あっという間に梅雨入りとなった今年、だがこの季節、雨さえ降らなければこんなに走りやすい時期は他にない。 色々と爆弾を抱えている身(笑)であっても、天気予報に傘マークが無ければついついフラリと出かけたくなるものだ。 この頃は既に4時台から外が明るくなって来ているから早起きもさして苦ではない。 いや、それ以前に歳のせいかここんとこ朝早く目が覚めて、この時間帯も布団の中でゴロゴロしている日が多いのである。 本日は、ネットで見かけた秩父のポピー畑が見頃を向えているという情報から、これを見に行こうと思い立った。 起き出してサンドイッチで軽く朝食を済ませ、いつも詰めっぱなしのリュックを背負って自転車に股がる。
「あれっ?」走り出そうとして、フロントの輪ッパがパンクしているのに気がついた。 仕方ない、登坂があるのでパスハンで行こうと思っていたが、急遽ランドナーの方を持ち出すこととする。 茶畑を横切って八高線の駅へ、駅前で自転車を分解していると、広場を清掃していた年輩の二人に話しかけられた。 「しばらくぶりですね」「え、私ですか?えーっと年に何回か位ですけども、ここから乗るのは」 どうやらこの駅を最寄として輪行している別の人がいるようだ。 早朝の八高線を高麗川で乗り継ぎ、寄居からは秩父鉄道に乗り換えて親鼻駅で下車。 構内踏切を渡った所で切符を渡した駅員さんが引き揚げてしまうと、駅前には私一人がポツンと残された。 早起きしたおかげでまだ8時、かろうじて開いていたコンビニで買い出しを済ませてスタートする。
線路を渡って国道の交差点を横切れば、すぐに景色はいい感じの里山風景となる。 道々には既にポピーが植えられた畑が散見され、これから先に展開するであろう風景に期待が膨らむ。 ポピー畑へと導く看板が所々に立っているので、道に迷う心配はなさそうだ。 三沢の集落まで来ると左へ分岐する道に案内の矢印があり、そこで左折して小川を渡るといよいよ本格的な登坂が始まる。 まだそう車が多くないのは幸いだが、既に9時近くなって日もだいぶ高く登り暑くなって来た。 さっきから行く手の山の頂上のあたりに牧草地のような斜面が見えており、あそこまで登るのかと思うと若干気が滅入ってくる。 かなりの急坂が続くが、パスハン車のようにギアを目一杯軽くしてクルクル回せないのがつらい。 道路に木陰の落ちている場所を選んでは休憩しつつ、ジワジワと徐々に高度を稼いでゆく。 とは言え、標高差で登り口から500m程度だから、正丸峠を登っているぐらいでしかないのだが。
やがて森が切れると周囲の山々が見渡せるようになり、カーブを曲がると赤やピンクの花が咲く光景が目に飛び込んで来た。 ようやく着いたと思ったのだが、その花の絨毯の中を道路はまだクネクネと登り続けており、路肩には要所要所に監視員らしき人達が立っている。 どうやら駐車場以外の場所に車を駐められないよう、見張っているみたいだ。 その監視員の一人の近くまで登ったあたりで力尽き、「ちょっと休憩させて下さーい」と自転車を降りた。 「やぁ、お疲れさん」「(はぁはぁ)きついですねぇ、この坂」 「うん、頑張って登ってるなーって、ここから見てましたよ。この上が駐車場だから、もうひといき頑張れ!」 「(はぁはぁ)そうですか、じゃ、行ってきまーす」「いってらっしゃーい!」 会話の流れからの行きがかり上、休憩してる暇がなくなってしまった。
そこから2度ほどカーブをこなして登り詰め、ようやく駐車場の入口へと辿り着く。 そこにいたバイト風の女の子に「自転車はどこへ…?」と聞くと「中へどうぞー」との事だったので駐車場へ。 入り口から駐車場まではちょっとした急坂、そこをダーッと一気に下る。 だがその下にいた年配の整理員は、「自転車は上に停めて下さい。下って来たのにすいませんねー」だって。 仕方なく今下った坂をトボトボと押して再び登り返し、自転車を道路脇のフェンスにもやいで徒歩で畑の方へ。
ポピーの花畑は実に見事な眺めである。 広大な牧草地を利用して見渡す限り一面が赤やピンクの花の絨毯となっている。 秩父は羊山公園の芝桜が有名だが、ここはまだあまり広く知られていないようで、なかなかの穴場と言えるだろう。 特に花畑を下から見上げたショットはポピーが地平線までを埋め尽くしているように感じ、空の青さも相まって清々しい風景だ。 「天空を彩るポピー」というキャッチフレーズが付いているのも頷ける。 木陰に休憩用の雛壇が設けてあったので、そこへ腰掛けてしばらく景色を楽しんだ。