け負ったデザイン事務所を恨む担当者の今日この頃なのだった。

ところで、ショッピングモールのこちら側には2箇所の出入り口があるが、高架下の連絡口は良いとして、水神森駅側に面したテラスのエントランスは何故こんな所に設けたのかが謎である。わざわざ袋小路のような横手へまわって出入りする人は少ないと思われるが、これは近い将来何か計画があっての事なのかも知れない。近頃では人通りの邪魔にならないのをこれ幸いと、路上パフォーマー達のたまり場となっているが、近くに住居もなく特に苦情も出ないので当局は大目に見ているようである。

投票はここらで終了としたいと思います。ご協力ありがとうございました。

2007年4月14日

駐輪場

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【駐輪場についての新聞記事】

駅周辺の放置自転車に業を煮やした市は、とっておきの奇策に出た。それは放置された自転車を処分… ではなく、自転車に対する愛着心を持ってもらい、合わせてその楽しみを伝えるため、定期的に市民サイクリングの催しを行なったのだ。この企画運営には市内のサイクリストやクラブにも積極的に加わってもらい、また自転車店も技術面のボランティアとして全面的にバックアップを行なった。その結果、住民は自転車を大事にするようになり、駐輪場の停め方も非常に丁寧になったというわけだ。加えてサイクリング車の需要も高まり、ショップも思わぬ効果に目を細めているという。

前回の市民サイクリング大会に町内の友人達と参加して楽しんだ田中一郎さん(29)は、「風を感じながらマイペースで走れるのがいい。普段と違った自転車の楽しみ方を発見出来た。これからは自転車を大切にします。」と話した。 (東葛日報より引用)

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本編第2話は来週末くらいには公開出来るかと。現在写真の加工に時間をとられております。

2007年4月21日

水神もりの物語(■第2話)

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二度目の訪問は、それからしばらく経ったある週末だった。この日はぜひともあの電車に乗ってやろうという意気込みで、それだけを目的に出かけて来たのだ。JR駅の改札を抜け、広場の片隅にある水神森駅へと向かう。駅前に立ち、改めてこの建物を見上げると、どこか懐かしく、それでいて畏敬の念のような気持ちが体の奥から湧き上がって来る。

「なんだろうな、この感じは」と思いつつふと見ると、駅名を記した看板の裏手に、うっすらと昔のペンキ文字跡らしきものが浮かんでいるのに気がついた。「水神杜駅?」昔の駅名は少し字が違っていたのか。

駅へ入り、例のベンチ前まで歩を進める。そぉっと売店の方を見るが、今日はこないだのおばちゃんではなく、若い女性の売り子が届いたばかりの荷物を黙々とさばいていた。時刻表を見上げて次の発車が何時だか調べる。どうせならこの支線の全線を乗って来たいのだが、休日ダイヤのためか、終点まで行く電車はまだ小一時間ほども待たなければならないのがわかった。

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少々気抜けして駅の入り口から外を覗く。空は晴れているが、街並みの向こうには黒い雲が湧き上がって来ている。「ちょっとどこかで軽く腹ごしらえでもして来るか」いつも一人で出掛けると、まともにお昼を食べる事のあまりない私だが、この日は少々空腹気味だった。広場の向こう側にバーガーショップが見えたが、これはあまり得意でないのでパス。他に食堂らしき店は見えないが、右手に大きなショッピングセンターの建物がある。

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「中に何かあるかな?」と思いつつそちらへ向かって進もうとすると、駅事務所の横にバス停を発見。JR駅正面にはバスプールがあって、大型の路線バスがひしめきあっていたのだが、こんな裏手にもひっそりと乗り場があったのだ。小さなバスが一台発車を待っているが、まだ時間があるらしく、お客は誰もいない。人の良さそうな運転士がベンチで休憩していたので、思い切ってこの辺にどこか食堂がないか尋ねてみた。

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彼が言うことには、この道の先に喫茶店があって、そこのランチが安くて美味しくてお勧めだそうな。礼を言い、なだらかに下り気味の 道路を右側にうらぶれたホーム裏手を見ながら歩いて行くと、すぐにその店があった。建物はだいぶ古びているようだが、入り口は良く手入れされており、入るのに躊躇する必要はなかった。

「カランカランカラン」「ありがとうございましたー」 ドアベルの音とマスターの声に送られ、美味しい食事に満足した私は足取りも軽く店を出た。やっぱり、仕事でここらを良く分かってる人間に聞いて正解だった。バスやタクシーの運ちゃんは、職業柄良い店を知っているものだ。いい気分で一歩踏み出そうとして、「おっ」と気がつく。いつの間にか雨がビシャビシャと降っている。さてどうしよう…、駅まではすぐだから走って行けない事もないが、それにしても結構な降りだ。

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店の前で躊躇してる私に気づいて、中からマスターが様子を見に出て来た。「おや、降り出してたんですね。傘でもお貸ししましょうか。」
「いや、走って行きますよ。」
「それとも、お時間あれば少し雨宿りされたら?通り雨のようですし。珈琲、お代わりお出ししましょう。」
彼は、メニューの書いてある黒板を軒下へ移動させながらそう言った。
「そうですねぇ…。」 少し考えて、マスターの提案を受ける事にした。いや実際、電車に乗り遅れる事をいとわないくらい、美味しい珈琲を出す店だと感じていたのだ。

店内は最初私が入った時に数人の先客がいたが、注文が出て来るまでに皆食事を終わって出て行ってしまったので既に誰もいない。他にバイトらしい若い女の子も店を手伝っていたが、時間が来たらしく途中で帰っていったので、最後にはカウンターを挟んで私とマスターだけが取り残される格好になった。静かな店内に、駅を発車して店の裏手を通過して行く電車の音が響く。「あ、行っちゃったか。」

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「次の電車は30分後です。」
「え?よくわかりますね。」
「そりゃ、もうここで何十年も商売してるんでね。体に染み付いてますよ。」

それをきっかけに、珈琲をすすりながらそのマスターには色々とこの駅のあたりの昔話を聞く事が出来た。開通当時、この線は東葛電車と呼ばれていた事、「葛」を別読みした愛称「くず電車」でも人々に親しまれていた事、主にこの奥にある大神宮への参拝客を運んでいた事、僅かながら貨物列車も走っていた事、そして後に別の私鉄に吸収されてその支線となった事など。それから、少々気にかかる噂も教えてくれた。曰く、近くこの駅で大規模な工事が始まるらしい、と。

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電車の時間も近づいたので話をそこで切り上げて出て来てしまったが、工事とはいったいどういう事なんだろう。雨上がりで雲の切れ間から徐々に青空の見え出した空の下を、駅へと急ぎながら私はあれこれ思考を巡らしていた。相変わらずガランとした駅へ入り、券売機でプリペイドカードを買って自動改札へと向かう。手にしたカードを良く見ると、そこにはあの電車と共に、マスターの言っていた大神宮の立派な拝殿の写真が写っていた。

天井から吊り下がっている案内表示によると、次の電車は左手ホームからの発車だ。遠くでは既に踏切の警報機の音も聞こえ出している。例によってベンチには老人達が数人、そしてホーム中ほどに前回の駅員が立っていた。彼は顔をおぼえていてくれたみたいで、私に気づくとあっという目をした後にニコっと微笑み、帽子のつばに手を当てて少し会釈をした。こちらも軽く頭を下げて返したが、そうこうしてるうちにもキシンキシンとカーブを回る車輪の軋み音が近づいて、やがて電車の姿が現れた。

それは前に見た茶色い古風な車両ではなく、緑とクリームに塗り分けられた2両編成の近代的な冷房車だった。ホームの有効長が短いため、電車は前回にも増して慎重に車止めへと向かって進み、静かに目の前で停車した。ポツポツと何人かの客が降り、入れ替わりに何人かの客が乗り込んで銘々自分の席に着くと、あとは発車を待つ電車が時々発するコンプレッサーの音がするばかりだ。

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私は一度席に着いたものの、まだしばらく発車する気配がなさそうなので立ち上がってドアへと進み、すぐ外のホームにいる彼に尋ねてみた。 「こないだの電車と違うんですね。」 「あ、ええ、あれは平日の限られた時間帯しか走らさないんですよ。」 彼の話では、あの電車は開通当初からの生き残りで、なかば動態保存を目的として動かされている物だそうだ。もう大分老朽化しているし冷房も無いので、季節・期間を限定した運行になっているのだという事を教えてくれた。

「なるほど…。ところでこの駅、何か工事が始まるんですか?」
「ご存知でしたか。そうか、ネットの情報ですね。最近は、うちらより詳しい専門のサイトがあるからなぁ。」
「いや、そういうわけでも…」
「あのベンチからの眺めも、もうすぐ見納めですよ。」

そこまで話した時に発車を知らせるメロディがホームに流れ出し、彼は仕事の顔に戻ってマイクを握る。手馴れたしゃべりでアナウンスをする彼。私がドア内側へ一歩退くとほぼ同時に、両開きのドアが戸袋から出て来て駅員の姿をホームに残し、真ん中でピタリと閉じた。

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「プシュー」と響くブレーキ開放音、するすると加速して行く電車。丸屋根の下を出ると雨上がりの日差しが強烈で、外の景色が薄く白っぽく見える。右手にはビルと高架線、左手には先ほどの喫茶店らしき建物が窓の外を後方へと流れて行く。私は座席に戻ったが、不思議な事にそこから先の記憶が無いのだ。ポイントをガタガタと音を立てて通過したところまでは、体の揺れで憶えている。その後急に外の景色がホワイトアウトしたような感じになって、何だか夢の世界へと落ちて行くみたいな心持ちがした。

気がつくと私は再び水神森駅の駅頭に立ち、駅舎を見上げて風に吹かれていた。もう夕日はビルの向こうに落ちてしまったが空にはまだ残照が残っており、茜色の空に薄紫の雲を鮮やかに浮かび上がらせている。休みの日の夕方、JR駅へと出入りする人たちは平日の通勤客に比べて穏やかな動きをしており、その流れに逆らう形で突っ立っている人間を誰も咎めようとはしなかった。

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私は電車の中で眠ってしまったんだろうか。そのまま終点まで往復した結果、ここへ戻って来たのだろうか? 曖昧な記憶の中に 大神宮へお参りした自分がいて、その建物を仰ぎ見たような気もする。しかしそれが実景だったのか、あるいは単にカードの写真から連想した幻覚なのか、未だに判然しないでいる。「記録を見ればいいんだ。」そう思ってポケットのカードを探ったが見付からない。電車にすら私はまだ乗っていないというのか?

JRの駅から帰りの快速に乗った。ドア脇に立ち、発車してホームを離れると同時に、顔の左右を両手で覆ってガラスに押し付け黒い外 の風景を凝視する。高架下に薄暗い蛍光灯を灯す小さなホームと、そこから延びて離れて行くカーブした線路の光が見えたが、次の瞬間目の前にはすぐ脇に建つビルが割って入り、その煌々とした照明に眩惑された。そしてそれが通り過ぎた後は、もう線路も何も見えなくなっていたのである。

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2007年4月28日

駅名標

サイドストーリー「駅名標」を掲載します。

その後、珈琲煎香のマスターからこの線の歴史について少々興味深い話を聞いた。彼も常連客のある古老からの伝聞との事だったが、その昔、この駅の表記は「水神杜(すいじんもり)」という字を使っていたそうだ。そして、そのお隣に一時期なんと「水神社(すいじんやしろ)」という小駅があったらしい。木へんで杜(もり)、示すへんで社(やしろ)だが、さすがにこれはあまりにも紛らわしい。乗客の間や社内でも混乱が日常茶飯事だった為、「杜」を「森」に改めたのだそうな。

その後、水神社(すいじんやしろ)駅の方は廃止されてしまったとかで今は存在しないが、当時「もり駅」「やしろ駅」と呼んで区別していたと言う人もこの近在には多くいるようだ。その頃の事を聞こうとしたら耳の遠いお年寄りが、「やしろえきって、あぁ、あの演歌の…」 違う!それはやしろあ…、なんて話もしていた。冗談だかホントなんだか、マスターに一杯食わされたかな?

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その水神森構内には、旧駅名時代の物件がいくつか記念碑的に残されている。入口屋根下の沿線案内図は目立つ存在なので良く知られているが、もう一つ、ホーム端の柱に一枚だけ昔の琺瑯駅名板が掲げられているのは気づく人が少ないだろう。今となっては貴重な存在だが、しかしこれ、せっかく保存されたものの、ひらがな表記なので旧駅名という事を表現出来てないというオチが付いているのだ。これについては、駅裏に昔の駅名標が保管(放置?)されているそうなので、そのうちそちらが展示されるのかも知れない。

ところで、駅名ゆかりである肝心の水神様はどこにあるかというと、元は水神社駅(さてどっちでしょう?)のすぐ近くの路地裏に小さな祠があったものの、街並みが建て込んで来ると共にあちこち移転を繰り返し、最終的にどこへ行ったかは誰も良くわかっていないという、これまたいい加減な話なのである。

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