さらに小一時間程もがくとペダルを漕ぐ力も出し尽くし、橋の袂の空地へ自転車を倒してへたり込む。 車道のすぐ脇で景色もクソもないが、ここでお昼にしてしまおう。 息を落ち着かせつつリュックから取り出したパックを開けてお握りを取り出した途端、「うゎー」と思わず声が出た。 一緒に入っていた黄色い大きな沢庵が二切れ、地面の上へ転がり落ちたのである。 これはショックだ。 どれだけショックかというと、いなり寿司に添えてある生姜を落とした位ショックだ(例えになってない)。 これでまたプチ凹みだがお握りを落としたんでなくてまだ幸い、落胆しつつも完食し、食後のデザートも済ませてようやく人心地。 見ると周囲を歩いていた蟻達が沢庵の周りに集まって右往左往している。 このデカイ獲物をどうやって巣へ運ぶか、きっと相談しているのだろう。
そこからまだ緩急織り交ざった坂をしばらく進み、少し下ったと思うとこれが今朝ほど渡った立場川の上流だった。 さらに樹林帯の中を突っ切ると周囲が開け、ペンション村や美術館が見え出して原村に到着。 するとある建物の前に短い軌道が敷いてあり、その上に運材車がチョコンと置かれているのが目に入った。 すぐ脇には「復活させよう八ヶ岳森林軌道」の看板が建っていて、そういえば前に新聞でこの活動の事を書いていたのを思い出した。 まだ道路の充分整備されていない昔は各地に運材用の森林鉄道が存在し、ここにもそれはあったのだ。