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3. 雨上がりの高松翌朝は予讃線を伊予から讃岐の国まで戻る。もちろん18切符の各駅旅なので松山〜多度津間160kmあまり、特急に乗ればその半分程度の時間で着くところを4時間弱かけてゆるりと行く。 昨夜の雨は夕立程度かと思ったが、今朝もまだ降り続いているのは予想外だった。 幸い宿は駅至近なので傘をささずにロータリーを駆け抜け、大して濡れずに駅舎内まで走り込めた。改札で切符に2回目の日付を入れてもらい、とりあえずはまずトイレ、それからおもむろに跨線橋を渡ってゆく。 朝一番の多度津行き各駅停車はもちろんガラガラである。 3両編成最後尾車のボックス席に一人沈み込み自販機で買ったお茶を窓際に置くが、これはあくまで非常用であってまだ飲むわけには行かぬ。 何しろJR四国の普通電車は、長距離を走るものでもごく一部の形式を除いてトイレが無いのだから用心するに越した事はない。 そんなわけで、今日の旅程は途中で一列車遅らせても大丈夫なようにバックアッププランまで調べて来てある。 電車は昨日の明るい空の下とは打って変わってどんよりと鼠色に沈んだ空と海を望みつつ、雨滴に窓を濡らしながら今治へと向けて半島を北上して行く。 しばらくすると車内のスピーカーを通して運転士と列車指令の会話らしき声が漏れ聞こえて来た。 この先で大雨による速度制限が発令されているらしい。さもあらん、単線を行く各駅停車は途中駅ですれ違い退避を繰り返すが、やって来る特急電車はどれも軒並み遅れている。 こちらも影響されて徐々に遅れが増していった。 さらに運転士さんの声で「ワイパーが故障してどうにもなりません」なんて報告も聞こえて来た。 最徐行で走ってはいるが、大丈夫か?この列車。 |
だが、途中駅で修理の手配がついたのか徐行区間も過ぎて今治あたりからは速度も回復し、電車はようやくまともに走り出す。 伊予西条では私の乗っていたハコが切り離されてしまうため、前の車両に移る羽目になった。 これは予めアナウンスされなかった気がするが聞き逃したか? その後、遅れを取り戻すまでは行かなかったものの快調に走って四国の西半分を覆っていた雨雲の下を抜け出し、列車は雨上がりの讃岐平野へと飛び出した。 幸い途中でトイレ下車するような差し迫った場面も無く多度津へ到着、遅延はここでの乗り継ぎ時間があるので吸収可能だ。 多度津は予讃線と土讃線の分岐する駅で、ホームのベンチで次々とやって来る各方面の特急を見ているだけでもなかなか面白い。 土讃線は大半が非電化なので特急気動車、予讃線は主に電車特急、さらにアンパンマンのイラストが入った編成等もあり目に飽きさせない。 そう言えば四国のJR線は予土線も含め、どれも旧国名の「讃岐」「伊予」「土佐」から一文字ずつを取って命名されているが、高徳線とか徳島線に限っては例外で「阿波」が使われていない。 何故なんだろう、開通時期等と関係するのか?もっとも、「あさん線」「あど線」とかだとあまり語呂がよろしくないような気もするが…。 土讃線の113系近郊電車に乗ればすぐに琴平駅着。 今日のお目当てはもちろん、香川のローカル私鉄「ことでん」こと高松琴平電気鉄道だ。 立派な造りのJR琴平駅舎を振り返り見つつ駅前の通りをまっすぐ進むと、橋の手前右手に琴電琴平駅。 いや、建物があまりに見事で、最初駅舎とは気づかずに一度通り過ぎてしまったのだが。 駅の窓口で一日フリー切符を求めしばらく待合室にいたが、まだ発車までは間があるのでこんぴら様の参道入口まで往復して来た。 しかし参道の方は賑わっているものの、JRも琴電も駅には観光客の姿が見えない。 今日は土曜日だと言うのに、これはきっと車やバスで来る人が多いからなのだろうな。 これから乗る琴平線は琴電の中では本線格なのだが、やはりこのあたりでは車の方が何かと便利な存在なのだと思う。 |
改札が始まりホームへと繰り出す。 昨日は元京王電車ばかり乗っていたが、こちらのホームで待っていたのは元京急の好ましい電車。 琴電は地方私鉄としては珍しい1435mmの広軌を採用しているから、同じ軌間の京急車は何かと好都合なのだろう。 時間が来て発車すると右カーブを切ってすぐに土讃線の陸橋下を潜る。 琴電の他にもう一本線路がくぐれるガードが脇に見えたが、あれが琴急あたりの廃線跡か。 電車の進んでゆく左右には、いかにも四国の風景らしいポッコリとした山や溜池が見られる。 左にほぼ90度大カーブして仏生山駅を過ぎると、ここからは北進して高松の市街地へと入って行く。 高松自動車道を潜る所は複線幅の高架橋だが、まだ線路は片側しか無かった。 栗林公園駅でようやく複線となり、ジャンクションの瓦町を過ぎて終着高松築港駅へ静々と入線した。 |
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