観光バスの窓に頬杖をついて、僕はウツラウツラとしていた。それは今からン十年前、中学の修学旅行の時の事だ。午前中、裏磐梯の五色沼を見て回った我々は、バスに分乗して磐梯吾妻スカイラインへと向かっていた。車窓左手後方には磐梯山がそびえ立っているはずだったが、私の席は進行右側。窓の外には、平凡な田園風景が広がっているばかりだった。 ところがさっきから気になっているのは、水田の中に一筋の畦道が、道につかず離れずずっと寄り添って走っている事だった。この畦道、何か他と違ってやけにしっかりとしているのが変だ。そのうちにアレッ!白い標識が。。。良く鉄道の線路端で見かける様なやつだ。なんでこんな所に。。。こんなものが。。。。。
その時の記憶は、このあたりで事切れている。寝てしまったのかも知れない。この後思い出せるのは、スカイラインの見事な紅葉と、雲の合間から遥か下界に見えた福島の市街地だった。 それ以来、いつかは再訪したいと思い続けた沼尻の地へ、それからさらに数十年を経て立つことが出来た。今回の沼尻は、私にとってそういう場所なのだ。
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