2016/11

レイアウトビュー

自分の作ったレイアウトの中を自由に歩き回りたいという夢は、誰しも一度は抱いた事があるだろう。 苦労して作り込んだ駅、街、そして山河の自然の中へ、ミニチュアサイズの人間となって入り込んでみたいという思いだ。 私自身はそんな欲望を写真とストーリーに転化し、妄想世界の中で遊ぶという手法で満足させて来た。 もちろん Nゲージ用の車載カメラでムービーを撮るというやり方もあるが、私が見たいのはむしろ線路でなく建物や街並みの方なのだ。

そんな折にふと浮かんだのは、昨今流行りの 360度写真でそれが実現出来るのではないかという考え。 要はレイアウトの中のストリートビュー、名付けて「レイアウトビュー」である。 思いついたら即行動、とりあえず手元の機材で撮影を行ない動作確認するための試作版をでっち上げたので、構築方法は後述するとして、何はともあれサンプルをご覧いただきたい。 題材は終端駅モジュール「水神森駅」の構内だが、何しろお金をかけずに撮影してみたというレベルなので、色々と作りの粗いのはご容赦の程。 追々もう少し機材にでも投資をして、ちゃんとした物に仕上げたいとは思っている。

制作したレイアウトビューは基本的にブラウザで閲覧可能となっているが、スマホ等でご覧の方は「全画面で見る」を押し、右上の設定アイコン(下図1)を開き、Gyroscope On(同2)を押してメニューを閉じる(同3)と、ジャイロに連動する動作となってなかなか面白い効果が現れる。 メニューには VRモードもあるので、安いゴーグルでも買ってみようかという気にもなって来る。 そうすれば、実際にレイアウトの中に立っている様な没入感が得られのではないか… と、少々期待もしてしまうのだ。

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Roundme画面設定
スマホで閲覧の様子

制作方法

以下、私が今回とった制作方法を書き出しておくので、興味のある方はお読みいただきたい。 皆さんが作られた素晴らしいレイアウトも、ぜひレイアウトビューで見させてもらいたいという希望もあるので、その一助にでもなればとの思いからである。

  1. 使用カメラ

    撮影に使用したカメラ、実はバックナンバーの「大人の科学 magazine」に付いていた組立式の付録「USB特撮カメラ」である。 何となく興味があって購入したものの、そのまましばらく眠らせていた一品だ。 ポイントは、外形サイズが小さい事と接写の出来る事。 お手軽に撮るならこれがちょうど良い。

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    USB特撮カメラ(左:組立前/右:組立後)

    最近は一発で撮れる全周専用のカメラも存在するが、残念ながら本体が大き過ぎてレイアウトの中に入らないので使えない。 他には、撮像素子に魚眼レンズを被せたような剥き出しの極小パーツなんかもあるが、こういうのはうまくすれば使えるかも知れないから、次回調査してみよう。

  2. 撮影方法

    今回の方法としては、付録のカメラを上空から狙った地点に降ろす形で撮影した。 嵩張るのでカメラの取っ手部分も外してしまい、USBケーブルでぶら下げただけだ。 これを吊るした状態で地面に置き、タブレットPCに USB接続してソフトウェア側でシャッターを切る。

    ソフトは標準のカメラ機能でも良いが、今回私が使ったのは CCI-Pro-MRというフリーウェア。 これで一周 30枚程撮影したので、平均角度にすると 12度ずつ視角を振ったという事になる。 撮影場所は我が家のベランダ、やはり自然光に勝るものは無いが、背景を水色の画用紙で済ませてしまっているので、少々玩具っぽいのはご愛嬌だ。

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    撮影状況
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    CCI-Pro-MR画面
  3. 画像合成

    例によってパノラマ画像合成は Autostichである。生成される画像の綺麗さにおいて、私はこれを上回るフリーなツールを見たことがない。 処理開始前に出力サイズ等のセッティングを行ない、「File」メニューから「Open」でダイアログを開いて複数ファイルを選べばスタートするが、CCI-Proの出力した画像ファイルは "52分03秒_624.JPG" の様に日本語が入っていたので、事前にこれを英語にしておく必要があった。 ファイル数が多いのでコマンドプロンプトで以下の様に打ち、一気に改名処理をした。 >ren ??分??秒*.jpg ??m??s*.jpg 合成処理が開始されれば後は数分間、じっと待つだけだ。 生成ファイルはデフォルト設定では元画像と同じフォルダ内で、常に "pano.jpg" に上書きされるので注意が必要だ。 下図は出来上がったパノラマ画像であるが、360度+若干余裕を持たせておき、繋がりの良い位置で左右端をカットした。

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    合成画像
  4. 閲覧方法

    閲覧方法については色々と選択肢があるので迷った。自作スクリプトでの公開も考えたが、ここは専用サイトのお世話になった方が早道かと思いリサーチを行なう。 まず候補にあがったのは本家ストリートビューの GoogleMapで、最近は個人の 360度写真も投稿が出来るとの事だが、掲載されるかどうかは審査を経ることになるので、私の様な用途だとおそらく通らないであろう。 あとは Facebookでも可能らしいが最近使っていないので却下、探しているうちに辿り着いたのが「Roundme」である。

    ここは "create 360 VR panoramic pictures virtual tour online" とうたっている様に 360度パノラマの専用サイトで、ブラウザの他に Androidや iOS用のアプリもあるので、色々な閲覧方法の選べるのが気に入った。 新規にアカウントを作るか、Facebook、Twitter等でもログイン出来る。 あとは「CREATE SPACE」を押して画像をアップロードするだけで出来上がる。

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    Roundmeサイト
  5. 今後の課題

    とりあえず試作版が出来たが、今後の課題としては画質の向上、出来れば撮影機材の購入も視野に入れたいが、まずは撮影方法の改善でもう少しクリアな画像にならないか検討したい。 と共に撮影ポイントも増やしたいので、アームか何かでカメラをレイアウト内任意の位置で固定出来るような構造も考えたいと思っている。 それと、Roundmeでは画面内にアンカーポイントを入れられるとの事なので、ストリートビューの様に地点間の移動も可能になるかも知れない。

ということで、今後も色々と試行して行くつもりなので、随時進展が見られ次第ご報告する事としたい。 続報を待て!笑 → 正式版が完成しました。(次ページへ)