門前町にある、電停のような小駅を作ります
(訪問記「門前町のXX」は、XX部分に各話のタイトルを埋め込んで脳内変換願います)

門前町のXX(Vol.3)

5. 下宿屋

ガラガラっと玄関のガラス戸を開け「ただいまー」と声をかける。

「お帰りぃ。お風呂沸いてるからどーぞ」

居室の方から顔を覗かせるおばさん。

「うん、風呂入った後ちょっと話いい?」

「あらまぁ、恋愛相談かな?笑」

「いや、違うって」

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風呂から上がると下宿生達の食堂代わりとなっているリビングへ、と言っても隣室の学生は短期留学中で不在だから、ここんとこは実質俺と大家さん夫婦の家族世帯みたいになっている。キッチンで料理をしていたおばさんは、俺に気づくと火を止めてテーブルへやって来た。

門前町のXX(Vol.2)

3. 歴史ある書店

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次の休みの日、参道駅が出来た頃の様子を良くご存じだという人を鮨屋の親方から教えてもらったので、会って少しお話を伺うことにした。下宿の玄関を出て、今日は駅の方へは行かず、裏口へとまわる。門を出て左へ進めばすぐに電車みちの信号が見えて来て、その角にある古い書店「平戸三郎書店」が目的地だ。長いので普段は平戸書店と呼んでいるが、高齢のオーナーに連絡をとって今日は会ってもらえることになっている。ここは区内最古級の書店として明治期の創業以来地域住民に親しまれ、建物は有形文化財として登録されている。その造りは純日本家屋であるが、窓枠がパステル調の鮮やかなものだったりして、大正浪漫的なものも感じる。

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門前町のXX(Vol.1)

1. 小さな駅

「じゃぁ、行ってきまーす」「あら、これから?行ってらっしゃい」

玄関先で大家の奥さんに声をかけ、慌てて下宿を出る。今日は大事な用事があるのに、ついついネットで調べ物をしていて出かけるのが遅くなってしまった。門を出て駆け出す間もなく、駅にはすぐに到着だ。なんたって超駅近の物件を探し出したんだから、自分を褒めてやりたい。実は実家もこの沿線にあるんだけど、進学を機に家を出て下宿暮らしを続けている。別に実家からも通えない事はないけど、一人暮らしがしてみたかったというのが理由だ。それで学生向けのワンルームマンションなども探したのだが、結局資金面で下宿に落ち着いたというわけなのだ。

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自動改札を通ってホームへと向かう。小さな駅だから普段は駅員がいないし、エレベーターやエスカレーターもなく、バリアフリー対応としては階段に車いす用簡易リフトが設けられている位だ。ホームは奥行きがなく狭いが、いつも乗降客はそんなに多くないので、特に不都合は感じない。電車は行ってしまったばかりのようで、人影も少なくガランとしていた。

訪問記 - はじめに

恒例の訪問記を始めたいと思います。その主目的はモジュール各所を紹介することですので、例によって特に大きな事件が起こるわけでもなく、またストーリーは不自然にあっち行ったりこっち行ったりを繰り返します。そしてこの区間が地下化される前の話ですので、前作 青砥ヶ谷駅訪問記 から少し年月を遡る形となります。その点はご了承を。

タイトルは今回「門前町のXX」としました。これは下書きの際に仮で付けていたものですが、良い案が浮かばないのでそのまま使っちゃいます(笑)。XXの部分には各話の名前が入ると思って脳内変換を願います。例えば第1話のタイトルは「小さな駅」で書いていますので、完成形は「門前町の小さな駅」となります。

予定としては、毎回 2話分ずつ位でアップして行きたいと考えていまして、以下 Vol.1 には 1話, 2話が含まれています。なお、ページ内の写真は情景に合わせて多少加工する場合もありますが、都度の注記は省略します。では、遅筆なので長丁場になるかと思いますが、よろしかったら気長にお付き合いのほどを...

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全体マップ(クリックでポップアップ)
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制作記 - おわりに

以上、2022年4月より開始してほぼ2年間の制作期間となりました。のんびり更新の長々とした制作記にお付き合いいただいた方には、感謝申し上げる次第です。門前町の電停のような小駅「参道駅」を今後とも末永くよろしく... と言いたい所ですが、実は近々この区間は地下の新線に置き換えとなり、この駅も廃止されてしまう運命にあります。それまでの間に、皆様の記憶に残しておいていただけるよう、ぜひこの機会に参道駅を一度ご訪問いただけると嬉しいです。

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(写真は一部加工しています)