東京メトロ丸ノ内線の方南町支線はとても変だ。 まず第一に、ほんとうの名称は方南町支線ではない。 これは通称で、正式な呼び名は丸ノ内線分岐線というらしい。 そもそも、地下鉄なのに分岐線があるというのが奇妙である。 そして終点の方南町駅は他のどの路線にも接続していない。 そんな方南町支線を初めて訪問したのは今これを書いている5年程前、中野坂上駅を取材した折りの事だった。
島式ホーム2面3線で、本線の上下線に挟まれた2番線が方南町方面
中野坂上駅で数枚写真を撮り、そちらの取材は後回しにしてまずは支線を往復して来ようと考え、とりあえず方南町行きの電車に乗った。 車両は支線専用の3両編成で、本線を往来している同じ02系に比べると半分しか箱が無い。 これは終点の方南町駅ホームが有効長が短く、6両編成の停車する余裕がない為である。 (ちなみにこの取材の後ホーム延長工事が行なわれ、2019年から6両編成が入れるようになった)
終点の方南町駅1番線に到着。専用車両は誤乗防止に黒帯を巻いている
電車を降り改札口へ。過走対策として線路の予備長が長くとられている
中野坂上を発車すると本線から分かれ(地下なので良く見えなかったが)、中野新橋、中野富士見町と停車して、次はもう終点の方南町である。 駅は島式1面2線のホーム構造だが、降りてみると前方遥か遠くに改札口が見える。 丸ノ内線の車両は18mなので3両編成だと54m、ホームは110mだから前方に56mもあまる計算だが、過走対策として確保する長さ及び車止め分を考慮するとこれ位必要なのかも知れない。 もう1両位増やしても良さそうにも思えるが、編成の組成上、その組み合わせはきっと無理なのだろう。
2番線側。改札はホーム先端(写真の逆側)にあり、電車は画面奥手に停車
駅ナンバリングが「m」となっているが、後に「Mb」へ変更された
ホーム反対側の2番線はガランと見通しが良いが、この時間は1番線2番線を交互に使っているようで、列車案内板にはその旨の表示がされている。 ついでに駅名標の写真も撮って来たが、良く見ると駅ナンバリングが「m03」となっている。 確か本線は大文字の「M」だったなと調べてみたら、新高円寺が「M03」で見事に重なっている。 これは紛らわしいと思ったが、案の定、その後変更されて今は支線は「Mb」、そして方南町駅は「Mb03」となっているそうだ。
ホームと同一面にある西改札。ホーム逆側の階上には東改札もある
西改札に繋がる古風な1番出入口は、環七通り方南町交差点の角
小さな改札を抜けて階段を登り地上へ出ると、目の前は多くの車が行き交う交差点だった。 ここは環七通りと方南通りが交わる方南町交差点。 その角地の蕎麦屋とATMコーナーに挟まれて、古い門構えの1番出入口が口を開けていた。 おそらく、昭和37年開業当時のままの姿だろう。
東改札と直結する2番出入口は、商店街アーケードの奥に紛れている
アーケード裏手にある2番出入口。このうらぶれ感がたまらない
信号を渡り、中野坂上方面へ向かって方南通り(都道14号)を歩いて行く。 環七と比べると道幅の狭い方南通り、その両側は商店街となっており、歩道上だけのアーケードが連なっている。 都心にあって地方都市のような佇まいの商店街中ほど奥手に、方南町駅の看板が鈍く光っている。 こちらは、ホーム東側の改札口へ降りて行く階段のようだ。 そう言えば方南町はバリアフリーの設備が無く(その後2017年に設置)、ベビーカー等をホームに降ろすのを手伝ってくれるヒーローがいるとか、ニュースで見た覚えがある。
中野坂上方面へ少し歩いて振り返る。信号の向こう側が方南町駅になる
ブラブラと方南通りを進んで行くと、左手の街並みが途切れて景色が開け、中野車両基地が見えて来る。 方南町支線の存在理由、実はこの車両基地によるところが大きい。 元々地下鉄丸ノ内線は、新宿から西はこの車庫用地が確保されていた中野富士見町へまっすぐ西進する予定とされていた。 しかしその後、中央線の混雑緩和のため本線は荻窪方面へ延伸する事となり、中野坂上から車庫方面は分岐線となったのである。 その際、中野富士見町からさらに一駅延伸して終点を方南町としたのは鉄道空白地帯を埋める為と言われているが、路線をさらに延長して西永福駅あたりで井の頭線に接続させるという構想もあったようだ。
歩道橋上からの眺め。2000系登場前だから、ここは02系の独壇場だ
フェンスの隙間から撮影を試みるも、金網に邪魔されて惨敗
車両基地は道路上からだとフェンスに邪魔されてあまり見えないが、ちょうど良い位置に歩道橋があるので階段を登ってみると、留置線に多くの02系が休んでいる光景が眺められた。 写真で見るとやけにスッキリした風景だなと感じられるが、丸ノ内線は架線や架線柱が無いので空の見通しが良い為だ。 基地の周囲をグルっと回って北側に出ると、道路と神田川に挟まれた細い敷地の中を、地下へと沈んで行く連絡線が見える。 だが、写真を撮ろうとするとフェンスの金網が邪魔して、なかなかうまく撮れないのであった。
この駅は地下鉄に珍しく、地上に立派な駅舎が建っている
方渡り線の彼方に、中野車両基地へ続く連絡線の地上出口が見える
あとは、神田川に沿って1ブロックほど歩けば、もう次駅の中野富士見町だ。 ここは水色のボードに飾られた2階建ての建物で、地下鉄なのに地上に立派な駅舎があるのは珍しい。 この駅は中野車両基地へ入出庫する列車の扱いがあるので、その為の設備なども備えられているのかも知れない。 少々歩き疲れたし、まだこの後に中野坂上駅周辺の取材が待っているので、今日はここらで電車に乗ってしまおうかと思う。(終わり)
その後、方南町駅はホーム延伸工事が行なわれて6両編成列車の入線が可能となり、バリアフリー化の為、エレベーターとエスカレーターを備えた新しい出入口も開設された。 又これに伴い、6両編成での池袋~方南町駅間の直通運転も開始されている。