東葛地方のむかし話but_s_lb.gif [ メイン ] but_s_rb.gif水神もりの物語(■最終話)

水3系統バス

「珈琲煎香」で、あの時のバスの運転士に出会った。ちょうどその日の乗務を終え、食事をしながらマスターと話をしているところだったので、私も仲間に加わった。言葉使いは少々乱暴だけど、いい人のようだった。

ここの路線もだいぶ乗る人が減ったなぁ。え?下快バス? いや違う、そこから分社化した東葛バスの受け持ちなんだ、バスの色は同じだけどね。運転手はベテランばっかりだから、お年寄りも安心して乗れるよ。発進と停止のテクニックだったら任せておけってもんさ。床に煙草のハイライト立たせて置いたって倒れやしないよ。いや、ウソウソ、それは冗談だけどさ、それだけやさしい運転を心がけてるって事よ。


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先日もある停留所からおばあさんが一人で乗って来てね。ちゃんと着座したのを確認してから、ゆっくりと発進させたの。ところが、終点に近づいて民家のない工場地帯に入っても降りる気配が無いんだね。終バスは乗換駅を経由してその先の展回場まで行くんだけど、もう他の乗客は誰もいないしさ。ついに折り返し場まで着いちゃったんで、バスを停めてから座席に見に行ったの。日も暮れてたし、何となくいやな予感がしたんだ。

おばあさん、うつ伏せに前の席にもたれかかって... う、動かない。やばい。

一瞬息してないかと思ったけど、スースーと眠ってましたよ。気の毒とも言ってられないんで、トントンって起こしたさ、勿論。そしたらね、「あらー、あまりに揺れなかったもので、すっかり寝込んじゃった。」だってさ。それで折り返す帰りの途中で下車したんだけど、心配して停留所まで様子を見に来た娘さん... だろうねあれは、反対方向のバスから降りて来たおばあさんを見てビックリしてたよ。

降りぎわに、「あの、料金はどこへ...」「あ、回送なんで頂けないんですよ。ほんとうはお乗せしちゃいけない決まりですから。」「そうですか、すみませんでした。じゃ、チョット待って... これを...」 おばあさん、巾着の中をゴソゴソやって私に紙包みを握らせるもんで、「困ったなぁ、個人的にもらってもまずいし」と思いつつ見ると、飴玉が三つほど。子供なんだね、あの年代から見ると俺も。もうすぐ定年だっちゅうのに。

「足元にお気をつけて。またどうぞご利用下さい。」「ありがとう。天国みたいな乗り心地だったヮ」だって。危うく昇天させちゃうとこだったか?ハハハ。だからね、それだけ丁寧な運転するって事さ。床にハイライト立たせて置いたって倒れやしないよ。え?さっき話したっけ、これ。

サイドストーリーは、これで終了です。さて、本編の方も次で最終話となります。

コメント

おっバスの登場ですね。行き先はどちらですかね。光っています。
月は実写ですかね。ちゃんと、うさぎが餅をついているのが見えます。いい感じです。
裏通りのコミュバスにも、おばあさんが乗ろうとしていましたね。

バスの行き先はクリックで拡大すると読めるかと思いますが「青砥ヶ谷駅」って書いてありますね。これ、どこだろう…?青砥と雑司ヶ谷が混ざったような感じ …って自分で作ったシールなんですが(^^;)

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