駅へ向かう朝の坂道... 電車が到着した直後なのか何人かの生徒とすれ違うが、駅前の小さな広場へ自転車を漕いで行くと、そこにはすでに誰もいなかった。 駅は無人であるがこぎれいにされており、駅前にゴミのひとつも落ちていない。大きな樹が、小さな駅前広場の全体を覆っていて、そこだけ周囲の夏の陽射しを遮って涼しい風が吹きぬけて行く。 一人の男が木陰のベンチに横たわって、昼寝(朝寝?)をしているのを発見した。私もここで睡眠をむさぼってみたい衝動にかられたが、他に適当なベンチがなかったので、樹のそばに自転車を停めてしばらくたたずんでいた。 かつて行楽客でにぎわったであろうこの駅の前で、私ともう一人の男は、ただただ蝉時雨のシャワーを浴びているのだった。 |
昔、青梅線に「らくらくえん」という駅があった。いゃ、この駅自体はまだ存在するのであるが、名前が変更になっている。日向和田と二俣尾の間にある「石神前」という駅がそれである。