July 2018

中延(都営) ~ 中延(東急)

夏場の暑い盛りは炎天下を長時問歩きたくない。 なので取材第3回目となる今回は、徒歩乗り換えの中でも比較的お手軽なコースを中心にチョイスした。 当初この企画で困ったのは小田急と東急、何しろJRを始め他社線との乗り換えが便利過ぎて、今ひとつ面白みに欠けるのだ。 今回はその辺を逆手に取って (笑)、割と短時問で乗り換えられる所に行ってみる事にした。 構造が乗換先と一体化していたり、デッキで繋がってたりする駅が多い中で、比較的クセのある場所を選び出して観察を行なってみた次第である。

都営浅草線 中延駅ホーム

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乗って来たのは都営地下鉄浅草線で20年ぶりの新型車両となった5500形(PCCカーではないョ)。正面デザインは、歌舞伎の隈取りを現代風にアレンジしたものとか

泉岳寺で都営浅草線の白い悪魔こと5300形を降りると、ホーム向かい側の乗り場に滑り込んで来た西馬込行きは隈取り顔の二ューフェイス、5500形だった。 乗り込むと車内もピカピカで、ほんのりと新車の匂いがしていい気分である。 これに乗車してまず向うのは、五反田の先の中延駅だ。 以前、西馬込の工場を見に行った帰りにここで東急大井町線に乗り換えた事があるが、それがちょっと印象に残っていて今回の選択となった。 浅草線も大井町線も同じ「中延」駅なので、条件にはピッタリと合致する。

都営浅草線 中延駅改札

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地下2階のホームから地下1階に上がり、改札口を出たところ。東急大井町線への乗り換えは、この東急中延駅方面改札口を使うと最短距離で行ける

泉岳寺からしばらく乗って到着した都営地下鉄の中延駅は、島式ホーム1面の至ってシンプルな作り。 階段を上がるとこれまたシンプルでこじんまりとした改札があって、天井の低い地下通路がそこからさらに延びている。 大井町線への連絡は五反田よりのA3出入口となるが、駅員の手作りっぽい大きな案内が壁に貼ってあるので、それに従って進めば迷う事は無いだろう。 階段をトントン(実際はノソノソ)と駆け上がればすぐ出口、浅草線はさすが元都営地下鉄1号線だけあり、開通年度が早い分すぐ地上に出られるのが有難い。

都営浅草線 中延駅A3出入口

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ウグイス色で三角形の建物が都営のA3出口、手前の敷地は小公園になっている。目の前の中延駅前通り商店街の奥に、東急大井町線の高架が見えている

第2京浜(国道1号)

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都営A3出口に隣接してすぐ横を走る第2京浜国道。まぁ、この地下を浅草線が通っているのだから、隣接してるのは当然と言えば当然なのだが…

最初にここを訪れた時、中延とはどんな所だろうと地上へ出た途端、下町の裏通り的商店街の光景が目に飛び込んで来て意外に思った。 だがそれは出口が路地側を向いているからで、すぐ左手を見れば片道3車線の太い第2京浜が流れている。 そして東急への乗り換えはと、右手を向けばすぐ先に低い高架線が見えるのだ。 距離的には至近だが、路上を数10メートル程歩かなくてはいけないので、雨天時の乗り換えはやや面倒に思われる。 いや、この距離ならきっと通勤者は傘なしで走り込むのかも知れないが、都営の出口をもうちょっとだけ奥へと延ばせば高架下まで持って行けるのに、惜しい所だ。

中延駅前通り商店街

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非常に短距離だが、乗り換え経路の間だけでも一通りの商店が揃っている中延駅前通り商店街。ここはほんの入口で、東急線の高架を潜った先にもまだまだ商店街は続いて行く

乗り換えの為に歩く路地は距離的に短いながらも、一通りの商店が揃っているのが面白い。 正面は和菓子屋、隣に中華、喫茶、理髪、向かいにパチンコ、東急の駅前に出て、たこ焼き、蕎麦、駅人口前には小規模ながら東急ストアまであるから、利用者にとって不自由は無いだろう。 駅は私が生まれた年(笑)に高架化されておりその構造自体はかなり古いが、それを活かす形でデザインされた内装がセンスを感じさせる。 で、乗り換えはあっけなく完了だが、それだけではつまらないのでもう少し周辺を散策してみよう。

東急大井町線 中延駅前

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ここが東急大井町線中延駅前広場、は無くてただの交差点だ。駅に寄り添うように建つ東急ストアの入った建物、その横から高架下に入ると改札口がある

東急大井町線 中延駅

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高架化されたのが昭和32年と、かなり古いが、近年リニューアルされたようだ。宮殿がそのまま博物館になりました、的な内装に仕上げられていてお洒落な風が吹いている

なるべく日陰を選びつつ1プロック程行くと、高架の線路に並ぶような形で2棟のビルが建っている。 事前に地図で見た際に駅施設か何かかと思うほど近接していたので気になって来てみたが、どうも東急系列の会社が扱うマンションの様だ。 敷地がやけに細長いので、地上線時代の駅用地の一部なのかも知れない。 その構造の面白いのは、マンションのエントランスロビーが高架橋の下に潜り込んでいる事だ。 東棟と西棟の人口がそれぞれ、線路下を通過する道路を挟んで相対する様に口を開けている。 これはグループ会社だからこそ出来る離れ業だろうが、駅へは直結していないため残念ながら雨に濡れずに通勤…とはならない。 だが階数によっては見事なトレインビューが得られる?いゃ残念ながら線路側の眺望は無いようだ

高架下のマンション入口

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高架橋脚の間にチラリと見える階段がエントランス。東館と西館があり、どちらも線路に沿っている。東急ファンの方、空き部屋があれば、いかが?

そこから住宅街の中を少々迷いつつ進むと、今回の企画でお馴染みアーケードの入口が見えて来る。 これは運命が私を引き奇せているのか… なんて事は勿論なくて、事前に地図で調べて来た結果である。 この近辺は距離の長い商店街が多く、かの有名な戸越銀座もそう遠くない場所にある。 入口には切文字で「NAKANOBU SKIP R. D.」と掲げられている。 スキップしながらお買物? なかなか素敵なネーミングだ。 まだ午前中早い時問なのでシャッターの開いていない店も多いが、そういった場所は店頭が提供され、そこには露店が賑やかに並んでいた。

なかのぶスキップロード

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ここから池上線荏原中延駅まで、約330メートル伸びる中延商店街「なかのぶスキップロード」。アーケードは平成29年に天蓋リニューアル工事が完了したばかりとの事

東急池上線 荏原中延駅

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戸越銀座~旗の台間の連続立体交差化工事により、平成元年に地下化された荏原中延駅。駅舎の建物には東急ストアや交番も併設されている

アーケードは4ブロック程、距離にして300m以上続くが、その先で空が開けてもまだ商店は続いている。 ふと右手に交番のある大きな建物があって、公共施設か何かかと思って一度通り過ぎたが、そこが池上線の「荏原中延」駅だった。 このあたり、線路は地下に潜ってしまったので、鉄道の気配が全然せずに油断していたのである。 しかし大井町線には「在原町」「中延」駅があり、池上線には「在原中延」があるという状態は誤乗が生じそうな気もするが、大丈夫なのか?  東急に併合される前は別々の会社だったので、駅名の競合は無理も無い話ではあるが。

というわけで、中延で乗り換える筈が結果的にお隣の駅、いや、お隣の路線まで散策しつつ歩いて来てしまったが、ここから電車に乗って次に控える小田急線のターゲットへと向う事にする。

荏原中延駅ホーム

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池上線は都会の中にあって3ドア18m車3両編成というローカル感あふれる路線だ。ワンマン運転を行っており、駅にはホーム柵とホームセンサーが設置されている

所要時間★★★★☆地図上約2分(今回約12分)
便利度★★★★☆走って行けば雨にも濡れず!?
面白度★★★☆☆色々な商店街があって楽しい