門司港駅、くろがね線

旧駅跡のホテルに旅程3日目の朝が来た。 昨夜は駅に発着する軽便列車の夢を見ながら…、なんて事は全くなくて、そもそもその時点では知らなかったのだから夢も見ずにグッスリと寝て起きた。 朝食がテキパキと済んで時間が余ったので、もうチェックアウトしようかと思う。 検索をしてみると、今から出れば予定より早い列車で九州入り出来そうだ。 まだ気温の上がる前の歩道をテクテク歩き、駅に着いて改札上の電光掲示板を見て気が付く。 「あちゃー、これは宇部行きの時刻だ」検索の目的地を門司港駅にしていた為、宇部経由のルートが出てしまったのだ。 宇部線は昨日完乗しているので、今日は未踏破の小野田線経由でなくては意味がない。

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仕方なく、駅舎前の待合室で時間をつぶす。 ベンチには毎朝の常連なのか一人のおばあさんが陣取り、行き交う人に「いってらっしゃーい」と声をかけている。 20分程してようやく小野田行きの時間となり、改札を抜けて乗り場へ。 今日の一本目も黄色い電車の105系、当初、総武線に似た色の電車は目に新鮮に映っていたが、さすがに乗り続けると少々食傷気味になる。 2両編成の車内は土曜の朝とあってガラガラである。 宇部新川を発車し居能から小野田線に入り、昨日と同じく厚東川を恐々渡って雀田へ。 向かいホームには朝2本目(次が終電)の長門本山行きが待っていて再び乗りたい衝動にかられたが、グッと我慢してそのまま小野田へと向かう。

小野田駅では山陽本線の接続列車まで30分ほど間があるので、一旦跨線橋を渡ってトイレに寄った。 と思ったら、私の乗って来た小野田線の停まるホームの向かい側に山陽本線の電車が滑り込んできた。 何と、同一ホーム乗り換えで2分の接続列車があったのだ。 どうりで、私と一緒に降りた人達がホーム向かい側に列を作っていたはずだ。 結局昨日の徳山に続き、小野田でも乗り逃がして30分のロス。乗れていれば門司港駅で散策の時間に余裕が出来たのにと、悔しい思いをした。 後で分かった事だが、私の使っていた経路探索ツールの乗換時間が3分(しかも無償版は変更不可能)に設定されており、どうやらそれで引っかからなかったらしいのだ。

小野田からの山陽本線は再び平面顔の115系、これに乗ること40分ジャストで本州の末端、下関に着いた。 ここから 3分の乗換時間で門司行きが出るが、案内放送がよく聞き取れずにホーム移動で右往左往。 何とか間に合って白地に青帯の老兵415系に駆け込み、関門海峡をトンネルで潜って無事九州入りを果たす事が出来た。 現在の関門トンネルだが、ここを通過する電車は基本的に415系のみでほぼ小倉行きだが、私の乗ったのは門司駅が終点だった。 ここで鹿児島本線の上りに乗り換えて門司港駅に向かうわけだが、いつもはそのまま博多方面へ抜けてしまうので、この区間は今回が初乗車となる。

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門司駅で赤い顔の813系に乗り換える。 このカラーの電車に遭遇すると九州に来たなぁと実感するが、正直、デザインはあまり好きになれない。 発車すると、僅か8分程で門司港駅だ。 門司港駅舎も多くの期間をかけて保存修理工事が行なわれていたが、折よく今年の3月にグランドオープンとなっている。 2両編成の電車は長いホームに静々と入線し、ピタリと停車。 改札口へ向かって行くと、かつての九州を代表する玄関駅だっただけに、どこもかしこも立派で重厚な造りである。

次に乗る予定の下り列車まで30分程の間、駅を出て周辺を少し散策する。 まずは整備された駅舎をじっくり観察し、広場周辺や船着場に面した昭和レトロ、大正ロマン、明治モダンな数々の建物を見て回って雰囲気を楽しんだ。 ある建物の前には「バナナの叩き売り発祥の地」なる記念碑まである。 駅に戻ってトイレに寄ると、そこまでもが歴史を重ねた造りになっており、大変感銘を受けた。


photo 威風堂々の門司港駅舎。6年かけた駅舎保存修理工事が終わったばかりだ

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門司港駅を後に、9:39発の直方行き電車で鹿児島本線を下る。 次はいよいよ筑豊電鉄に乗る番だが、その前に若干寄り道を。 20分程走って下車したのは九州工大前駅。文字通り九州工業大学の最寄り駅だが、夏休みなので学生の姿はない。 ここから暑さの中を10分程歩いて目指すは、知る人ぞ知るくろがね線だ。

くろがね線は日本製鉄八幡製鉄所の専用鉄道で、ここ戸畑地区と八幡地区の工場間を結んでいる。 開業当初は炭滓線(たんさいせん)と呼ばれ、製鉄により発生する石炭殻や鉱滓(スラッグ)、溶銑などを輸送していた。 現在のくろがね線という愛称は社員公募により1972年に付けられたものらしい。 その線路沿線はほぼ住宅地であるが、切り通しや1km超のトンネル、及び高架で抜けているため踏切は存在しない。

鹿児島本線の下を潜る部分でフェンスの隙間から覗くと、さすがにしっかりとした線路で、工場の専用線等によくあるヘロヘロ感は無い。 少し戸畑方面へ進んだ場所にも跨線橋が見えたので、そちらへも歩いて行って観察した。 ここを不定期に貨物列車が通るらしく、しばらくの間待ってみたのだが、もちろん端から今日見られる事を期待はしていない。 線路敷はかなり広く余裕があるが線路は片側に一本だけ、ビームが複線仕様なので昔は複線だったのだろう。 その代わりに、空いた側の線路敷に今は太いパイプラインが通っている。 しかし、さすがに炎天下に長時間いると全身に汗が吹き出し、頭もボーっとして来る。 これは危険と滞在30分ほどで駅に引き上げ、下り列車に乗って次の目的地、黒崎へと向かった。

photo 宅地の中を掘割状の線路で進むくろがね線。複線幅だが現在線路は一本