さて上階にも行ってみよう。
雰囲気のある丸いガラスドームの階段を登って行くと、別館への連絡通路がある。
別館は休憩室と売店があって主に団体客の昼食場所となっており、またそこから地上に降りると屋外に展示してある鉄道記念物の善光号や弁慶号等の貴重な蒸気機関車を拝む事が出来る。
本館の方は 2階が船と車関係の展示、そして 3階が飛行機やその他の交通となり、その一画にちゃんと自転車のコーナーも存在するのが嬉しい。
中央吹き抜けに面したバルコニーへ行けば、天井から吊るされた複葉機が美しい。
ここからは 1階ホール内の機関車達も見下ろせるが、ランプに照らし出されて黒く光る巨体が、良い雰囲気を醸し出していた。
3階の隅には小さな映画館、この年季の入ったステンドグラスの出入り口もなかなかの物だ。
貴重な記録映画なども見られるのだが、私は時間が合わなかった為か、残念ながらあまり入った経験がない。
そして 4階は図書室と食堂。
ここの図書室には鉄道会社の社史や鉄道誌のバックナンバーなども豊富に置いてあり、私も一度調べ物の為に利用させてもらった事がある。
夏休み自由研究等の相談も行なっているので、小さい頃にお世話になった方もいるのではないだろうか。
食事コーナーは言わずと知れた軽食堂“こだま”である。
メニューは限られるものの、実際に列車食堂にも入っている日本レストランエンタプライズの運営だ。
往年の東海道本線ビジネス特急「こだま」の食堂車に乗った気分で窓の外を眺めれば、眼下のビル群の中を中央線の電車が駆け抜けて行く。
この日はお別れ乗車(!?)という事でカツカレーを所望してみたが、お子様向けの味付けの中にも何となく懐かしさを感じさせてくれる、そんなカレーに頷きながらスプーンを口へ運んだ。
食後は屋上に出て冬の日差しを背中に感じながら、眼下を通り過ぎて行く電車の往来を見守る。
今日は留置線にたくさんの軌道機械が集まっていて、少々賑やかな事になっている。
その脇をオレンジ色の特別快速が、車輪の音を軋ませながら俊足で通過して行く。
閉館以降はここにこうして立つ事もままならないだろうから、この景色も今日でもう見納めかも知れない。
今は廃止となって一面雑草の生い茂っているあのホームの上を、かつては多くの人が行き交っていたに違いない。
そしてそのホームと共に歴史を積み重ね、たくさんの人を集めて来たこの博物館も、次の世代への先導役を大宮の鉄道博物館に委ねてまもなく閉館となる。
交通についての貴重な展示物を提供し、様々な疑問、そして少年の日の夢に答えてくれた素敵な空間。
私の「鉄」ごころを目覚めさせてくれたこの場所。
これまで長い間交通博物館を支えて来てくれた多くの関係者の方々に感謝の気持ちを抱きつつ、この建物を後にした。
交通博物館の歴史
- 大正10(1921)年:
- 鉄道博物館開館(東京駅高架下)
- 昭和11(1936)年:
- 万世橋へ移転
- 昭和18(1943)年:
- 万世橋駅廃止
- 昭和20(1945)年:
- 戦争激化により休館
- 昭和21(1946)年:
- 戦後、交通文化博物館として再開
- 昭和23(1948)年:
- 交通博物館と改称
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- 平成18(2006)年:
- 閉館予定
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