May, 2010

東武鉄道

思えば浅草駅から東武電車に乗るのも実に久し振りの事だ。 最後に来たのは矢板線跡を探訪するため、ここからスペーシアに乗車する時だったか。 まだアテンダントの女性達がいた頃で、華やかな笑顔に迎えられて晴れ晴れとした気持ちで車内に乗り込んだのをおぼえている。 今日は普通電車なので車窓もまた違う印象だが、その頃との一番の違いと言えば業平橋駅の脇に目もくらむ巨塔が出現した事か。 その下を通過してしばらくゴトゴトと荒川の堤防下を走ると北千住に着いた。 この電車はここで終点なので上階の乗り場へと移動し、日比谷線からの直通に乗り換えねばならない。 直通する優等列車だと止まらないような小駅利用者には不便な運用だと言える。

浅草駅

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頭端式のターミナル

浅草駅

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大きくカーブしたホーム先端部


東武線の構内踏切で都内に残るものは亀戸線だけのようで、今日の主目的もそちらだが、何故か今は逆方面の電車に乗っている。 そしてやって来たのは梅島駅、一見何の変哲もない高架駅だが、ここのホームはちょっとユニークだ。 東武のこの区間が複々線化される際に敷地幅が足りなかったせいか、上下線のホームが線路中央部に直列し、互いにつながっているのだ。 つまり、通常の倍の長さを持つ細長い島式ホーム片面づつを、各方面交互に使っているという事になる。 もちろん使っていない側の部分は壁になっているので、線路は見えない。 こういう造りは他ではあまり見かけない気がする。

上下線のホームは中央に連絡通路があり行き来出来るのだが、このまま折り返すわけにもいかないので一旦改札を出る。 高架下の駅舎を外へ踏み出して見ると周囲は下町の住宅密集地という感じで、確かにここでは敷地確保が困難だったのもわかるような気がする。 改札はちょうどホーム中央部の直下になるので、エスカレーターを上って行けば上り線のホームへは難なく出られる。 やって来た電車に再び乗って、外側線を行く快速列車と併走しながらやがて北千住へ到着。

梅島駅

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互い違いの細長いホーム

西新井方面< [ 梅島駅模式図 ]>北千住方面 Image

ここで再び乗り継いで、次の目的地は「東向島」。 この駅も構内踏切があるわけではないが、まだ行った事のない東武博物館へ寄ってみようという事で途中下車。 高架下の細長い敷地に建物があるのはかつての交通博物館を思い出す。 入ってゆくと目の前には、かのピーコック、その隣には東武の電車第一号デハ1形も展示されている。 電車は中にも入る事が出来、ニス塗りの車内にクッションの効いた椅子、そして暖かい白熱電灯の光が古き良き時代を物語っていた。

中庭に出ると最近ここの収蔵物の仲間となった、「猫ヒゲ」こと5700系がその流麗な湘南顔を見せている。 前面は半流線型から修復されたものだそうだが、その流れるような曲面は素晴らしい出来で、関係者方々のご苦労も察せられて感心する。 上階へ行くと小窓の外に東武線の実際の線路があり、駅に停車した電車の床下を間近で見られるという、なかなかの趣向がある。

東武博物館

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高架下に展示されている日光軌道線の連接車200形

東武博物館

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デハ1形5号はニス塗りの車内、木造の床、天井には白熱灯


東武博物館

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東武鉄道最初の電気機関車ED101形。譲渡先の近江鉄道で活躍し、後に廃車保存されたものが里帰り

東武博物館

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ロマンスカー5700系。杉戸工場で保存されていた半流線型のものを、展示にあたり湘南顔の非貫通型前面に復元


博物館にはあまり長い時間いられなかったが、またゆっくり再訪させていただくとして曳舟へ向い、ここで本題の亀戸線に乗り換える。 亀戸線は廃止駅も多いのだが今回は趣旨が違うので探索は省略し、まずは「東あずま」駅を訪問。 もう、うっとりとしちゃうほど典型的な構内踏切を持つ駅だ。 対向式のホームは程よくカーブしていて、その亀戸寄りの先端に構内踏切、そしてさりげなく簡素な駅舎。 駅前はロータリーこそ無いが、大通り(丸八通り)に面していて開放感がある。 駅名は旧町名の吾嬬から来ているようだが、ひらがな表記にしたのは難読化を避けるためだろうか。

お腹もすいて来たので丸八通りの駅近傍にあるレストランで遅めの昼食を。 2階奥の席からはすぐ裏手を行く電車の一部がチラリと見える。 曳舟駅で見た時刻表で亀戸線は日中10分ヘッドだった事を思い出し、食後の一休みが済んだら電車通過を確認して頃合を見計らい駅へ。 亀戸線は今でこそ支線格だが、もともとは都心のターミナルを目指して本線として建設された経緯を持つ。 そのためかどうか分からないが、曳舟駅構内を除き全線が複線になっている。 編成はさすがに2両のワンマン運転だが、フリークエントな運行で乗客もそこそこあるようだ。

東あずま駅

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踏切が開くまで乗客は足止め

東あずま駅

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電車が行ってしまってからようやく改札口へ。ヤレヤレ… といつもの平和な日常風景が繰り返される


東あずま駅

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すぐ手前に公道の踏切が隣接するこの駅、構内踏切と進入防止の剣山はお約束の組み合わせ

東あずま駅

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あっさりしたシンプルな駅前


東あずま駅

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取材時、曳舟方のホーム端では桜が満開だった

曳舟方面< [ 東あずま駅模式図 ]>亀戸方面 Image

一駅乗って本日最後の訪問先、「亀戸水神」に着いた。 こちらは曳舟駅側に駅舎と踏切があって、ちょうど東あずま駅をミラー反転させたような配置だ。 「水神」の付く駅名は何だか(?)身近に感じられなくもない。 ホームを歩いて改札口へ向かおうとすると「亀戸天神の最寄駅は亀戸駅です」の案内表示が目立つように貼ってあった。 確かに「天神」と「水神」では紛らわしいかも知れない。 「杜」と「社」ほどではないにしろ…。

ゆったりとした時間が流れている構内を抜け、駅の周りを一巡り。 裏手の路地がホームの膨らみに削られた分かなり細くなっており、通行注意の貼り紙がしてあるのが下町ティスト満点だ。 ちなみに亀戸水神は駅から数分の所にあり、そのお姿はこんな感じ。 で、ここら一帯はその昔、水神森と呼ばれていたそうな。 総武線の南側にかつて同名の都電停留場があったのも、知ってる人は知っている。 都電廃止後のバス停としてその名は今に残っているのだ。

もしもこの駅で間違って降りてしまったのなら、亀戸水神経由で亀戸天神あたりまでブラブラ下町散歩としゃれ込んでみるのも良いかも… なんて言っちゃうのは、ちょっと無責任かな?

亀戸水神駅

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全体的な造りは東あずま駅とそっくりだ

亀戸水神駅

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ゆっくりとした時が流れる構内踏切は、子供連れやお年寄りにやさしい


亀戸水神駅

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亀戸天神と亀戸水神はちがいます

亀戸水神駅

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こじんまりした簡素な駅本屋


亀戸水神駅

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ホーム裏手は道路が極端に狭くなっている

曳舟方面< [ 亀戸水神駅模式図 ]>亀戸方面 Image