第一日目 2001/09

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青函トンネル(はつかり5号車中)

 れ行くトンネル灯を窓の外に眺めながら、今日までの旅の支度を思い出してみる。そもそもこの旅立ちを宣言したのは、10日前の事だった。一年以上も取りそこねていた会社のリフレッシュ休暇、仕事が一段落してやっと消化する時が来たのだ。行きたい所は決まっている。過去、学生の頃いく度となく通った北の大地。最後に訪れて帰って来たのが入社式の前日だったから、もうかれこれ 20年以上もご無沙汰となっている。

 晩、時刻表と首っ引きであらかたコースを決め、切符の手配にツーリストへ走った。ろくに調べずに行ったが、「ぐるり北海道フリー切符」というのが安くなると言うので、それをベースに指定を押さえてもらった。残念ながらこう直前では寝台列車は無理だったが、宿の方も目星を付けていたコテージにネットで予約を入れ、往復の中継地となる札幌はビジネスホテルを確保。こうして都合 5泊 6日の旅の行程が瞬く間に出来上がった。

 して大事な自転車だが、今回はサイクリングヤマト便を利用して楽を決め込む。先に現地の宿へと送っておいて、自分は最小限の荷物だけで行こうという算段なのだ。これで準備は万端、後は汽車旅を楽しみつつ現地までの気楽な車中となるはずだった。ところがどうも気分がスッキリとしないのは、出掛けに見た天気図の丸印 2つ。そう、太平洋上には台風が日本列島の様子をうかがっている。おまけに北海道上空には秋雨前線が留まっており、これが輪をかけて悪天候の兆しを伝えていた。


 ンネルの反響音が変化したなと思ったら、徐々に壁面に外光が射し込んで来、やがて列車は青函トンネルから緑の世界へと飛び出す。北海道らしい奥深い景色はゆっくりとした速度で後方へと流れて行くが、すぐ窓の下の茂みの飛び去って行くスピードを見れば、列車がかなりの速度で突っ走っていることは明らかだ。高架線とトンネルで山々を直線的に串刺しにしながら、やがて地上へと降りて来て木古内を通過。途端にスピードはがたっと落ち、所々で交換を行ないながら函館へと着いた。

 気は幸い晴れている。はつかりからホーム端の連絡通路を通ってスーパー北斗へと乗り換えるが、このキハ281系、かなり車体が汚れている。時間的におそらく 2往復目ぐらいだろうが、長距離ランナーゆえの宿命なのか。だが函館発車直後から、その俊足ぶりには度肝を抜かれる事になる。スラロームの様にボディを内側にグっと傾けながら、グングンと大沼公園への登り勾配を引っ張って行く加速度はさすがだ。しかし登るにつれて雲行きの方は怪しくなって来て、その先秀麗な駒ケ岳も見えず、内浦湾の海原も黒く沈んでいるばかりだった。

 20年ぶりの北海道、道内の交通網は大きく変貌を遂げている。青函連絡船は無くなり、トンネルが出来た。石勝線が開通し、不採算路線は切り捨て。急行は僅かに一本が残るのみ、夜行も減り、特急とスーパー特急のオンパレード。残った路線では基幹線区のテコ入れが進む一方、閑散線区は徹底的な切り詰め運用。今回、かつて旅した函館本線で、羊蹄山の雄大な風景を楽しみながら札幌へと向かいたかったのだが、時刻表を見て、この区間を直通する優等列車が一本もないのに唖然とした。それに比べてこの室蘭本線の高規格化はどうだ。列車が、全くと言っていいほどスピードを緩めずにどんどん中間駅を通過して行く様を見ても、線路の改善がかなりのレベルで実施されているのがわかる。


[ この日のメモ ]
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