首都圏連続貨物線シリーズ  新金線に雨がふる  (2)
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 さて渡河部分の旧線はこのトラスのやや上流を走っていたはずだが、橋台跡でもあるかと思うと、これが実はあるはずが無いのである。新金線が開通したのは意外と古く、大正15年。一方、新中川が中川の放水路として開削されたのが昭和38年。そう、新金線が出来た頃は、ここに川は無かった。放水路の完成と同期して、線路の向きを川に対向させ、橋を渡したという事の様だ。

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4.奥戸街道と交差
縦向きの信号がシグナルの様だ

 鉄橋を行くわけにいかないので、一旦奥戸街道へと出て、川を渡る。この街道を新金線は小さなガーダーで乗り越しているが、その橋台もまた複線分の幅がある。これだけ徹底してやってあると、将来の旅客化も想定していたのではと勘繰りたくもなって来るが、実際のところはどうなのだろう。街道の北側、川の土手のすぐ下からは、旧線跡がまた姿を現わしている。こちら側は立派な車道だが、他の道と違い、これだけは斜めに延びているのでそれと判断出来る。

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5.堤防下から始まる旧線跡道路
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6.現在線と合流

 線路跡の道はやがて中学校の裏手を通過し、鉄道特有のカーブで、右手から延びて来た現在の新金線に寄り添う。この学校の用地だが、元々は駅の予定地として確保されたもの、という話もある様だ。しかしさすがに雨の中を 2時間近く歩き通しでは、体が冷えて仕方が無い。ズボンも靴もかなり濡れてきた。お昼も近いので、ここらでちょっと暖かいものでも... とは思うものの、こんな住宅地の中では期待と裏腹、食べ物屋などありはしない。

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7.全線に渡って複線分の用地がある

 線路脇の道路を、往来する車の水跳ねを気にしながら行くと、やっと彼方に京成の力強い高架橋が見えて来た。高砂橋の袂から堤防上の歩道へと入り、新金線と京成線の交差するポイントを見に行く。京成は全線で唯一の複々線区間(というのは少々ズルい様な気がするが)、高架上を次々と様々な電車が行き交う。一方の新金線に列車の姿は無く、線路は暗く沈んでいる。

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8.京成との交差部

 しばらく待ってはみたものの、結局列車の現れる気配は感じられない。あきらめてその場を離れようとしたその時、「パァン」と短いホーンを鳴らしてスカイライナーが橋を渡っていった。見上げるとさらにその上には、新金線の高い架線柱が京成の線路をよぎっているのだった。
 新金線に雨がふる・・・。そしてついにこの日、線路に一本の列車も見る事は無かった。



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