2018年9月30日

サイドストーリー(13)

サイドストーリー13本目、これで全ての商店建物の紹介が完了。横丁に聳える3階建ての雑居ビルは、通称「Men'sビル」とも呼ばれるとか。Menは男性でなく麺の事ですww

生蕎麦:多賀庵

Dscn6147.jpgこの界隈には居酒屋の大将の他にもう一人、「大将」と呼ばれる人物がすぐ近くにいる。それは蕎麦屋「多賀庵」の大将、この人もなかなかの堅物親父で有名だ。聞けば、かの藪蕎麦の暖簾を分けた由緒ある店で、通の間では隠れた名店とされているらしいが、たまにテレビや雑誌から取材の打診が来ても全て断ってしまう。SNSへアップしようと、食べる前に蕎麦の写真を撮ってグズグズしてる客が大目玉を食った、なんてエピソードはザラである。

彼はもともと坂を登った駅前あたりで店を営んでいたのだが、駅周辺整備事業の一環で駅前広場拡張の際の換地に応じ、今の場所へ引っ込んで来た。元々この土地はしもてつ、さらに遡れば東葛電軌創業時からの所有地だったという事だ。お隣の洋食店が駅舎だったそうだから、そこと地続きの駅施設用地か何かだったのであろう。引越しは終わったがその後駅前整備の方は遅れに遅れ、最近になってようやくロータリーが完成したという次第だ。

頑固な大将が換地を受け入れた理由は定かでないが、何でもその際にだいぶ保証金が出たとかで、彼は新しい土地に自宅を兼ねた小さなビルを建て、1階は店子に貸すようにした。引き続き自分の蕎麦屋は2階で営業しているが、店舗は最小限にして何とか食っていける程度の規模に縮小してしまったようだ。結構多趣味な御仁で、余裕が出て空いた時間は屋上で一人何かゴニョゴニョしてるらしい。

Dscn6129.jpg

奥さんがまだ若くて現役の教師だし、音大を出た娘もピアノ教室を開いているようだから、生活はある程度安定しているのだろう。以前は店に人も多く雇っていたが、今は大将とパートの店員一人だけで道楽的に細々と店を回しているのである。気分次第で自主的に休んでしまう事も多く、そんな日は商店街の洋菓子店ビルにある集会場に入り浸りだという。

そこで居酒屋の大将と一緒になる事も少なからずあり、二人は幼なじみだそうで下の名前にチャンづけで呼び合っているが、周囲の人達にしてみればどちらも同じ「大将」なので、さて困った。それで屋号を付けて、「酔老乃瀧」の大将、「多賀庵」の大将、と言っていたのがだんだんと短縮され「すいろう大将」「たがあん大将」、最後には業界風に逆さ読みして「ろうすい大将」「あんたが大将」となったってさ(笑)

Dscn6130.jpg

コメント(2)

この建物の紹介がまだだなぁと思っていたので、ついに来ましたね。
大将がもう一人いて、業界風読みで、こちらの大将は、あんたが大将と呼ばれているのですね。面白いです。「たがあん」は最初から、そのためのネーミングだったのでしょうか?(笑)

musashimarumaruさん、コメントありがとうございます。
多賀庵の名前、ご推察の通りです(笑
それはいいんですが、もう一方の「ろうすい大将」の方は、きっとこの呼ばれ方にはお怒りでしょうね。

コメントする

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL: