沼尻鉄道(2)

Image

 スタートからつまずいたが、この一件はこれからのツーリングの行方を暗示しているのだろうか。そういえば朝のうち晴れていた空が、次第に湧き出した雲によって徐々に埋められつつある。まぁいいや、気を取り直して先へ進もう。
 川を越えるとその先には、いかにも鉄道らしいカーブと小さな築堤に支えられた小径が続いていた。やがて周囲の景色が開けてくると、再び田圃の向こうに磐梯山がそびえ立つ。その頂には、既にうっすらと雪が乗っている。

PhotoImage
Image
磐梯山の勇姿
Photo
林間のカーブ
Photo
倉庫の影に...
Photo
便所の跡が

 本道と合流してすっかり立派になってしまった道を行く。やがて下館まで来ると、これまた有名な会津下館駅の便所跡に出くわす。川桁側から行くと、白いコンクリの車庫の陰に隠れているが、確かにこれは駅で見かけるオーソドックスなタイプだ。
 だがその便器は特徴があり、(これまた有名な話しなのだが)藍染の美しいものが使用されている。しかし物が物だけに、どこかに保存して展示というわけには、おいそれとは行かないのだろう、きっと。

 下館から樋ノ口にかけては、水田の中をどこまでも続く一本道。空は既に雲に埋め尽くされ、フリースだけではさすがにちょっと肌寒くなって来た。
 しばらく進むと、どこかで「クゥークゥー」と何かの鳴き声が風に流されて聞こえて来る。田の中を見ると、何やら白い影が彼方でたくさんうごめいている。迷わずハンドルをそちらへ向け畦道へと降りて行くと、それは白鳥の群だった。そうか、猪苗代湖は白鳥の渡来地としてつとに有名であるが、そのおこぼれがここらにも群をなしているのだな。

Photo
水田の中をどこまでも
Photo
白鳥が舞っていた

 しばし白鳥の舞に見とれていたが、我に返って先を急ぐ。樋ノ口の集落を過ぎると猪苗代湖から上ってくる R115と合流し、酸川を渡る。沼尻の鉄橋跡らしきものは、ここには既に何もない。
 渡った所で川沿いの土手に出て、自転車に寄り掛かってしばらく休憩をとる。ここまで飲まず食わずで来たが、さすがに疲れた。リュックから携行食を取り出し、口に頬張る。ふと気が付くと空はいつの間にか雲が切れ、暖かい陽射しが川面に反射してキラキラと目の中で揺らめいている。

 振り返れば行く手には白布の山塊がどっかと腰を据えており、道はここから右手へと向きを変える。名家、酸川野、田茂沢、木地小屋と谷を詰めつつ、ダンプを避けて旧道を辿って行く。線路は新道と旧道の間のあたりを走っていた様だが、私の眼力では痕跡は見つけられず。
 地図によればその先で、軌道跡は国道から大きく南側へと離れて行ったはずだ。田圃の中を走り回って、やっとそれらしき砂利道を発見した。

PhotoImage
Image
おぉ、これぞ廃線跡

Button次へ


ButtonBack to Rail Page