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三頭山口駅と「みとう号」(左側)

〜 3.駅とゴンドラ 〜

 救急車をやり過ごして、道路の反対側にある駅入り口の石段の下まで来た。...が、予想外に雪が深く階段がそのまま斜面状になっているので、身の安全を考えてそれ以上進むのは諦めた。仕方なく下の道路から見上げて観察するが、ホームを覆う大屋根左下の「みとう号」が、見えそで見えなそうで少々イライラさせられる。しかし、こんなすぐの場所にロープウェイの頂上側駅があるのはかつて見たことがない。ロープウェイと言えば普通は山を登るものだが、これはほとんど登っていないではないか。

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三頭橋

 駐車場に戻り、しばらくぼんやりと鉄塔を眺め回した後、再びサドルに跨って地面を蹴る。しかし周遊道路出口の三頭橋、その先 R411へ合流する手前の深山橋、トンネルを抜けたら又橋、ここらはほんとに橋だらけだな。でもそれらが単純なコンクリートの構造物でなく、それぞれに特徴のある造りをしている所が単調さを救ってくれる。自然景観保護の観点からはあまり歓迎されないのだろうが、そもそもそれ自体が人工物である奥多摩湖の風景には似合っていると思う。


 そうそう、忘れちゃいけない。帰り道、そのトンネルを抜ける手前でしっかりと川野の駅にも寄って来た。何の事はない、湖と反対側の商店脇から急な坂道が登っており、途中で 90度ターンしトンネルの上を巻いて湖側に出る道が駅跡に至るのだった。自転車を押しながらトボトボと登って行くとフェンスに囲まれた運動場があり、その奥に川野駅の廃虚が見える。ちょうど地元の方らしき人がいたのでお断りしてちょっと広場に入らせてもらい、そこのはじから何枚か写真を撮って来た。

 廃墟と化した川野駅はコンクリートの四角い建物で、遠くから見ると広場の照り返しを受け、デ・キリコの絵の様に白い壁を輝かせている。だが近寄ってゆくと実際その壁は、ひび割れ、しみが出て、かなり痛んでいるようだ。横へまわると階下のホームが覗き込め、そこに一基のゴンドラが残っているのがわかる。間近で見る「くもとり号」は、一昔前の丸くて人懐っこいなかなか好ましいスタイルの箱だ。ガラスも座席類も消失しているようだが、塗装し直してどこかへ飾れば立派な展示物にはなりそうだ。いゃ、でもこいつはやはりここが一番似合ってるのかな。誰も来ないガランとした駅の中で、湖からの風を受けながら日がな一日ブラブラと揺れてる、そんな余生も悪くはないのかも知れない。

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川野駅 くもとり号

 広場のはじっこに行くと目の前の風景が開け、眼下に広がる湖が見渡せた。吸い込まれそうな蒼い空、左右から複雑に伸びている奥多摩の尾根筋、左手にちょこんと小さく見えるからし色の橋、そしてそれらの下には青緑色の水を湛えた奥多摩湖の湖面...。ロープウェイが現在も生きていれば、車内からはこんな風景がずっと眺められたのだろうか。所要わずか数分の湖上旅、しかも行き先に何があるわけでもない、今の時代にはとうてい成り立たないが、そんな贅沢な時間も時には過ごしてみたいもんだ。

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車内からの景色?


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奥多摩湖ロープウェイ
小河内観光開発株式会社
奥多摩湖ロープウェイ が、もし何らかの形でまだ生きてたら。。。というサイト(を作ってみました。)

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