探訪記
(以下、サムネイル上にカーソルを置くと大きな画像が表示されます。写真説明に※マークのある物は、大きな写真上にカーソルを置くと路線想像図を表示します。)高尾橋周辺
というわけでお天気の良い冬の某日、自転車を走らせてやって来たのは京王電鉄の高尾山口駅前。 青梅からの自走で八王子よりこっち方面へ来るのは実に久し振りの事で、途中、サマーランド脇の坂を登るのが鬱陶しいなぁなんて思ってたら立派なトンネルが貫通してたりとか、高尾街道があちこちで拡幅されて自転車でも随分と走りやすくなったりとか、道々ちょっと感慨を新たにしたアプローチではありました。 駅前広場で一休みの後、まずはケーブルカーの清滝駅を表敬訪問しときましょう。 甲州街道から高尾橋を渡り、両側にお土産屋さんの並ぶ石畳の気持ちいい道をゆるゆると登って行きますが、何と日陰はもうツルツルのアイスバーンになってます。 さすがに東京でも山沿いのこのあたりまで来ると、都心とはかなりの温度差がありそうです。
時間は11時ちょっと前という事で、京王電車の駅前からショートカットして来る遊歩道を、これから高尾山へと登る人達が三々五々歩いて来ます。 昨今はミシュラン効果もあってか外人さんのグループも結構多いようで国際色豊かです。 そんなケーブル駅前広場を駅舎の脇にまわって行くと、発車待ちのこじんまりした黄色い箱がホームに納まっているのが見えました。 少し前に新製されたこの車両、屋根上のシングルアームパンタがその新しさを際立たせています。 駅を出て天に向かってまっすぐと伸びて行く軌条にも、この高尾山に鋼索鉄道を走らせようとした人達の気概を感じます。
しかし少々不思議なのはこのケーブルの創立時の社名「高尾索道」。 索道というからにはロープウェイの筈なのですが、どこかで方針変更でもあったのでしょうか。 それとも単に鋼索鉄道を略して索道としただけなのか?あるいはすぐお隣にある高尾山エコーリフトがこの索道本体なのかな、駅舎も一緒になってますし。 それともう一つ、高尾索道はこの清滝~高尾山の鋼索線の他に、川尻村~多摩村~西府村という、一見何の関連もなさそうな別の路線免許を取っているのも謎な所です。
ところで、ここ高尾山ではお土産屋さん等を冷やかしながらあたりをブラブラしてると、あちこちで「とろろそば」の看板が目にとまります。 調べたところでは参道の店が登山客の精をつけるために賄い始めた名物との事。 そう言えば子供の頃、開通したばかりの京王高尾線に乗って親に高尾山へ連れて来てもらった折にも、山の上の方で食べた記憶がうっすらとあります。 ちょっとお昼には早いけど、せっかくなので目ぼしい店に入って一杯いただいておきましょう。 私が食べた蕎麦処では山菜にとろろ汁と生卵が乗っていて、これからの走行燃料としては充分過ぎる程のご馳走でした。
高尾橋~浅川駅前
さてお腹もくちくなったので、そろそろ探索のスタートです。 武蔵中央電鉄の高尾橋停留場があったのは、この高尾山への参道入口となっている高尾橋の少し手前、一本下流に青葉橋という小さな人道橋がありますが、そことその先に立っている火の見櫓の間あたり。 甲州街道と案内川に挟まれた細い敷地が駅の跡で、ここに2線分の留置線がありました。 と言ってもこの電鉄は道路幅員の関係からか全線に渡ってホームも安全地帯も設けられておらず、車道上から直接乗降する形式だったそうです。
高尾橋停留場を発車した電車は、ここから旧浅川駅に向け狭い甲州街道の道路左端を単線で遠慮がちに山を下ります。 当時はもちろん無かった京王高尾線の鉄橋下を通過し、案内川、小仏川を続けて渡ります。 小仏川を渡る椚田橋の所は街道と並んだ鉄道の専用橋だったそうで、道路下の橋台には今もその名残りがあると資料には書いてありました。 ただ、それももう7年程前の記事なので、その後道路の改修が進んでしまったのかも知れません。 河原から何枚か橋の袂を撮ってみましたが、何となくそれらしい痕跡があるような、無いような…。 ここで小仏川は案内川と合流し、南浅川と名を変えます。 信号「西浅川」のT字路では左手から旧甲州街道が合流して来ますが、ここに小名路の交換停留場がありました。 バス停部分の道幅が広くなっているのは、列車交換用に道路の拡幅された跡が再利用されているのだとか。
その先で街道は中央本線の陸橋下を潜って右にカーブしますが、それと同時に、蛇行して来た南浅川の上を両界橋で渡ります。 川と道路と鉄道の3交差に当時は路面電車も加わっていたわけで、なかなか面白い光景が想像出来ますね。 橋から下を覗いてみると川床に古い橋脚の基礎部分が残っているのが確認出来ますが、ここは専用橋ではなかった筈なので、おそらく以前の道路のものかと思われます。 その先は左右に河原宿の街並みが始まり、一昔前の街道風情を感じつつ自転車を走らせる事が出来ます。 高尾街道の合流してくる高尾駅前は今もバスや自動車の往来が賑やかで、浅川駅前停留場のあった交差点から右手奥を覗けば、そこには高尾駅の瀟洒な駅舎が鎮座しています。