沼尻鉄道(3)
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ここから沼尻までの間が、沿線中もっとも往時の面影を残している部分だろう。特に落ち葉の落ちたこの季節、荒涼とした荒れ地の中を自転車で走っていると、頬をなでる風にふとディーゼル機関車の排気音を聞いた様な気もする。
それはあるいは彼方を走る観光バスのエグゾーストだったかも知れないが、昔々、そのバスの車中にいた少年の日の自分を想像してみたりもした。
ススキの中を行く |
小川を渡り |
林の中をまっすぐと |
木々がトンネル化してる |
ずっと左手に寄り添っていた小川を、小さなコンクリートの橋で渡る。その先は廃止後に木々が生い茂り、殆ど機関車のくぐり抜けられそうもないトンネル状になった道を行く。このあたりまで来るとかなりの勾配で、当時は機関車も苦労して登っていったのだろうと思う。
私の方のエンジンも、だいぶ息が荒くなって来た。そろそろ休もうかと思い出した頃、ポッカリと沼尻の街中へと飛び出し、沼尻駅舎を改装して使用している「沼尻観光開発」の事務所前に着いた。
旧沼尻駅舎 |
古い倉庫が連なる |
しばらく息を整えつつ、今は殆どが駐車場となっている旧構内を見渡す。平らな土地は結構狭く、ここに方向転換のためのデルタ線があったとは、とても想像がつかない。駅舎の裏手の方はすぐ坂道になっているが、そこを登って行くといくつか古びた倉庫が並んでいる。そのうちのある倉庫の脇には、ひしゃげたレールが 6本ほどうち捨てられていた。
そこから沼尻の温泉街の方まで足を伸ばしてみようかとも思ったが、予想外に坂がキツそうだったので途中から引き返す。鉄道の方もこの温泉まで路線が延ばせていれば、多少とも業績は向上していたのかも知れないな。
帰りは国道をそのままぶっ飛ばすが、旧道が別れているとやはりハンドルは自然とそちらに向いてしまう。途中、川沿いの旧道の方へ乗り入れたら、殆ど通る人がいないためか住民が飼っている犬を何十匹とつないでおり、彼らが一斉に吠え出したのには肝を冷やした。
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