2007年4月but_s_l.gif [ メイン ] but_s_r.gif2007年6月

2007年5月 3日

大型スクリーン

投票結果を反映して上位5話を掲載して来ましたサイドストーリーですが、次に予定しています物語本編が出来るまでの繋ぎとして、後半5話も順次公開して行きたいと思います。投票結果からすると次はこちらという事で。

古い駅舎に据え付けられた大型スクリーン。はたから見ると甚だ不釣合いではあるが、何故こんなものがここに設置されたのだろう。

実はこれ、駅前商店会からの寄付で出来たものなのだが、真相を正すとどうやら商店主達が、あまりにボロい駅舎を覆い隠して駅前の見栄えを良くする事を画策したものらしい。しかし結局予算の関係で中途半端な大きさとなり、建物の大部分は露出したまま残ってしまい、かえって見苦しい様相を呈する結果となった。おまけに駅に出入りする客がこれを支える柱に衝突する事故があって、今は黄色いクッションを巻いて注意を促しているという次第だ。

secrep29.jpg

ちなみにスクリーンに流れる広告は一応商店会の審査を通す事になっているが、大手企業の物などは、彼ら好みのタレントの出演作が選ばれる傾向が強いらしい。もちろん、出資者である駅前商店のローカルな宣伝も流れるのだが、これに店主の顔が大写しで投影されると地元客には大うけ。それで調子に乗った一部メンバーは揃いの衣装まであつらえて、商戦隊「スイジンジャー」なるものまで結成する始末。果ては全国ローカルヒーローサミットに出席して、テレビ取材まで来てしまった。

そんなこんなで商店街は話題につられて活性化し、客入りも倍増したそうだ。電鉄側にとっても広告収入の一部が入って来るし、行楽や初詣の時期には自社のコマーシャルも流されるとの事で、それなりに美味しい関係になっているのはビジネスモデルとして面白い。街頭スクリーンが町おこしのきっかけとなった例は、景観はさておいても注目すべき点であるかも知れない。(東葛ビジネスニュースONLINEより)

2007年5月13日

高架下駐車場

駅前交番の巡査の話

ええ、わりとノンビリしてるこの街でも、時々事件が起きる事はありますよ。先日も高架下の駐車場で車上荒らしが出ましてね、でもすぐに犯人を捕まえる事が出来てホッとしているところです。

secrep30.jpg

何故そんなに早くわかったかって?だってね、その犯人は慌てていたのか、駐車場に足跡をクッキリと残していたんです。しかもその後に汚れた靴を駅前の靴屋、ってのは実は私の友人がやってるんですが、そこで買い替えて、処分して欲しいとその店に置いてったんですよ。

で、何か態度がおかしかったと店主から話を聞いた私がそれを持って来させると、足跡とピッタリ一致、しかも何とその靴にはご丁寧にも住所氏名が書いてあって、訪ねていったらあっさり白状しました。ちなみに盗られたのはコロッケの入った包み一つ。やっぱりなんかノンビリしてますね、この辺は。

secrep31.jpg

え?足跡ですか?駐車場の入口に転がってた缶を蹴とばしたせいで、靴が濡れて付いたんですョ。缶の中に雨水でもたまってたんでしょう。はぁ?高架下だから雨は降らない? …なるほど確かに不思議ですね。鑑識の調べでは飲み残しのジュースでもなかったし。そういえばあの水、いつまで経っても乾かない。おかげで足跡を証拠に出来たんですが。

何か摩訶不思議な現象ですが、このあたり、水の神様が見守ってますからねぇ。ええ、どっか近くに町名の縁となった水神様があるみたいですよ、私はまだ見た事ないけど。

2007年5月18日

走る人

secrep33.jpg

その人物はいつも決まった時間、この場所をランニングしている。何故そう言いきれるかというと、毎日着ているウェアが同じで目立つため、多数の目撃者がいるからだ。という事は、きっとあの赤いジャージを何着も持っているのだろう。年齢は不詳だが、年季はかなり入っていそうな風体。性別は男で間違いない(たぶん)。

secrep34.jpg

平日の昼間も走れるという事からするとおそらく勤め人ではないと思われるが、ではいったいどういった職業なのかと問われるとそれは分からない。何しろ話しを聞こうとして駆け寄ると、競争を挑まれたと見るのか、忽ちのうちにスピードを上げて赤い疾風の如く走り去ってしまうのだ。特に狭い路地裏を民家の軒先ギリギリに走るのが得意なようであり、それは見ていてなかなかに小気味が良い。

secrep35.jpg

一方で、人目の無い海岸沿いの道を気持ち良さそうにノンビリ走っていたという噂もあるが、真偽の程は定かでない。時々何故かゼッケンを付けている事があり、そこには「1000」と番号が書いてあるそうだ。全身赤地に白の一本線… なるほど、あの電車が好きなのか…。そう気がついた人は私と同類かも知れない。赤いランナーに心よりオマージュをささげよう。

secrep36.jpg

2007年5月23日

駅前ショッピングセンター

secrep37.jpg

先日オープンした水神橋駅前のショッピングセンターへ早速行って来ましたので、当ブログ「パパ&ママ&息子のお騒がせな日常」でもレポートしたいと思います。まだオープンしたてで車は混雑すると思ったので、今回は電車で行きました。densya.gif うちの近所から出てるカワイイ電車は、息子も大好きで大喜び。着いたら案の定、駐車場入口は大渋滞でこれは正解でした。

secrep38.jpg

ここはちょっと昔は「しもてつストア」と言う古いデパート(!?)がありまして、パパ&ママも屋上でデート(*^^*)した事があるのです。snmghtrs.gif 今は取り壊されて大手系列になりましたが、すっかり綺麗にリニューアルされてますね。で、地下に行ったら何と!以前のデパートでやってた美味しいたい焼きのお店がそのままあるじゃないですか。taiyaki_01.gif このお店のはアンコもあっさりしてるし、型からはみ出した皮がまたカリッカリでたまらないんです。3人で仲良く食べましたが、息子もまるまる一匹平らげたのにはビックリ。

それから、イベント広場で戦隊モノのショーをやるって言うんでイソイソと行ったんですよ。m1.gif そしたら、出てきたのは何やら胴回りの太いおじさん5人組。期待はずれでガッカリでしたが、息子は何故かケラケラと笑いが止まらず上機嫌、まー楽しめたので良かったけど。後で聞いたらどうも駅前商店会のPR企画だったようですが、ショッピングセンターとライバル関係じゃないのかな?案外仲良くやってるの??

その後パパの洋服を見て、お隣のおもちゃ屋さんで子供を遊ばせて(笑)、又電車に乗って帰って来ました。今日は混雑していてちょっとしか見れなかったので、また行ってみたいです。でわでわ~。tori-hiyoko-an2.gif

secrep39.jpg

2007年5月26日

水神もりの物語(■第3話)

以下お待たせしましたが、第3話をお送りします。少々長くなりましたので後半を第4話へと分割し、後日公開という形にしたいと思います。

それから何ヶ月かはそこへ赴く機会がなかったが、その間にもネットで情報は徐々に収集していた。やはりあのマスターの話してくれた通り、元々この線は東葛電車(正式名は東葛電気軌道)と言い、水神橋駅から数キロ離れた先にある大神宮への参拝客輸送を目的に開設されたものだそうだ。また、当初は沿線にある醤油工場などの貨物輸送も一手に担っていたが、国鉄との軌間が異なっていた為に荷物の積み替えを行なう必要があった事と、その後モータリゼーションが進んだ為もあり、順次トラック輸送に切り替えられてしまったという。

secrep40.jpg

参拝客の方も初詣や縁日等には多少混雑する事もあるが、年間を通じての輸送人員は期待された程でもなく、経営は苦しい状態が続いた。しかし神宮の少し奥手に準大手私鉄の新線が都心へ向かって延びてきたために、そこと接続を果たしてJRとの間を連絡する支線となり、傘下に入って生き残りを図ったというわけだ。ちなみに同社バス部門も同時に吸収されたが、その後該当路線だけ分社化され、東葛電車の末裔となって現存する。

駅の工事に関しても、ネット上で一部その計画を目にする事が出来た。それによると、JR駅前の再開発と水神森駅及び付近の地下複線化を行なう大規模な工事で、行く行くは都心から延伸して来る地下鉄との相互乗り入れも計画されているらしい。また、水神森駅を出てすぐの所で現在一部に大通り上を走る路面併用区間があるので、合わせてそれも解消するのが狙いとの事だった。

それらの情報を几帳面に調べてネット上に載せているサイトがあり、ある日私はその開設者にメールを送ってみた。東葛電車についていくつか疑問点があったので質問したのだが、彼はその一つ一つについて丁寧に解説してくれ、おまけに「長いことサイトをやってるがこれだけ興味を持って質問して来た人は珍しい」という事ですっかり意気投合。即席の二人オフ会を行なう所にまで、話はトントン拍子で進んでしまった。

secrep41.jpg

約束の日、私は早起きをして自転車でこの街へとやって来た。歳とともに少々気になる体型になって来た事もあり、あるサイクリングイベントに参加したのがきっかけで、最近は自転車で遠出するのが楽しくてしょうがないのだ。高架下に駐輪場を見つけてそこへ愛車 を置いた後、JR駅前の交番脇で少々不安ながら待っていた。

「えぇっと、東葛電車の方...」遠慮気味に声をかけて来た彼は、私と同世代の人のようだった。「あ、そうです。どうも。」会話が微妙なのは、お互いにハンドル名しか知らない者同士のせいだ。目印としてそれを書いて胸に付けていた名札は、恥ずかしいからすぐにポケットに仕舞った。彼は小さい頃からこの近所に住んでいるそうで、東葛電車もずっと見続けて来ている。そのぶん知っているし愛着があるから、あれだけの情報を集めて公開する事が出来たのだろう。

まずは、地下駅化の着工も近づいている水神森駅の構内や周辺で、しばらく写真を撮った。この日は売店のおばさんもいて私を見つ けると声をかけてくれたが、相方の彼とも顔見知りのようだった。二人で牛乳を注文して一気に飲み干すと、おばさんを交えた三人の 笑い声が丸い屋根の下に響いた。運よくあの旧型車もやって来たのでカメラに収める事が出来たが、きっと彼は運行予定を調べた上で、ちょうどいい時間帯に待ち合わせを設定してくれたのだろう。

secrep42.jpg

「面白い物件があるんで、ちょっと見に行きませんか?」 彼にそう言われて、もちろん断る理由など何もない。ついて行くと、JR駅のコンコースへと入って行く。え、JR?と思ったが、改札へは 向かわずにそのまま高架下のショッピングセンターを素通りし、裏口を横手へと抜け出た。「どうです、いい眺めでしょう。」目の前はちょうど水神森駅のホーム裏手、左側には青空を背にしてマルーン色をした本屋のドームがそびえていた。

今朝は駐輪場からまっすぐに通路を抜けてしまったので、この小広場に出たのは初めてだ。こちら側からの眺めは少々新鮮だったので、「ええ、いいですね。」と屋根を見上げていると、「いゃ、こっちですよ。」 笑いながら彼が指差すのは、駅と高架線に挟まれた細い空地である。よく見ると、草むらの下で泥にまみれて分かりづらいが、錆付いた線路がそこに横たわっていた。「こんな所に何で線路が!?」「昔、貨物ホームだった場所なんですよ、ここ。」

secrep43.jpg

貨物輸送を行なっていた当時の遺構が、いまだに残っていたのか。工事が始まったらなくなってしまうだろうと彼は残念そうに言ったが、この辺の写真は近くまとめてサイトで公開する予定だと言う。「こっちにもいいものがあります。」変電所のような施設の前を過ぎ、高架下の駐車場とその脇のビルに挟まれた細い路地を抜けて、車道に突き当たる。

secrep44.jpg

「あれ、何だと思います。」道路の向こう側は、明るい日差しを浴びた小さな草地だ。良く見るとその中央部は、雑草に覆われつつも少々台形状にこんもりとしている。「ひょっとして...」「そう」 「築堤!」男二人で顔を見合わせ、思わず声高に叫んでしまった。道で話をしていた二人連れの高校生が、訝しげにチラっとこちらへ視線を投げかける。

secrep442.jpg

「どうもここから向こうへも線路が延びてたらしいんですよ。」
「でもどうして築堤なんだろう?」
「この先でJRをオーバークロスして、反対側へまわってたみたいで。」

secrep45.jpg

上から見ると良くわかるからという事で、彼に連れられて目の前のビル裏口へとまわる。重いドアを押して中に入ると、管理人室らしき所に老人が一人で番をしていた。
「やぁ、シンちゃん」「おじさん、屋上借りるよ。」カメラのシャッターを切るポーズをする彼。
「またかい。好きだねー。」「えへへへ」それで話はついたらしかった。

裏階段をずんずん登りながら彼は、あの人はこのビルのオーナーで、長屋住まいだった小さい頃からの顔なじみだと教えてくれた。私はおどおどしながら後ろからついて行く。最上階まで登って行くと、屋上へ出る手前の階段室に小さな祠があった。
「おゃ、これは...?」「あぁ、さっきのおじさんが町内の誰かから頼まれて、ここへ奉ったらしいんだけど、何でも由緒ある水神様なんだそうで...。」

屋上のドアを開けると空が大きく広がった。すぐ横にはJRの高架線が並んでおり、写真撮影には良さそうだ。その向こうには工場や住宅地の入り混じった街並み、そしてその屋根が果てるあたりにはうっすらと東京湾の水平線が見えていた。「まずはこちら。」彼に従い、親父さんが干したらしい洗濯物の間をすり抜けて行き、裏手のフェンス越しに下を覗く。「おー、線路が良く見える」「でしょ?」

secrep46.jpg

「でぇ、あれがこう通ってこっちへと...」彼は、人差し指で空中に線を描きながら逆側の突端へ歩いて行く。「...つながってたらしい。」 なるほど、直下に見える築堤は線路の延長上だ。誰かが焚き火でもしたのか、空き地の片隅にあるドラム缶から薄い煙がたなびいている。「あれ?」その煙を目で追っていた私は、背後の街並みを見て思わず鳥肌がたった。
「あれは...」「そう。見えるでしょ。」彼が嬉しそうに呟く。
築堤はほんの短い距離で切れているが、その後ろに続く家々の屋根が周囲と明らかに際立って違い、怪しいカーブを描きつつ彼方へと連なっていたのだ。

「一旦国鉄の線路から離れて勾配で高さをかせいだ後、乗り越えてたようで」「JRの高架になる前の話ですね」「そうそう。」タイミング良く、高架上を通勤電車が通過して行った。この線には、山手線から転出して来た車両がほぼそのままの姿で走っているので、写真を撮りに来るファンも多いと聞く。電車が通過してしまい、走行音が遠ざかって行くにつれて、何か別な音がしているのに気が付く。

secrep47.jpg

「あ、これか。ちょっと失礼。」彼はポケットからケータイを取り出すと、電話に出た。「ハイ。...えぇ。...は?...はぁ、でも俺、今日非番なん...」 そこで電話は相手方から一方的に切られてしまったようだ。彼はしばし考え込んでから、「申し訳ない。なんか呼び出し食らっちゃたもんで、今日はここまでという事で。」「あ、そうっすか。残念だけど、楽しかったですよ。」「ほんと、お茶でもしながらゆっくりと話したかったのにね、近くにコーヒーの美味い店もあるし。」「もしかしてあそこ...?」 私が指差す先を目で追うと、彼は一瞬の間をおいた後、顔をほころばせてコックリと頷いた。どうやら当たりのようだ。

「じゃ、ここで。」「あ、また。」ビルの出口で二人は別れた。「そうだ、これを忘れてた。」去り際に彼は、一枚の地図を渡してくれた。住宅地の上に、廃線跡を示すオレンジ色のマーカーがどこまでも引かれている地図だった。

secrep48.jpg

2007年5月30日

ビラ配りガール

secrep49.jpg

あたしに任せなさいって。もう何年このバイトやってると思ってんの。こんなの小一時間で全部配ってみせるから。だいたいね、配る時のノウハウってもんがあるんだから、そういうのを意識して出来ないヒトはハッキリ言ってダメ。そう、こうやって自然な笑顔で、挨拶をする。決して歩く人の進路を邪魔しちゃいけないよ。相手の取りやすい位置はどこかを考えて、サッと目に付きやすいように出す。そして手渡そうとする瞬間に、チラシじゃなくて中のティッシュが良く見えるようにね。

両手に荷物持ってる人は差し出したって受け取れないよね?相手がイヤイヤした時も素直に引っ込める。走ってる人、進路を変えた人はまず無理ね。その他の人に集中した方が配り逃しがない。ん、今のおばさん2回目!でも知らんぷりして渡しちゃうの。だってそれで広告見てくれる確率が2倍になるんだから、儲けモンでしょ。こっちも早くさばけて助かるしね。

あ、お兄さんそっち逃げたら危ない!あーぁ、柱に衝突しちゃったョ。あらら、鼻血が…。ちょっとそちらのベンチで休んだ方がいいですよ。あのー、売店のお姉さ~ん、ティッシュ持ってないですか、この方、血が出ちゃって。え?あそうか、私、持ってるんだった… 配る程、たくさん。

タイトルはチョッと変えました。これで当初予定のサイドストーリーは完了ですが、あと2編ほど追加予定です。え?もういい?まぁそう言わずに(^^;)