2006/05
東上鉄道の幻の仮駅「田面沢」と、7年前にボード上で話題になった入間川橋梁の謎に迫ります。

1. Prologue

Photo 〜 プロローグ 〜

関東を代表する大手私鉄、東武鉄道の中にあって独自の路線を行く東上線。 正式名称は「東上本線」、またその運用も「東上業務部」という他の線とは一線を画した組織で行なわれているのが特殊だが、元々は東上鉄道という東京と上州を結ぶ計画を持って生まれた別会社がルーツだとわかれば、それも頷けるものがある。 その東上鉄道の第一期開業区間が池袋〜田面沢(たのもざわ)駅とされているが、行く手を遮る入間川を目の前にして暫定開業したこの仮駅については不明な点も多く、あまり明確な文献が見られないのが実態だ。

そんなわけで、例によってネットで当時の地図を取り寄せて見たものの、所詮 1/25000地形図のまだ出ていない頃の話で、5万図しか無いからあまり正確な位置は分からずじまいだった。 とりあえずこれを、その後延伸されてからの地図と重ね合わせて見ると、駅はほぼ現在のルート上にあったらしい事だけはわかったのだが、そこに記載された位置からすると疑問な点も色々と浮かんでくる。 何はともあれまずはこの場所へ行ってみようという事で、5月のある日、入間川サイクリングロードを下って川越郊外へとやって来た。

このあたりは荒川方面へと抜けるツーリングや、川越市内散策のおり等で頻繁に訪れ、また入間川ポタリングの際の折り返し地点にもしているので、自分にとっては割合とお馴染みの場所である。 霞ヶ関駅近くには通い慣れたスーパーもあるので、本日もお昼の買出しはそこでして、電車の眺められる入間川の堤防上ででも食べようかと思う。

Button

Map

Map
国土地理院発行1/5万地形図
「川越」大正4年
Map
国土地理院発行1/5万地形図
「川越」大正13年
(クリックで拡大)

About

Photo東上鉄道について

東京と上州(上野国)渋川を結ぶ計画で 1911(明治44)年に設立された東上鉄道は、1914(大正3)年、池袋駅〜田面沢駅間を開業。 その後、1916(大正5)年に坂戸町まで路線を延ばすが、この時に仮駅だった田面沢は廃止されている。 1920(大正9)年に東武鉄道と合併し、東上鉄道の社名は消え去る。 1929(昭和4)年には全線を電化、複線化は池袋方から順次行なわれたが、川越市〜坂戸町間が複線となったのは 1965(昭和40)年の事だった。

Photo田面沢駅について(Wikipediaより引用:2006/05)

田面沢駅(たのもざわえき)は、かつて埼玉県入間郡田面沢村(現在の埼玉県川越市小ヶ谷近辺)に存在していた、東上鉄道(現在の東武鉄道東上本線)の鉄道駅である。 1914年5月1日の東上鉄道開通と同時に、同鉄道の終着駅として開業した。入間川の東岸に位置しており、入間川を渡る橋梁が完成するまでの暫定駅だったとする説が有力である。 1916年10月27日、橋梁が完成し坂戸町駅(現坂戸駅)まで路線が延長されると同時に廃止された。わずか2年半ほどの営業期間であった。 首都圏の通勤路線における廃止駅という比較的珍しい存在であるため、しばしば鉄道ファンの話題にもなるが、駅の位置を特定できる遺構などは残っていない。