オープンしてしばらく経ちますが、大宮の鉄道博物館が人気です。
話題のシミュレータ前には平日でも利用者の長い列が出来ているとか。
私も早く行ってみたいのです。
でもなかなか腰が重くてあがらないのは、やはりまだ自分の中で万世橋の交通博物館を引きずっているせいなのかも知れません。
その交通博物館ですが、閉館前に一度知り合いの学芸員の方に案内して頂き、舞台裏を見学させてもらった事があります。
館内の高架線路下通路を潜った先、一番神田川寄りに細長い展示室が続いていますが、未公開のエリアはその裏手に存在していました。
施錠されたドアを開けてもらい通路へと一歩入ったとたん、昭和の香りがプンと鼻をつきます。
その空間に置かれた何もかもが、時が止まったかのように時代を経て静かに存在していたのです。
ここは一部、夏休みの公開教室などの際に使われた事もあったそうですが、それ以外は工作室や収蔵品の倉庫等になっています。
以前は職人さんが常駐作業していた時期もありますが、いかんせん高架下に嵌め込んだ箱のような形になっていて居住性が悪く、常に湿気によるカビとの戦いだったようです。
従って倉庫にしても、おそらく通常の未公開収蔵物はもっと別な環境の良い場所に保管されていたのかも知れません。
そう思って眺めてみると、修理の為に一時的に持ち込まれた物品を除けばどれも長年の埃が積もって、これらがもう一度人目に触れる事はなさそうだなと思えました。
そんなわけで殆ど無人のこの区画は、旧万世橋駅の遺構と同様にポッカリと時代から取り残された空間となり、展示回廊の裏手に人知れず存在していました。
そして、そこは私にとってノスタルジーに溢れた、ちょっとした夢のような空間だったことも事実です。
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裏通路脇の部屋。窓も引戸も、冷たいアルミでなく木製なのが心地よい。
高架桁の構造が通路を圧迫。配管や照明の設置には苦労しているようだ。
機械にはシートが被せられ、最近使われた形跡がない。窓の向こうは神田川。
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