Banner(2)

■2日目:出雲、松江

初日がかなり盛り上がってしまったが、旅の本来の目的としては今日からが本番なのだ。 5:00に起床してホテルの部屋で軽く朝食を食べ、チェックアウト後に地下道を通って岡山駅へ。 これから乗るのは7:05のやくも1号出雲市行。 ホームで待っているとやって来た車両は2023年にデビューしたばかりの273系電車だ。 その見た目こそ271系ベースで目新しさは無いが、やくもブロンズの外装色と「八雲立つ」由来のロゴマークがカッコいい。 車内は満席まで行かないが6~7割方埋まっており、平日朝一番の便としては上出来だろう。

Photo 岡山駅 特急「やくも」273系
Photo 特急「やくも」車内

やくも1号は静かにホームを離れると、しばらく山陽本線をひた走り、昨日立ち寄った倉敷から伯備線に入る。 市街地を出て山岳地帯に分け入るとカーブが多くなり、この車両の特徴である振り子式の本領発揮。右へ左へと車体を傾けながらカーブを回り込んで行くスピード感は、自転車で峠道を下るスラロームの醍醐味を想起させる。 伯備線内では備中高梁、新見、生山と停車。 生山駅では上り電車と交換したが、それは昨年の松江旅の帰路で私が乗っていた列車であり、何となく感慨深い。 生山を発車すると米子までは無停車、線路は徐々に平野部へと下り始め、気がつくと右手の山稜の向こうに大山の頂が霞んで見えている。 過去に車窓から何度か見ている大山であるが、冠雪した季節に訪れる機会が無いせいか、あまり印象に残っていない。

伯耆大山駅で山陰本線と合流し米子を発車すれば、次の安来駅には9:30着。 列車は出雲市行きだが、我々はここで一旦下車して駅を出る。 実は今夜の宿をここにとってあり、チェックインまでの間そこでキャリーケースを預かってもらう為だ。 計画立案時に宿手配担当の相方が松江近辺をあちこち探したのだが、どこも宿泊料金が高騰しており、少し離れたこちらに手頃な価格帯のホテルを見つけたという経緯なのだ。 立地条件も駅から徒歩5分と好都合、駅前ロータリー向かいの信号を渡ればその向こうにもうホテルの建物が見えている。

Photo 山陰本線 安来駅に到着

事のついでに私のリュックも含め無事荷物を預けて安来駅に戻り、特急やくもの後続でやって来た09:54発普通出雲市行、俊足気動車キハ126系2連に乗り込んだ。 列車は右手に中海と宍道湖を繋ぐ大橋川を見つつ進み、松江から先は宍道湖の景観を大窓に映しながら所要73分で出雲市までを走破した。 出雲市11:07着で、出雲へ来たからにはここからはこれに乗らねばならない。 電鉄出雲市駅に徒歩で移動し、一畑電車(ばたでん)で出雲大社へと向かう。

Photo 美しい宍道湖の景色に夢中

高架のホームへ登って行くと、待っていたのは新車(と言っても9年前)の7000系トップナンバー単行、昨年乗れずに悔しい思いをした車両だ。 だがこれは松江しんじ湖温泉行なので途中の川跡で乗換、そこからは旧京王の5000系2連となった。 川跡から先の大社線内では、出雲ドームや粟津稲生神社の連続鳥居等を車窓に映しながら進み、堀川をゆっくりと渡れば終点、出雲大社前に到着となる。

Photo 一畑電車7000系(電鉄出雲市駅)
Photo 川跡駅で大社線に乗り換え
Photo 出雲大社前駅 駅舎

いつ来ても美しいステンドグラスの出雲大社前駅、初めて見る相方もしきりに感心していた。 私はここへ降りたのは二度目になるが、前回はスルーしていたので出雲大社へお参りするのは今日が初めてだ。 土産物屋の並ぶ参道を進んで行くと、目の前には立派な二の鳥居が見えて来る。 ここからが出雲大社の境内だが、お昼を過ぎているのでお参り前に少し参道を逸れ、大駐車場脇の「観光センターいずも」の食堂で昼食とした。 食したのはもちろん出雲蕎麦だが、もう一つの名物である出雲ぜんざいは残念ながら食べそびれてしまった。

Photo 出雲大社 二の鳥居

二の鳥居に戻り、改めて参拝を。 これは勢溜の大鳥居と言い、新日鐵住金により2018年に建て替え竣功されたものだそうだ。 参道を進み拝殿に至る。 出雲大社では参拝作法が二礼四拍手一礼となっているのが特徴的だ。 相方は御朱印をいただきに拝殿裏手の受付所へ。 その後二人で東十九社などの建物を見学、東西に並ぶこれらは神様の宿所だそうだが、ちょうど神在月なので八百万の神々が滞在されている筈である。 駅へ戻るついでに少し足を延ばして一の鳥居まで行ってみたが、足元の橋が架け替え工事中で雑然としていた。 出雲大社は一の鳥居から順に、石、鋼、鉄、銅で出来た鳥居が並んでいるそうだ。 一の鳥居の向こうには廃止された国鉄大社線の旧大社駅が保存されているが、歩き疲れて今回も見学はパスしてしまった。

Photo 出雲大社 拝殿

出雲大社前から再びばたでんに乗り、松江へ移動。 今回、家から出雲市駅までの往復切符で割引を獲得しているが、帰路の出雲市→松江間は一畑の方に乗るので、少々勿体無いがこの区間だけ使わずに終わってしまう。 乗っている電車の行先は松江しんじ湖温泉だから川跡で乗り換えは無いが、途中の一畑口では名物のスイッチバックが行なわれる。 逆方向に進みだす電車に相方が「あれっ?」と驚くさまを期待していたが、熟睡しているので全く気がつかず。 目が覚めた頃には車窓いっぱいに宍道湖を収めて走っていたが、進行方向が変わった事は分かっていないようだ。

松江しんじ湖温泉駅着は14:55。 ここから徒歩で松江城へ向かい、テクテク20分ほど歩いてようやくお堀が見えて来る。 その堀に架けられた橋を渡っていると、たくさんの観光客を乗せた遊覧船がやって来た。 松江は水の都とも呼ばれ、城を囲む堀川やその周辺の水路を回遊する遊覧船コースが設けられている。 さて我々の方は急な石段を登って天守閣の見える広場へ出たが、既に歩き疲れてそれ以上登る気力はとうに失せていた。 なので天守入館券は買わずに、外から眺めるだけに留めた次第。

Photo 松江城 天守閣

近くのベンチからしばし美しい天守を愛でた後、坂を下って北惣門橋を渡り、松江歴史館の前へ出た。 そこを左手へ進み宇賀橋を渡ると、塩見縄手と呼ばれる武家屋敷のあった一帯へ出る。 その先には小泉八雲記念館などもあるのだが、出雲大社でゆっくりし過ぎて少々時間が押して来ているので見学は翌日に回そう。 計画段階で見たいものの一つとして挙げていた宍道湖の夕日を優先させる事とし、塩見縄手のバス停でバスを待つ。 松江市営バスにはレイクラインという市内循環路線があるが、日没に合わせた「夕日鑑賞便」という素敵な特別ルートが用意されているのだ。

レイクラインバス、塩見縄手16:14発、宍道湖の夕日スポットとして人気の嫁ヶ島夕日公園停留所に16:44着。 既に日は暮れんとする時刻、大勢の人々が湖岸に集まっている。 ここからの眺めは宍道湖の対岸に沈む夕陽、空は晴れているが、あぁ、沈む方向にだけ若干の雲がかかっている。 それでも何とか日没直前の数分間、雲間から太陽が顔を出し、湖面に光の道を作ってくれた。 手前には嫁ヶ島もその姿を見せており、感動の光景を織りなした。 最初に一人旅で松江を訪問した際、宿のレンタサイクルでここまで散歩して夕日を眺めた事を想い出す。 ちなみにレイクラインバスの「夕日鑑賞便」は2本あるが、我々の乗った次の便では日没に間に合わない状況だったので、必ずしも時刻を合わせて運行しているわけでは無さそうである。 親切にも松江観光協会が 宍道湖日没時刻表 をネットで公開してくれているので、それを活用してバスを選定したのが功を奏した。

Photo 宍道湖の夕日

日も沈んでしまったところで、帰るとしますか。 湖岸に沿って走る国道9号を潜る地下道を通り、陸側のバス停は「夕日公園前」という湖側とは異なる名称になっている。 バスはこの先で裏道をループ状に転回して湖側の「嫁ヶ島夕日公園」に戻って来るので、乗客が混乱しないようにとの配慮かも知れない。 レイクラインバスは環状に走っているが、全ての便が松江駅終着となり客は一旦降ろされる。 乗降はSuicaが使えるので至って便利だ。

松江駅に着いた所でそろそろお腹が鳴りだす時間だが、駅構内シャミネ松江の中を探すもどこも満員で、割と空いていた韓国料理店で石焼ビビンバ+韓国おでんの夕食となった。 食後はお茶に誘い出し、駅近くのクーランデールという喫茶店でケーキセットをプレゼント。 この日は相方の誕生日という事で、ささやかなお祝いを兼ねたわけなのである。 その後は駅前のコンビニで買出しをした後に山陰本線の列車で安来へ戻り、20時過ぎに宿へチェックインした旅の2日目であった。

Photo クーランデールのケーキセット
(続く)