旅程 2日目

摩周湖へ

快適な一夜を過ごし明けて旅程二日目、今日は少し遠出をして摩周湖へ向かおうと思う。 宿のある中標津は摩周湖の玄関口とは言い難いが、昨夜地図を眺めていたら、その町域の西端に接して摩周湖がある事に気が付いた。 この湖自体は過去に何度も訪れているが、それらはみな表側の展望台である。 今日は東から向かうので、その対岸となる裏摩周展望台が目的地となる。 道道13、505、150号を経由しておよそ45km、自転車で約3時間ほどのアプローチだからお昼頃には着けるだろう。

ホテルの駐輪場から自転車を出し、北海道の朝の空気を味わいながら街中を行く。 中標津はこのエリアの中では大きな街だが、やはり北海道らしく建物間の空間がかなりユッタリしている。 …と、油断して通り過ぎるところだったが、街を出る前に寄っておきたい場所がある。 東3南1の交差点を左折すると目の前に大きな広場が開ける。 ロータリー状になったそこはどう見ても駅前広場だが、そう、ここは平成元年に廃止された標津線の中標津駅跡だ。 現在はバスターミナルとなっており、正面の駅舎があったと思しき位置には「中標津町交通センター」が建っている。

photo 中標津駅「1番線に停まるキハ22」(Wikimedia より)

標津線には乗車経験がある。 1980年3月、宿泊地の釧路から根室本線を根室まで往復し、復路途中の厚床から中標津を経由し根室標津でYHに一泊、翌日は標茶へ抜けたから、標津線は本支線共に全線踏破している。 車窓左手から線路が近づいて来て駅に入った記憶があるが、それが中標津駅唯一の思い出だ。 交通センター内には鉄道関連物の展示があり申し出れば中を見学出来るらしいが、今日はまだ朝早いので見送ろう。

中標津の市街地を抜け、道道13号を西進。 標津線は道路右手に沿っており、途中にあるモダンな三角屋根の公衆トイレの場所が当幌駅跡だ。 当幌を過ぎると線路は道路左手に移り、しばらく進むと計根別の街に入る。 計根別駅跡には、中標津町計根別支所が建っている。 その少し先には近辺で唯一のセコマがあるので、ここでお昼の買い出しを済ませた。 何しろ裏摩周展望台には景色以外何も無いらしいから、そこでハンガーノックになっても困るのだ。


計根別駅跡(中標津町計根別支所)

計根別の町を出たところで、右手「清里峠」の案内板に従い右折、ここからは道道505号線となる。 周囲は牧草地と畑と防風林の繰り返しが延々続く。 今朝はホテルの朝食バイキングで腹を満たしたのだが、デザートとして少々甘いものが欲しい気分になって来た。 こんな民家もない所では期待薄と思いながらも地図を検索してみると、この先の牧場でソフトクリームが所望できるではないか! で、505号をちょっと右に外れて「山本牧場ミルクレーム」へ。 手焼きコーンのソフトクリームに、人気だというバーボンメープルのトッピングを発注。 お値段は良いがなかなか濃厚で、さすが牧場直営と言える味であった。

再び505号線へ戻り、さらに北進を続ける。 だんだんと前方に山岳地が迫って来るが、その前衛の小さな独立峰が何だかポッコリとしていて可愛らしい。 モアン山と呼ばれるそうだが、その山腹に大文字ならぬ「牛」と大書した文字が、何だか主張しているようで微笑ましく感じる。 これは地域有志の発案によるものだそうだが、牛、牛乳、そして地域名の「養老牛」の意味も含まれるのだとか。

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そこから先は道道150号となり、清里峠へ向けて緩く登って行く。 風景も牧草地から森林地帯へと変化し、野生動物注意の看板もチラホラと。 熊出没で養老牛の地名が報じられる事もあるので、恐る恐る周囲を警戒しながらペダルを漕ぐ。 天気の良いのが救いだが、ずっと続く同じ景色にそろそろ飽きて来たなと思い始めた頃、前方遠くにトンネルが黒い口を開けているのが見えて来た。 近づいてみるとそれはトンネルでなく、防雪の為のスノーシェルターであった。 裏摩周シェルターという施設で、全長750mほど。 車に抜かされると恐そうだが幸い一台も来る事なく、無事通過出来た。

シェルターを出た途端、目の前には「裏摩周展望台←」の案内板が現れる。 それに従って左折し、いよいよ展望台へと向け最後の登坂となる。 分岐からの高低差は150mほどだから、距離も含め、私の地元で言うと多摩川から二ツ塚峠へ登る程度だ。 20分ほどでどん詰まりの駐車場へ着き、自転車を停めてさっそく展望台へ。 裏から見る摩周湖、その中央に聳えるカムイヌプリの風景はまた格別。 今回も霧に閉ざされる事なく神秘の湖を拝めたのは、日頃の行ないが良いせいか?(笑) 大音量のBGMを流す売店もなく、ひっそりと静かな展望台で見晴らしを堪能しながら、一人お握りをパクついた。


帰路は途中から東に道をそれ、養老牛温泉にて立ち寄り湯を楽しむ。 川べりの広々とした露天風呂を満喫した。 …のは良かったんだが、それですっかり脚がトロけてしまい、そこからゴールの宿への道程が長いのなんのって。 往復100km近いツーリングは久し振りで、さすがにこの夜は夕食もそこそこに、バタンキューと早々に寝てしまった次第である。

念のため繰り返し掲示しておきますが、この記事は実際に行っていないバーチャルな妄想旅日記ですので、くれぐれもお間違いなく。 旅情を感じていただきたいとの意図から色々もっともらしく書いていますが… 我ながら大ウソつきですね(笑)

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