そこから少し下流の方へ移動すると、新線が一段高い位置のコンクリート橋で空中を渡っているのに出くわす。 しばらく待ってみると新宿方から185系はまかいじ号が、谷間にモーター音を響かせ一瞬のうちに通過して行った。 こうしてみると、旧橋は立場川の上流方へ線路をカーブさせ、しかも下り勾配で川面に近い位置に線路を下ろして渡っていたのが分かる。 一方で新線の方はほぼ真っすぐで勾配も少なくこの谷を通過してしまうのだから、それだけ架橋の技術が進歩したという事だろう。
電車が行ってしまえば谷間に再び静寂が訪れる。 風になびく田んぼの苗、森閑とした空気の中、遠くでかすかに虫の音が聞こえる。 再び旧橋の下まで戻って来ると、築堤の脇には1台のスクーターが停まっており、降りてしきりに橋の写真を撮っている人がいた。 どうも「鉄」ではない風体に思えたが、この橋は一般の人にもそれだけのインパクトを与える観光資源なのかも知れない。 その目論見があったのかどうか分からないが、町は廃止後の鉄橋を当時の国鉄から無償で譲り受けている。 それが橋の老朽化が進むにつれ、保全か撤去か、どちらに転んでも莫大な費用のかかるのが大きなお荷物になっているという事だ。
さて、せっかくだから川向こうの旧線跡も少し観察しに行ってみよう。