そもそもこの夫婦旅を企画した発端は、相方から一度寝台列車に乗ってみたいとのリクエストがあったからだ。 そして前々から出雲大社にもお参りしたいと言っていたので、それではと、サンライズ出雲で行くプランを練り始めた次第である。 で、大事な資金繰りがらみの話だが、この際、大人の休日倶楽部に入る事にした。 何しろジパング会員はJR全線で切符が3割引き(利用初回&2回目は2割引き)になるというのは大きい。 改悪されてしまった18きっぷも、もう現地移動等で使う機会が無さそうなので、年齢が活きるこちらを有効活用すべきという算段をした。
ところがいざサンライズの手配をしようと調べると、これが昨今なかなかのプラチナチケット化しており、出来合いのツアーでも申し込まない限り、16年前に四国へ行った時の様に容易に取れる状況でない事がハッキリして来た。 仕方なく寝台列車は諦めてもらって、新幹線で中継地岡山へ行って一泊、翌朝一番のやくもで島根へと移動し二泊するというプランで手を打ってもらったわけである。
出立の朝、4:30 起床で早朝の特快東京行に乗る。 初日は中継地岡山への移動日なのでゆっくり目のスタートで良いかと思ったが、相方の希望でこの日も岡山周辺の観光を盛り込む事になり、東京駅から朝早いのぞみに乗車。 今日は雲多めの天気であるが、所々青空が見えている。 ところが新丹那トンネルを出ると全くの曇天となり、本日も富士の山頂は拝めず、ここのところ外れ続きではある。 席はリクエストにより車両中央部の指定を取ったので、通路を通る人も少なく割合と静かだ。 名古屋、京都、新大阪、新神戸と順調に停車し、定刻10:46に岡山着で一旦改札を出る。
ここで二人はしばし別行動となる。 それは持って来ている荷物によるところなのだが、私がリュック一つで行動しているのに対し女性はなかなかそうも行かず、キャリーケースを併用している。 なので彼女は一度今夜の宿へ寄り、荷物を預かってもらう手筈になっている。 宿の手配も任せてあったが、その為に駅至近のホテルを選んだようだ。
水島臨海鉄道 倉敷市駅
倉敷市駅ホーム MRT300形306
私はと言うと、せっかくここで時間を使える形になったので、先に倉敷へ移動して未乗線区の乗り鉄をする計画にしている。 というわけで、再び改札に入り直し、山陽本線の電車で倉敷へと向かった。 倉敷着は11:19で、乗り継ぎ時間は20分ほど。 JR倉敷駅南口を出て右手へ進めばすぐに立体駐輪場が見えて来る。 機会があれば乗りたいと思っていた水島臨海鉄道の倉敷市駅は、この施設の1階にホームがあるという異色の構造だ。 ここはSuicaが使えないので券売機で紙の切符を買ってホームへ進む。 既に入線していた気動車は水色のMRT306、ひまわりのラッピングが側面にあり、愛称は「ひまわり号」だ。
発車してしばらく並走したJR線が右に分かれて行くと、左へカーブして徐々に築堤を登りやがて高架線に。 平日昼間なので車内は閑散としているが、それも途中の弥生・水島駅あたりでほぼ全員が降りてしまい、終点「三菱自工前」まで行ったのは私と同類と思われる1名のみだった。 折り返し列車の時刻によりここでの滞在時間は20分あまり。 この奥の倉敷貨物ターミナル駅まで留置車両を見に行きたい所だが、少し距離があって時間が心もとないのでそれは止めにして、付近の廃線跡を覗いて見る事にした。 自工前駅から岸壁の方へ戻る形でカーブを描いている引込線跡が地図で見えたからだ。 埠頭あたりまで行ってみたが、途中の踏切などは撤去されているものの、まだその前後の線路は残っており、比較的最近まで生きていたんじゃないかと思わせられた(後で調べたところ西埠頭線といい、2016年に廃止との事)
三菱自工前駅に到着
水島臨海鉄道 西埠頭線跡
三菱自工前駅は文字通り三菱自動車工業水島製作所の目の前に位置するが、他も周囲は工場ばかりで一般人向けの物は何も無い。 そして駅に券売機も無いので、帰路は乗車時に車内の整理券をとり下車駅で料金を支払う方式だ。 時間になってやって来たのは MRT303、営業開始50周年を記念した特別塗装は、飛躍への情熱を表現した「赤」と安全を象徴した「青」をコンセプトにしている。 この気動車で終点倉敷市駅まで戻り、ここは駅員がいるので改札口で現金精算して駅を後に、JR倉敷駅へと歩を進めた。 (※水島臨海鉄道の他の写真は別途公開予定)
三菱自工前駅 MRT300形303
さて待ち合わせはJRの改札口前、相方は既に到着して待っていた。 何でもだいぶ前に倉敷に着いて、時間があるのでこれから向かう美観地区の下見を兼ねて少し歩いてみたんだそうな。 ところが「美観地区ちかみち」の看板に誘われてそのまま商店街を真っすぐズンズン歩いて行った結果、中央病院のあたりまで迷い込んでしまったようだ。 正解は近道途中で右手へ折れないといけない筈だが、どこかで案内を見逃してしまったのだろうか?
倉敷 美観地区
亀遊亭で亀遊亭巻のランチ
二人で改めて駅前通りをまっすぐ進み、10分程で美観地区入口へ。 こんなに近かったのかと驚いていた。 既に13時を過ぎているので倉敷川沿いに出たところで昼食、瀟洒な御門をくぐって「亀遊亭」で限定20食 亀遊亭巻ランチを。 近くにある倉敷観光ホテルがやっているらしく、落ち着いた雰囲気でゆっくりと美味しい食事が出来た。 食後は一休みして付近の散策へ。 テレビでよく見る、川の流れを挟んだ両岸に風情ある建物の並ぶ景観は流石に見事。 この日は川の掃除をしているらしく、作業の方が降りて入っているあたりは水位が低くされていた。 その後は少し裏手にあるアイビースクエアへ。 ここはクラボウの工場跡を再利用して出来た商業施設で、赤煉瓦の建物やそれを覆うツタが圧巻の眺めだ。
倉敷アイビースクエア
15時過ぎの電車で岡山へ戻り、駅前から路面電車に乗って、今度は日本三名園のひとつである後楽園を観に行く。 だいぶ日も傾いて来たが、夕方16:45まで入園可能だから有難い。 川に挟まれた中州に位置する池泉回遊式の広大な庭園は、岡山城や周辺の山を借景として美しい景観を作り出している。 閉園時間後に幻想庭園というイベントが行われているらしく、そこかしこにライトアップ用の和傘が配置されていた。 園内も広くだいぶ歩き疲れて来たので、隣接する岡山城は外から見るだけにとどめる。 百閒先生も阿房列車で書いているように、天守は戦災で一度焼け落ちているので、これはその後に復元された新しい城である。
岡山後楽園
岡山城(烏城)
帰りは、来る途中で見かけた雰囲気の良さそうなカフェ「烏城珈琲店」に立ち寄り、味わい深いプレスコーヒー、そしてデザートは「きび団子とむらすずめ」を所望。 甘いものはたちまちにして疲れを癒してくれるので有難い。 城下電停から再び電車に乗り、今宵の宿は「西川緑道公園」から至近なのでそちらで下車。 チェックインしたのは角部屋のとてつもなく広いツインで、非常にコスパの良い部屋を掘り当てて予約した相方のグッジョブだ。 トイレとバスが別になっているのも夫婦連れには嬉しい配慮だし、そう言えばカードキーも 2枚用意されているのが有難い。
西川緑道公園 イルミネーション
少し足を休めた後、夕食を食べに揃って外出。 あちこち探したが、結局無難な駅前地下街の店に入り「はしや定食」なるものを注文。 鮪のお刺身や牛ステーキでいただくご飯はなかなかの絶品であった。 ホテルへ戻る途中にある西川緑道公園ではイルミネーション開催中。 川面に映る光の饗宴にしばし時を忘れつつ、岡山の夜はふけてゆくのであった。