魚野川水平歩道(3)
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石積みの橋台

 道は基本的に右側がスパッと数100m切れ落ちた崖である。道幅は1m程あるが、当然ながらガードレールも何もなく、落ちれば命はない。踏み外せばおそらく「あぁぁぁぁぁぁー・・・」っと30秒ぐらいは声が続きそうな高度がある。なるべく山側を走ろうと心がけるが、景色に見とれると知らぬ間に崖の方へと吸い込まれそうで恐い。

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トンネル状の切り通し

 ところどころで魚野川へそそぎ込む小沢を渡るが、その部分には古い橋台が土台として使われている。こういう場所は右手が切れ落ちていない分、恐怖感が少なくホッとするが、反面、沢を渡るという危険度はある。実際いくつかの沢では橋が崩れ落ちており、速い流れに足元をすくわれそうになりながら自転車をリレーで渡すという場面も登場した。

 また一部では、トンネルを掘らずに道を切り通し状にした場所もあり、トンネルと違ってまた面白い味を出していた。ところでお約束の「物件」だが、先ほどの沢を渡る橋台とトンネル、それと道に埋まっていた枕木(らしきもの)ぐらいであった。レール等はきれいに撤去されたか、遥か崖下へ自然落下して行ったかのどちらかだろう。

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道ばたの枕木?

水平歩道〜切明

 さて快適に進んでいたのだが、恐れていた雨がやって来た。頭上に樹木がある分だけ多少は免れられるが、けっこう本格的に降り出している。少し急ぎながら、それでも慎重にカーブを曲がり込むと... やぁ、グッドタイミングでトンネルだ!... と思いきや、入口が鉄格子で塞がれている。

 覗いてみるとすぐ向こうに出口が見えるが入り込む隙間は無い。諦めて脇にある踏跡に従って、トンネル直上の小尾根を担ぎ上げ、担ぎ降りる。大汗をかいてトンネル出口のすぐ脇に降りて来ると、そこには湧き水が引いてあった。これが一部の人の間で噂の「甘い」水か...!?

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閉鎖されたトンネル

 一口飲んでみる。うまい! ...がそれ程甘くはない。雨のせいで薄まってしまったのだろうか。湧き水のホースをたどってみると、それはどうもトンネルの中央部付近から引き出されて来ているらしかった。

 この先パンクに見舞われたりしながら、水平歩道を走り通した。切明に近づけば近づく程さらに高度は増し、いっそう迫力のある展望が展開する。摩天楼の屋上付近に手摺のない遊歩道がある様なものだ。道はダムからずっと水平に来ており、一方魚野川の方はどんどん下って行っているのだから、高度差が出るのも無理はない。

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