~ 金沢:北陸鉄道 ~

一時間強走って富山駅に到着。 が、本日はまだもう少し先へ行かねばならぬ。 今回乗り歩くのは東から富山、高岡、金沢、福井の各私鉄線と決めているが、ダイヤの都合により初日はまず金沢の一路線を選ぶ事になった為だ。 そのまま金沢行に乗り換えてさらに一時間余り走り、15時半頃にようやく金沢駅へと到着。 改札を出て私鉄駅の案内板を探すが、JR駅構内にそれらしき表示が見付けられない。 駅前に出て壮大な大屋根の下をあちこち歩き回るも、隣接している筈の駅は影も形もなかった。 「あ、そうだった」不意に思い出して駅前広場の階段を下り、地下街へと向う。 そう、ここ北陸鉄道浅野川線の北鉄金沢駅は、地方私鉄には珍しく近年地下駅化されているのだ。

金沢駅地下街の催事コーナーでは何やら地元のエコ祭りみたいなものが開催されており、多くの人達が楽しそうに集っている。 その人々の後ろの隅に、ひっそりと目立たない小さな改札が口を開けて待っており、丸い柱の間からは懐かしい湘南顔がチラっと見えた。 車内の電灯が消えているのでお昼寝中だろうか、地下ホームの方も無人で、近代的だがシンプルな1面2線。 地方では良く見られるシステムだが、時間まで客を構内に入れない仕組みで、電車を待つ人々は手前のこじんまりとした待合室にいる。 やがて電車が到着し、ようやく改札が始まった。 ホームへと入ると、やって来ていたのは隣りに留置されているのと同じ電車、もと京王井の頭線の3000系。 ここ浅野川線では8000系を名乗っている。 京王本線の車両は特殊な軌間ゆえ譲渡に際しては改造が必要だが、井の頭線の方は1067mmの狭軌なので嫁ぎ先も見付かりやすい事だろう。

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北鉄金沢駅

例によって2両編成のワンマンカー運転。 これは多くのローカル私鉄、いや、昨今は大手私鉄でさえも小支線などでは採用しているパターンだ。 効率的ではあるが、何か事があれば運転士が全て解決しなければならないから、無線で指示を仰げるにしろプレッシャーには違いない。 地下駅を発車すると電車はすぐにトンネルを出て掘割状の線路を走り、そのまま半地下の状態でJRの高架をカーブしながら潜り抜ける。 高架下から出ればすぐに最初の駅「七ツ屋」だが、停車して誰も乗降客がいないと見ると、ほとんどタッチ&ゴーですぐに又走り出す。 線路は意外としっかりしており、電車の性能も相まってあまり揺れを感じない。

この線はその名の通り浅野川に沿って走っており、しばらく進むと車窓右手には川の土手が寄り添って来る。 ちょうどこの旅に出る少し前、集中豪雨でこの川が氾濫を起こし被害が出たとニュースで報じていたが、電車からは堤防に遮られて川面の様子を観察する事は出来なかった。 途中三ツ屋駅で列車交換をし、終点間際ではこの線の撮影名所である大野川橋梁を渡るが、これがまた実にゆっくりとしたスピードだ。 カメラマンに配慮して最徐行?いや、古い橋梁の強度問題で(補強工事は終わったようだが)時速15kmの速度制限が続いているそうだ。

川を渡って一駅行けばすぐに終点の内灘。 1面1線の小さな駅だが、隣接して車両基地があるので構内は広い。 以前はこの先に臨時駅「粟ヶ崎海岸」があったそうだが、廃止されて廃線跡は住宅地へと転用されたとの事。 一緒に降りた乗客は皆バスに乗って行ってしまい、私だけが待っていた人達と共に再び同じ電車で折り返す。 ホームの下から良く見るとこの車両、スカートでなくスノープロウ仕様になっているのはいかにも雪国だ。 帰り道は、浴衣姿でこれから金沢市街へと繰り出す女の子たちを駅ごとに拾い、だいぶ傾いて来た午後の陽射しの中を走っていった。 このあたりは美人率が高いなぁ… なんて思いながら金沢の駅まで戻り、浅野川線の乗車は完了した。

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内灘駅