らくらくえん 1997/08
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 駅へ向かう朝の坂道... 電車が到着した直後なのか何人かの生徒とすれ違うが、駅前の小さな広場へ自転車を漕いで行くと、そこにはすでに誰もいなかった。
 駅は無人であるがこぎれいにされており、駅前にゴミのひとつも落ちていない。大きな樹が、小さな駅前広場の全体を覆っていて、そこだけ周囲の夏の陽射しを遮って涼しい風が吹きぬけて行く。
 一人の男が木陰のベンチに横たわって、昼寝(朝寝?)をしているのを発見した。私もここで睡眠をむさぼってみたい衝動にかられたが、他に適当なベンチがなかったので、樹のそばに自転車を停めてしばらくたたずんでいた。
 かつて行楽客でにぎわったであろうこの駅の前で、私ともう一人の男は、ただただ蝉時雨のシャワーを浴びているのだった。

 、青梅線に「らくらくえん」という駅があった。いゃ、この駅自体はまだ存在するのであるが、名前が変更になっている。日向和田と二俣尾の間にある「石神前」という駅がそれである。



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 くらく園 とは、そもそも何だろう? 実はこれ、青梅鉄道が行楽客誘致のために設置した、遊園地なのだそうだ。
 当時あちこちの私鉄が同じ様な事をやっていたので、まだ私鉄であった青梅鉄道もそれに倣ったのだろう。その詳細は明らかでないが、おそらく遊園地と言っても大規模な遊戯施設があったわけではなく、多摩川に隣接した公園と休憩所、食事処などがあった程度なのではないだろうか。

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 在らくらく園はどうなっているかというと、どうもブリヂストンの保養施設として引き継がれた様で、駅の近くに「奥多摩園」というのがある。駅の東側、青梅街道から下って行く道が正門になるが、関係者以外立ち入り禁止になっている。
 仕方がないので西側の人道橋や対岸から写真を撮って来たが、なかなかに広い芝生の広場等があり、林の中にも建物が点在している。(日向和田〜石神前間の青梅街道上からも眼下に見える。)
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 和26年頃の地図にはまだ「らくらくえん」駅として記載されているが、その後「いしがみまえ」に改称された。ちなみにこちらの由来は、駅前にある「石神社」から来ていると思われる。
 この日はこの後だいぶ暑くなったので、御岳渓谷まで涼みに行った。しかし、帰りの炎天下の吉野街道を想像するに(実際その通りであったのだが)、なかなか腰を上げられない自分なのであった。(~~;)

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