峠手前から小幡方面を望む
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 名無村と書いて「ななむら」と読む。 その名を初めて知ったのは昔のニューサイ、確か山本進一氏の紀行文だ。 いつか訪れようと思っていてなかなかチャンスに恵まれなかったが、五月末、走り梅雨の合間を縫って行って来た。

2002/05


 アプローチは輪行で、八高線から上信電鉄へと乗り継ぐ。目的の地は東京方面からだとちょうど御荷鉾スーパー林道裏手の麓にあたる場所だ。

0番線:上信電鉄のりば上信電鉄:200系上州福島駅前

 ホームを下り駅舎へと踏切を渡る。線路の方を見ると、今降りた電車が陽炎の彼方にユラユラと揺れて走り去ってゆくところだ。ここ、上州福島から本日の旅ははじまる。数日間降り続いていた雨も止み、朝から気持ちいい五月の青空が広がっている。
 しかし身支度を整えて駅前から国道へ出た途端、いきなり逆方向へ走ってしまう。イカンイカン、道間違えた。地図を見直して、正しい県道へと軌道修正。まずはゆるく登って小幡を目指すが、走り出してみると陽射しは思いのほか強く、これから先かなりジリジリと肌を焼かれそうだ。
 すぐに城下町情緒あふれる小幡、道路わきに侍屋敷とかの表示も見える。車道と脇の歩道を清冽な流れが隔てており、その上の木々が日射を遮ってくれるのが嬉しい。
 しばらく道なりに走ると段々と周囲から山々が迫って来て、やがて道路と川がもつれ合って谷あいへと吸い込まれてゆく。このあたりの地名は「轟」、「Todoroki」でなく「Todoroku」とローマ字で併記してある。

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轟、厳島、枇杷ノ沢、戦場と、この先いわくありげな地名が続く

 県道と付かず離れず流れているのは雄川(おかわ)。道は快適な舗装道だが、見かけによらず結構登っているようで足に来る。ここ数ヶ月間走り込んでいなかったので、そのつけがまわって来ているのかも知れないが。
 でも体力的にはきつくても、気分は限りなく"爽"だ。それは久しぶりにまたがった自転車の感覚から来るものか、かねてから思い入れのある地へと足を踏み入れる期待感か、あるいは久しぶりに晴れた空の下、風を切って動き回れる開放感から来るものなのかも知れない。
 秋畑を過ぎてしばらく走ると、道はさらに勾配を増し、もうだめかと思い始める頃、やっと山裾に開けた那須の集落へと辿り着く。ここで川を渡って180度ターンした後、いよいよ峠へと向けて本格的な登りの始まりだ。

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那須の集落は山肌のかなり高い所まで広がっている
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