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北上駅の朝
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臨時快速さんりくトレイン宮古
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区界駅でしばし休憩
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区界駅より兜明神岳を望む
駅名時刻列車
北上08221529M
盛岡0911
09439646D(快速)
宮古1154
1257650D
釜石1412
14173626D(快速)
花巻1556
16441546M
一ノ関1738


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宮古駅前にて
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お昼のさんま握り

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〜 二日目:山田線,釜石線(1) 〜

北上の一夜が明け、本日は二日目。 まずは山田線に乗るため、東北本線で盛岡へと向かう。 途中「村崎野」駅では語呂合わせだろうか、駅ホームに紫の花がたくさん咲いていて目を楽しませてくれた。 50分程電車に揺られて盛岡着。 少し時間があるので一旦改札を抜けて待合室へと収まる… つもりだったのだが、ドアを開けるといきなり中から「いらっしゃいませー」という元気な声が耳に飛び込んで来て、気がつくと目の前はコーヒー店のカウンター。 面食らって踵を返したが、振り向いて良く見ると待合室の中に店が同居してるだけなのであった。 おねーさん、その掛け声はもう少し控え目にお願いします。

しょうがない、入り直すのも気まずいし、少し待てば次の列車が入線して来る筈だからホームで待つか、と階段を下りて行くと、目の前には見慣れない緑の車体が軽いアイドリング音と共に発車を待っている。 何と、良く下調べをしないで行ったのだが、これから乗る快速は、ジョイフル列車「Kenji」を観光客向けにあつらえた臨時快速なのだった。 残念ながら前面展望の出来る先頭車は指定席、ならば後方はと見ると、こちらは自由席だが既に乗客で埋まっている。 仕方なく中間車のハイデッカー席に納まったが、間隔の広いリクライニングシートでここも充分快適である。

発車すると新幹線の高架に別れを告げ、徐々に市街地から山へと分け入って行く。 右へ左へとカーブを切りつつ、川を渡りトンネルを抜けてkenji号は快調に三陸海岸を目指す。 線路ギリギリまで生い茂った樹々のシャワーを浴びながら、緑のボディが一陣の風となってひた走るのダ。 この箱は2〜3割程度しか席が埋まっていないため、静かに落ち着いてくつろげる。 通路反対側に陣取ったキャリア風スーツの女性は乗り慣れたビジネス客らしく、席に着くと同時にリクライニングを目一杯水平にし、顔全体を覆う大きなマスクをかけて気持ち良さそうに寝入ってしまった。

観光列車なので基本的に停車駅は少ない。 次々と細いホームを後方にすっ飛ばして突っ走ったが、そのうちにスピードが緩んで高原上の小さな駅で静かに停まった。 ここで交換待ちの為、9分停車との事。駅名は「区界(くざかい)」、いかにもな名前である。 この先はおそらく、太平洋へと向かう下り勾配の線路なのだろう。 窓の外には特徴的な形をした頂の山が、遠くからこちらのホームを見下ろしている。

乗客がホームへ出だしたので私も後へ続き、しばし高原の空気を満喫した。 席に戻って少しすると、対向の列車が宮古の方から息を切らせて登って来た。 ブルル〜っと大きなエンジン音をひと振るいさせて停車したその車体は、古参のキハ52だ。 塗装があちこち剥げてボロボロよれよれの姿で、少々悲壮感に満ちていた。

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区界高原と兜明神岳

こちらも発車時刻となり、出発する。 すぐに車掌さんの観光案内があったが、先ほどから左手に見えているあの特徴的な山は「兜明神岳」との事だった。 この後も何回か放送が流れ、列車も景色を見せるために徐行してくれたりした。 右手に一箇所早池峰山が見えるとアナウンスされた時は、「雲で見えない時はご了承下さい」との親切なおことわりまで。 見えなくても車掌さんのせいじゃないからご了承しますョ、心の中で呟いた私であった。 幸い、この日は運よく目にする事が出来たのだが。

山から一下りすると「茂市」に到着。 時刻はそろそろお腹がすいて来た11時35分。 ここから岩泉線が分岐するため乗り換えの案内放送が流れたが、驚いた事に次の列車は15時35分だそうな。 こりゃあちらも乗り潰ししようとしたら、エライ時間がかかるな。 本日はもちろん横道にそれず、このままこの列車で直行する事にしている。

再び走り出し宮古まで最後の力行、段々と山の稜線が低くなって来て、反対に空が徐々に広くなって行く。 街並みが見え出すと左から北リアス線の線路が寄り添い、列車は静かに宮古駅ホームへと入線した。 リュックを背負って列車を降りて行くと、改札口には観光客目当ての客引きやタクシーの運ちゃんが群がっている。 最近あまり見かけない光景だが、このように一所懸命呼び込みしてるのがちょっと前の時代のようで、なかなか面白かった。

ちょうどお昼時、しかも次の列車まで小一時間あるので駅前の食事処にでも入ろうかと思ったが、どこも観光客らしき列が出来ていたので敬遠し、スーパーで仕入れたさんま寿司を駅前でパクつく。 観光客を確保出来なかったタクシーは当てどなくロータリーで客待ち、地元の人は次々とやって来る路線バスでどこかへ散ってゆく。 雀が一羽寄って来たので飯粒を一つ弾いてやると、たちまち目の前に群れが出来、期待の眼で見つめられてしまった。


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