Button前へ    田駄雄作の鉄道四方山話(過去記事)

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第8話:テープカット Image

 新線開業、スピードアップ、新列車の運転開始などには出発式がつきものだ。ブラスバンドの演奏やくす玉割り、運転手車掌への花束贈呈など式次第が続くが、クライマックスのメインエベントと言えば、お偉いさんの面々がずらっと並んでハサミを持ったテープカットだろう。昔から格好の報道材料と見えて、その一瞬を捉えた写真が新聞や鉄道雑誌を飾っている。バックナンバーを繰ってみても鉄道の歴史の記録を伝える場面には必ずテープカットの場面がある。ところが昔と現代の出発式を較べてみると、いささか時代の流れに乗って様変わりしてきたようである。昔はテープを切る人は一人か二人、なおかつテープは列車の前を横切っている。これはテープカットの意味を考えると当然のことで、新たに出発する列車のルートを開くわけであるからこれが正当というもの。しかし、いつの頃からか、テープは列車を無視してホームの部分のみに張られるようになり、切り手の人も、利害関係が多く人選に困るようになったのか、大人数になってきている。また列車に背を向けて線路方向にテープを張ったものも見受けられる。「主役は列車だろう!」
 列車を無視したホーム上だけののテープカットってどんな意味があるのだろうか。みんなでホームを歩いて端で突き当たっておしまい。と言うわけでもあるまい。また一本のテープを多人数で切るために、隣の人に先に切られてしまうと数センチのテープしか手元に残らず滑稽な格好になってしまうこともある。昔は複数の人で切る場合、人数分のテープを張っていたようで、これは様になっている。
 ちなみに、展覧会やイベント会場などでもテープカットが行われるが、会場のゲートを前に会場の内側から外へ向かってカットする写真が多い。あれも間違いで、本来の意味を考えれば外側から会場の中へ向かって切るのが自然だと思うがどうだろう。絵面のことを考えてのことだろうか。
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昭和40年11月1日 東京駅 最初はこの位置
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テープがやっと切れたときはこれだけ進行
 理想的なテープカットは、ニュースフィルムでもよく見る昭和39年10月1日東京駅、午前6時00分「ひかり1号」の出発式が有名である。すべての式次第が終わり、駅長が手を挙げて出発合図。ドアが閉まり出発のタイフォン吹鳴、列車が動き出すと同時に壇上の石田礼助国鉄総裁がテープカット。みなの大拍手の脇を列車は加速して去ってゆく。時代に残る歴史的瞬間に相応しい記録になっている。
 ただしこれが祝賀列車であって、テープの切り手の人もその列車に乗るとなるとややこしくなるわけで、一旦動いてから停止して、来賓乗車後再出発というパターンも多かったようだ。
 出発式の企画をする担当者やイベントディレクターなどが拙文を読む機会があれば、今後の方法について考えて頂きたいものである。
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昭和41年10月1日 上野駅 「あさま」運転開始
 初物が好きだった私は、このテープカットのシーンをよく撮影にいった時代があった。中学、高校の頃のことだが、この写真を撮るためには必ずクリアーしなければならない難関がある。それは撮影の特等席は報道陣専用で一般者はロープで仕切られた後方へ押しやられてしまうことで、これではその瞬間の撮影は不可能だ。当時も現在と同じで体格の良かった私だが、意外とすばしっこくて最初はおとなしく規制に従っていても、直前に「瞬間縄抜け術」を使い、皆があっけに取られているうちに撮影してしまうと言うギャング的方法を取らざるを得なかった。あまり誉められた事ではないが、フリーのカメラマンがしばしばとる方法で、後にこの経験がお祭りの取材などに役に立ったと言うことでもある。
  前述の新幹線開業の時は、完全にバリケードを築かれて近寄ることさえ出来ない状態だったが、翌昭和40年11月1日、3時間10分運転の時は意外とオープンで報道陣の脚立の間に立つことができた。やはり同じ「ひかり1号」で谷伍平新幹線局長が一人でカットしたが、この時は列車が動き出してからなかなかテープが切れず、前で突っ張ってしまってからやっと切れたと言う状態は、写真でよく判る。
 常磐線電化開業(平駅)、特急「あさま」運転開始(上野駅)、特急「あずさ」運転開始(新宿駅)、西武拝島線開業(玉川上水駅)などに出かけたが、その後定期列車や、開業当日の出発式が少なくなったり、ファンのカメラマンが増えたため警備が厳しくなり「瞬間縄抜け術」が使えなくなってしまったため、行かなくなってしまった。列車の前で切れたテープがヒラヒラした瞬間が捉えられたときは、かなりの満足感があるものだ。
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昭和42年10月1日 平(現いわき)駅常磐線電化

2001/11/23


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