2013/11

櫛形山林道 敗退の記

櫛形山(くしがたやま)林道へ行った。 結果はまさかの敗退。 いや、まさかというより当然の結果かも知れない。 以下にその失敗の要因も含め、反省の意味で当日の経過を書きとめておこうと思う。 櫛形山林道は昔、ニューサイクリング誌の「NC道案内」の記事を見て知った。 確かニューサイでは常連の糟谷氏が執筆していたと思う。

櫛形山は甲府盆地の西縁に位置する標高2,052mの山で、林道はその山腹を盆地を見下ろすように南北に貫いている。 林道内の最高地点は1,500m弱位である。 ここは何しろ展望が良いのである。 眼下の甲府盆地やそれを取り巻く御坂山地、その背後には富士山がそびえる、筈である… 天気が良ければ。 だから空気の澄んでいる時に行かないと意味が無い。 プランとしては輪行で身延線の市川大門まで行き、丸山林道の途中から櫛形山林道へ入り、南側から全線走破して韮崎へ抜けようと考えた。 ニューサイで紹介された頃はダートの道だったが、今はほぼ舗装になっているようだ。

出発

11月の3連休初日、天気予報は晴れ、前週の台風通過から1週間が経過し気候も落ち着いているようだ。 前夜にWebで見た林道通行情報も問題なさそうだったので、早起きをして電車に乗った。 甲府方面へ出かける時はいつも中央本線の普通列車に乗る。 この日も立川始発の甲府行きに乗車。 車内は年配の山歩きグループが多く混雑していたが、大多数は甲斐大和と塩山で下車して行った。

終点の甲府着、5分後に発車の身延線特急「ふじかわ」に乗り換え。 自由席310円位なら乗ろうと思った。 何しろこれの次は接続が悪く、しばらく便が無いのだ。 しかし私が乗っていた中央線の車両が一番先頭で、身延線は同じホームだが一番後ろ方から発車する。 重い輪行袋を抱えて急ぎ足でホーム上を移動したが、すんでの所でドアが閉まり特急に逃げられた。 中央線の方も甲府到着が若干遅れていたのかも知れない、車内では特にアナウンスがなかったが。 いずれにしろ、これでせっかく早起きをした分がご破算になった。 結局、次の各駅停車に揺られ、予定から約1時間の遅れで市川大門駅へ着いた。 急ぎ自転車を組み立て駅前広場から走り出したのは、もう10時を回る頃だった。

県道

途中のコンビニで食糧を仕入れる。 リュックは出来るだけ軽くして来たが、山中の事とてお昼は持って行かねばならない。 今朝は起き抜けでまだ食欲がわかず、サンドイッチを少しかじっただけで出て来たのだし。 笛吹川、釜無川を長い橋で渡り、富士川町の市街地へと入って行く。 正面遠く、霞んだ空気の中に櫛形山がせりあがっている。 町は富士川へ注ぐ支流が形成した扇状地の上にあり、平らなようだが西へ向かって微妙に登っていて知らないうちに脚に来る。 町はずれの支流を渡る橋の上で一休み、向こうに櫛形山方面の案内板が見える。 ここまで約30分、買い出しのタイムロスもあるからペースとしてはそこそこか。

街を出はずれるといきなり急登が始まる。 県道はこの奥にある赤石温泉で行き止まりなので、あまり車は多くない。 渓流沿いを行く道は舗装でまだ広さもあるが、この勾配は結構こたえる。 ここんとこ平地ばっかり、というか自転車そのものにさえまともに乗っていなかったので、額から悪い汗が噴き出して来て目に入る。 その都度、指切りグローブのタオル地の部分でふき取るが、汗止めのヘアバンドを持って来なかったのは失敗だ。 息が続かなくなり、路肩に足を付いて小休止。 何だか今日は調子が出ない。 上に行ってもガスっていて眺望は望めそうにないから、登ろうというモチベーションも下がり気味だ。 今朝の電車で勝沼あたりから見下ろした甲府盆地は、一面の靄に煙っていてガッカリしたのである。

平林

持参した地図を開いて現在地を確認し、愕然とする。 結構走って来た感触でいたが、まだ登り坂の1/8程度なのである。 このペースで延々登りが続き、しかも上った先で展望も期待出来ないかと思うと、もうここでUターンして帰ってしまおうか、何て気持ちも浮かんで来た。 まあしかし、とりあえずこの上の集落あたりまで行って考えようと、気持ちを奮い立たせて路面を蹴る。 それは、もう少し走れば疲れと共に本調子が出て来る筈、という自分を騙す考えも秘めての事だ。 そこまで行けば、さらに先へ行く気持ちも湧いて来るだろう、いつものことさ。 だがしかし、すぐに脚は売り切れてしまい、少し走っては休むの繰り返しとなった。 次のカーブ、次の日陰まで何とか漕ぎ続けよう、そう思いながら何度休んだ事だろう。

周囲が少し開けて来ると山の斜面に耕作地が散見されるようになり、やがて平林の山上集落に到達した。 ボトルの水を口に含みつつ、自転車を降りて大休止。 息は切れ切れだが、案の定それにつれて何とかいつもの調子が出て来たようだ。 休んでいる時間の比率が多いのが多少気になるが。 時間は11時半をまわったが、丸山林道の分岐はもうこのすぐ上にある。 息の整ったところで再びスタート、村内は多少平坦な道になるかと思えば、民家の間を容赦なく急勾配が続いている。 ひと目があるのでへばっている所をあまり見られたくないな、そう思って、休む時にはカメラで写真を撮るふりをしたり、地図を広げて道を確かめる風を装ったり。 山の上の方はだいぶ紅葉して来ているが今ひとつコントラストが無く、見頃になるのはもう一週間位あとだろうか。