翌早朝も夜明けの露天風呂を楽しみ、朝から豪華な朝食もいただいて宿をチェックアウトしたのは9時頃。 ケーブルで3駅下って「公園上」で途中下車。ここの駅近くにある箱根美術館のあたりの紅葉が見頃だと、お食事係りの仲居さんに教えてもらったのでちょっと寄ってみる。 確かに紅葉しているが、今年は全般的に色が薄いのは、夏から秋にかけての天候不順のせいだろうか。 美術館前には開館待ちの人たちの長い列が出来ている。 そこから歩いて強羅公園西口へ移動、西口というのは、斜面に展開された強羅公園の上手側入園口である。 ここはフリーパスを見せれば無料で入れるので有難い。 やはり紅葉は今ひとつだが、庭園の噴水などは豪華な作りで写真映えするスポットが数多くあった。
階段を下りながら園内を散策し、下手口から公園を出れば強羅駅までは徒歩5分ほど。 移動途中でネットを見ると、今日もロープウェイは止まっている。 今朝ほど、早雲山の駅からケーブルに乗る際に上空を搬器が動いているのを見かけたので安心していたが、運休でも運転再開に備えてロープは回し続けているのかも知れない。 今日はこの後あれに乗って芦ノ湖へ向かおうと計画を練っていたのだが、仕方ない、それではまたしてもバスで移動する事にしよう。 まだ朝のうちなので大丈夫だろうとバス停へ行くと、アチャー、昨日にも増して多くの観光客でごった返しているではないか。
こうなると、ケーブルとロープウェイの一本線しかない観光のメインルートは脆いもの。 ケーブルカーで早雲山まで登ってそこからバスという手もあるのだが、そちらのバスは西武系列なのでフリーパスは使えないのだ。 登山電車で次々運ばれて来る客達は、行き場を失って見る見るバス停に長い列を作って行く。 どうにか、行列に並んでから2台目のバスにギュウギュウ詰めながら乗れ、昨日と同じく途中で乗り換えて芦ノ湖畔の桃源台に着いた。
トイレを済ませた後は、お約束の海賊船で湖上遊覧としゃれ込む。 船から眺める芦ノ湖周辺の山々もまた、紅葉の色は今ひとつ。 しばらくデッキで写真を撮り合ったりして風に吹かれていたが、富士山も見えないし寒くなったので階段を降りて船内のベンチで休む。 一転、ポカポカと程よい暖房に気が緩み、思わず意識が飛びそうになったのは仕方ないだろう。 やがて湖上の鳥居が見えて来ると、遊覧船は箱根町港に着岸する。
船はこのあと元箱根へと向かうが我々はここで下船、箱根駅伝のゴール地点を覗いてみたが、そばにあるミュージアムには入らなかった。 港とバス停の間に「畔屋(ほとりや)」という商業施設があったので、そちらでお土産をしばし物色。 2階に喫茶コーナーを見つけて午前のティータイムとした。 ここで湖を眺めながらいただいたのは焼き団子とほうじ茶のセット。 団子は食べ方がちょっと凝っていて、自分で小さな七輪に乗せて炙り、蜜醤油、餡子、大根おろしなどをつけるのである。 普段の一人旅では大体が車中で菓子パンに缶コーヒー程度となってしまうが、たまにはこういう優雅なひと時を過ごすのもいいもんだ。 善哉を食べている相方も満足そうな顔である。
この後はバスで登山電車の小涌谷駅へと向かうので、数あるバス停のうちの一つで待っていると、バス会社の制服を着た職員の女性がそれぞれの客の行き先を確認して回っている。 遠くのバス停では外人客にも話しかけていたので、きっと各国語に対応出来るようになっているのだろう。 バスは定刻に発車したが途中の渋滞で遅れ、乗り換える予定の電車が行ってしまった為、そのまま乗り続けて駅伝コースを箱根湯本へと下って来た。 旧国道は至る所に幅員の狭い箇所があるのだが、ライバルの西武系バスもかなり手前で待っていてくれたりして、すれ違う際の運転手同士の挨拶も気持ちの良い光景だ。
箱根湯本では指定をとった新宿行きのロマンスカーまで少し時間があるので、ここで再びお土産選び。 箱根と言ってもここまで来ると、どちらかと言えば小田原名物の方が幅を利かせている。 皇室献上の塩辛を買い、テイクアウトの揚げ蒲鉾をかじり、求めた中で唯一海産物でないのは箱根ラスクとタルト位だろうか。 あ、定番の温泉饅頭も…。 ここらのチョイスは細君が実権(と財布)を握っている。
帰りのロマンスカーはEXEなので展望席は無い。 出来ればレトロなLSEあたりにもまた乗りたかったが、どうせ帰路は疲れて爆睡だろうと未経験の30000形にしたのである。 14時台の発車だがお腹が空いていなかった為お昼をまだ食べてないので、ホームでミニ天むす4個入りのセットを購入し、車内で仲良く分け合って食す事にした。 早めの時間帯という事もあり電車はガラガラ、食後は静かに午睡を楽しみ、新宿からは座れる西武線で拝島を経由し、何とか夕方ラッシュ前に自宅に帰り着いた旅の終わりであった。