市電でJR函館駅まで戻り、次は函館本線12:38発の長万部行で森駅を目指す。 本日から使っている「はこだて旅するパスポート」は当然JRも有効で、函館本線は森駅までフリーエリアに含まれる。 もちろん函館市電や、他に道南いさりび鉄道線も全線乗車可能だし、函館バスも利用出来る(一部適用外区間有)という便利切符なのだ。 函館駅構内のコンビニで念のため予備の食料を調達し、時間を待って改札へ。 有人改札でパスポートの切符を見せたら駅員さんは一瞬戸惑った顔を見せ、ハッと我に返った様な反応の後に日付印を押して通してくれた。 念のため自動改札対応ですか?と問うと「通れます」との事。 なんだ、かつての18きっぷと同じ扱いかと思っていたが、ちゃんと自動改札が使える券だったのか。
| 駅・電停名 | 時刻 | 列車・電車 |
|---|---|---|
| 函館 | 1238 | 823D 藤城支線経由 |
| 森 | 1338 | |
| 1453 | 2842D 砂原線経由 | |
| 函館 | 1632 | |
| 函館駅前 | 1648 | 函館市電 2系統 湯の川行 |
| 新川町 | 1652 |
ホームで待っていたのはキハ150形で、函館地区の一般気動車はこれに統一されているようだ。 定刻に発車すると、五稜郭、桔梗、大中山と小まめに停車して行く。 天気はどんよりとした曇りで、やがて車両の窓ガラスをポツポツと雨が濡らし始めた。 次の七飯(ななえ)駅で停車すると、この列車は新函館北斗に行かない旨のアナウンスがしきりに流れる。 それはこの先、函館本線下り線用の別線となっている藤城支線に入るためである。 今を遡る事48年前、私が初めての北海道訪問の際に、函館から大沼公園へ向かうべくすずらん55号に乗車した。 その列車が走ったのがこの藤城支線であり、満員のため客車最前部のデッキに立ち、向かう勾配に奮闘する牽引機DD51の雄姿を眺めていた思い出深い路線なのである。 現在ここを通る旅客列車は日に3本しかなく、そのうちの1本を目指して乗りに来たという訳なのだ。
函館本線 キハ150形(函館駅)
七飯を発車すると列車は高架線を登りつつ本線を大きく跨ぎ、山裾の方へと向かって行く。 ある程度高度を稼ぐと、車窓左手には函館方面の平野が段々と眼下に広がって来る。 やがていくつかのトンネルを抜けて大沼公園の小沼が見えて来ると、勾配も一段落。 このあたり撮影の名所なのか、沿線には撮り鉄らしき人達がチラッと見えた。 車内では、私とボックスに同席した若い旅鉄くんが大口開けて爆睡しており、時おりヒクついたり挙句は手に持っていたスマホを床に落として周囲に大きな音を響かせる等して、なかなかに微笑ましい。 長旅でお疲れなのだね?きっと。
函館本線 藤城支線車窓(七飯~大沼間)
大沼駅を発車、次の大沼公園ではさすがに外国人含む多数の観光客が下車し、その後は閑散とした車内に。 右手に広がる大沼を過ぎ、その先の区間では秀麗な駒ヶ岳(北海道駒ヶ岳)が望める筈だったが、生憎の雨模様で雲に隠れているのがとても悔しい。 勾配は下り基調となり、右へ左へと屈曲した線路を単行の気動車は淡々と下って行く。 やがて函館本線の別線である砂原線が右手から寄り添って来ると、森駅に到着となる。 駅は噴火湾に面しており、特急も停車する主要駅であるからして割合と大きな構内を持っている。 森駅は何度も通っているが、特に観光地があるわけでもなく、ここで下車するのは初めてだ。 改札を出ると駅前は小ぶりなロータリー、その周囲にはハイヤー会社のビルと個人商店が数件といった所か。
函館本線 森駅
函館本線 森駅(駅舎)
そのうちの一軒に入って、私は「いかめしください」と声を発した。 そう、駅前にある柴田商店では駅弁大会でもお馴染み「いかめし」を販売しているのだ。 しかし勇んで買いに入ったもののお返事は「売り切れです」との事で、仕方なく残っていた真空パックを一つ購入。 従って、森駅でいかめしのお昼を食すという当初の目論見は淡くも崩れてしまったわけだ。
帰りの函館方面は砂原線経由を考えており、発車時刻まではまだ1時間以上あるので、駅から少し歩いて線路沿いに海の見えるあたりまで行ってみる。 ここで、やって来る上りの特急北斗をカメラに収めたが、背景が真っ白な濃霧に覆われ、期待していた海岸風景とは程遠いワンショットとなってしまった。 いかめしの件もそうだが、なかなか思い描いていた通りの展開とは行かないようだ。 駅に戻り、既に14時を過ぎているので、万一の為に函館で購入して来たサーモンハラミお握りで軽めのお昼にした。
駅前の柴田商店
特急北斗 キハ261系(森~石倉駅間)
森駅14:48発の列車で帰る。 函館行の普通はこの前にもう一本あったのだが、砂原回りの列車を待ったというわけだ。 砂原支線は藤城支線と同じく、貨物列車用に勾配を緩和した函館本線の別線である。 従って急勾配は無いが迂回している分距離は長い。 発車して本線を右に分けると列車は海沿いに進むが、線路は少し内陸側を走っているので海岸風景は時々チラリ程度、絶景と言える様な車窓は期待出来ない。 右手には駒ヶ岳が聳えている筈だが、これも森林地帯に阻まれる区間が多く(それ以前に今日は雨で見えないが)、総体的に観光色の強い路線では無いだろう。 鹿部、渡島砂原など各駅に停車して行くが、どこも森林の中の秘境駅と言った感じで、乗降客もゼロか数名程度。 その割に構内には有効長のかなり長い交換設備があったりするが、これはこの線の主役たる貨物列車と離合を行なう為か。
函館本線 森駅(構内)
渡島砂原駅(砂原支線)
乗っている列車の速度はかなりゆっくりで、時刻表によると本線経由に比べて40分以上も余計にかかる。 途中、線路の動物を追い払うためなのか、周囲は森林地帯なのに何度も警笛が鳴らされる。 鹿部駅で下りのディーゼルカーと列車交換を済ますと、次は大沼まで15km弱の間、駅が無い。 4年程前まではこの区間に3駅あったのだが、いずれも利用者が極端に少なく廃止(1駅は信号場化)されてしまったそうだ。 ずっとスローペースでのんびり進んで来た列車だが、大沼駅が近くなると突然スピードアップしたのは制限解除なのだろうか。 やがて本線に合流して大沼駅到着、砂原回りの列車は大沼公園駅を経由しないので、観光客で混雑しないのが良い。 かと思っていたら、結構な数の人がホームで待っていて意外だった。 大沼公園駅の方で、こちらに歩けばこの列車があるという案内でもしているのかも知れない。 距離的には徒歩20分位の駅間ではある。
小沼(大沼駅付近)
大沼駅からは、来た時の藤城支線でなく今度は本線の方を函館へ向かう(藤城支線は下り線用だからそもそも函館方面の列車は走らない)。 これで今回、函館~森駅間のJR線は8の字で踏破し、全てのルートを完乗となる。 尤もこれらは、過去の幾多に渡る北海道旅で乗車済ではあるが。 大沼から坂を下り、途中で今年3月に信号場に戻った仁山を過ぎ、今度は新函館北斗駅を通る。 大勢乗り込んで来るかと思われたが、新幹線客は基本的に函館ライナーが拾って行ってしまうのでこちらの列車に対して乗降は少なく、実質は以前の渡島大野駅状態である。 大沼付近では雨が激しかったが、ここまで降りて来ると雲間からお日様が覗き始める。 新函館北斗を発車すれば、もうあと数駅でそろそろ終点である。 車内放送では、五稜郭公園へ行く方は五稜郭駅で降りないでと、しきりに繰り返し念を押している。 名前の割に五稜郭までは距離がある為だが、何かこの駅が悪者扱いされているようで少々可哀そうになって来た。
五稜郭駅付近
函館着16:32、入構が有人だったので出る時もそちらがよかろうと有人改札で切符を見せたら、女性駅員の方に怪訝な顔をされ、どちらからいらしたかと尋問された。 森駅からです、森からこちらはフリーエリアですよね?と答えると、少し考えてから通してくれた。 やはりこの切符は自動改札を通るのがスムーズで、有人改札を使う人は稀なのかも知れない。
駅前からまた市電に乗ってホテルへと戻る。 部屋へ入る前にホテル駐車場の奥から砂浜の上に出て、夕刻の大森浜を眺めつつ本日の旅程を反芻する。 天候のせいで大沼公園や駒ヶ岳の絶景も不発、おまけに森のいかめしも目的を達し得ずに少々不満の残る結果だ。 やはり妄想旅のようにお天気を自由に操るわけにはいかないんだ、と痛感した。 一日中雨模様であったが、夕方になるにつれ段々と晴れ間が出て来たので、明日の天気は期待が持てるかも。 今夜は森で買って来たいかめしを宿のレンジで温めて食べるとするか。 あと、荷物減らす為に着替えを旅程分より少なくしているので、宿のコインランドリーで洗濯をしなきゃだな。
大森浜(宇賀浦)
森のいかめし