今回は中野坂上へやって来た。 一連のシリーズで地下鉄の駅を取り上げるのは初めてである。 御存知の通り、ここは丸ノ内線と、そこから分岐する方南町支線の乗り換え駅。 地下鉄の本線から分岐する支線というのは極めて珍しい。 本線の延長上に位置する北綾瀬駅の例はあるが、分岐となっているのは東京メトロでここ方南町支線だけであろう。 ここ中野坂上には地下鉄としてもう一本都営の大江戸線も来ているが、そちらは改札外での乗り換えとなる。
中央奥手に、方南町行き3両の短い編成が停車中
方南町支線を走る02系80番台。誤乗防止に黒帯を巻いている
もちろんこの支線の存在は以前から知ってはいたが、今に至るまで実際に乗った事は無かったのでこの機会に終点まで往復して来た。 商店街の中に出入り口の紛れている末端の方南町駅や、中野検車区最寄りの中野富士見町駅等もなかなか趣があったが、今回は乗り換え駅に焦点を絞っているのでレポートは又の機会に譲る。
開放した両ドアの上にも誤乗防止の行き先表示ステッカー
方南町支線、昔見た鉄道雑誌では銀座線から移ってきた古い車両(2000形)が張り出しステップを設け、たった2両で運用に就いていた姿の写真が印象に残っている。 時代変わって現在は、02系の3両(一部は本線から乗り入れる6両)編成が走っている。 ちなみに丸ノ内線はこの支線と本線も含め全駅にホームドアが設置され、全線でATOによるワンマン運転が行なわれている。
両側の本線に挟まれて、方南町支線の複線が中央に伸びる
駅の構造自体は単純である。 本線上下線の間に方南町支線が割って入り、2面3線のホーム構造となっている。 従って支線の電車がこの駅に到着すると両側のドアを開けて、どちら方面のホームへも降りられる様に乗り換え客の便宜を図っている。 駅には近年ホームドアが整備されたが、第三軌条方式の丸ノ内線はホーム下に高圧電気が来ているので、乗客の落下防止策としても有効であるだろう。
地下2階のホームから地下3階の本町方面改札へ降りる階段
乗り換え改札ではないので、全体にこじんまりしている
本町方面出口は、東京メトロのビル1階に設置されている
この駅の西側にある本町方面改札は、ホーム下の地下3階にあるのが面白い。 これは地中の浅い場所に設けられた京成の押上駅の構造に似ているが、大江戸線に近い側にもう一箇所ある改札は地下1階なので、こちらは別の理由なのかも知れない。 ダイヤ的には本線が日中はだいたい4分ヘッド、方南町支線は8分毎なので上下各2列車分の客を引き受けて運んで行く形になるだろうか。
中野坂上交差点の地下で丸ノ内線と大江戸線が交差している
路地にいても交差点の高いビルが目印になる
地下3階の改札を抜け、地上へと出てみる。 中野区の東端、甲州街道の坂を下ればそこはもう副都心西新宿であるからして、大通りの風景は限りなく都会である。 山手通りとの交差点にも大きなビルがニョキニョキと建ち、周囲の地上風景を圧している。 だが表通りから一歩路地へと入れば、そこには生活感漂う中野坂上の街が静かに広がっているのである。 その一角で大きな敷地を占めているのは宝仙寺、そしてその学校法人の運営する宝仙学園も、隣接して小学校と高校をこの地に構えている。
中野坂上という地名を象徴するように、坂道の多い街並み
宝仙寺は源義家により、平安後期の寛治年間に創建された
「中本二」は、中野本町二丁目町会の短縮形のようである
歩いているとコインパーキングの奥にかなり年季の入った木造の2階建てが見えた。 正面には「中本二会館」と看板が出ているが、町内の集会場か何かだろうか。 窓枠の意匠などなかなか凝った造りをしていて、都心にもこんな建物がまだ残っているのかと感慨を新たにした。
山手通りから新宿副都心方向を遠望する
駅南側、中野坂上セントラルビル裏手あたりの閑静な住宅地
交差点4コーナーのうち、3か所に駅入口がある
駅の北側は宝仙寺とそのグループの学園が多いが、南側は基本的に静かな住宅地だ。 遠くの空に目を向けると、建物の間から新宿副都心の高層ビル群の一部が見えた。 つかの間の散歩を終え、中野坂上の交差点から再び地下へ潜る。 こちら側の改札は都営大江戸線との乗り換え連絡通路も兼ねている為、本町方面改札よりは広々としている。 多くの人が行き交うコンコースから改札に入り、荻窪方面の電車に乗った。
左手が改札口、右手に進んで行くと大江戸線の乗り場がある