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- ユーカリが丘、勝田台 -

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ビルの谷間のユーカリが丘駅

時間はお昼に近づき、お腹も大分減って来た。 八千代台駅へ戻りやって来た電車に乗ると、住宅街を左右に見ながら一頻り走って次の京成大和田駅。 ここは「大和田」行きの電車があるので成田方に折り返しの線路がある。 その先で電車は新川を渡り、さて次は勝田台へ寄るつもりだが少し飛ばして先に行きたい所がある。 京成線内ではちょっとユニークな名前のユーカリが丘である。 駅ビル1階をパチンコ店が占めるという志津駅を発車すると、電車はすぐにユーカリが丘のホームへ静かに滑り込んだ。 ここは後から出来たので他区間に比べて駅間が短いようだ。 もちろん初めて降りるこの駅、島式ホームが2面あるが下りは待避線のレールが敷かれておらず、上り側だけで追い抜きを行なっている様子である。 この駅でのお目当てはもちろん山万の運営するユーカリが丘線、ちょっと愛嬌のあるコアラ号の走る新交通システムだ。 その方式は日本車両が中心となって開発した「VONA」がベースとなっており、これは谷津遊園で試験運用されていた事でも知られている。

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ユーカリが丘線改札口
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ユーカリが丘線ホーム
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こあら号入線
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車内の様子
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右手の車窓
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左手の車窓

京成の橋上駅舎改札を出るとそのまま2階の通路でユーカリが丘線の駅とつながっており、雨でも濡れずに乗り換えが行える。 しかし多くの降車客のうちこちらへ向かったのはほんの数名、朝夕の通勤時間帯はもっと頑張ってるのだろうけど少々寂しい状況ではある。 SUICAが使えないので自販機で一律200円の切符を買い、自動改札を通って階上のホームへと向かう。 乗り場はビル1フロアの壁を取っ払ってその外側にそのまま車両が横付けするような感じで、ホームはかなり奥行きがあった。 軌道は真ん中にガイドレールがあり、その両側にタイヤの乗るコンクリートの路盤が形成されている構造のようだ。 やがて3両編成の可愛い列車がやって来て目の前に停車、開業30周年を迎えリニューアルで車体全面に「こあらファミリー」があしらわれている。

ワンマンの運転士が席を反対側へ移動してしばらくすると折り返しの発車となる。 車内はさすがに小ぶりで天井も低いが、空いているせいかあまり圧迫感は無い。 列車はテニスラケットのような形の路線を一方通行で反時計回りに進む。 駅前は高層住宅の並ぶ未来的な車窓だが、ラケットの持ち手から左右に分岐する公園駅あたりに来ると、行く手には俄然緑が多くなる。 環状線路に入ると、その外側は住宅地として開発されているが、輪の内側に田畑や谷戸地的な景観が残っていて左右の眺めにギャップがある。 実に不思議な車窓が展開するわけだが、これは用地買収のからみか、あるいは敢えて緑を残した開発をしているのだろうか。 途中の中学校駅で一旦下車したが、特に寄る所もなく駅裏のスーパーで時間を潰し、約20分後の後続で残りの区間を乗り潰す。 と言っても日中はその間隔で1編成が循環しているのであるから、乗ったのはルートを1周して来た先程と同じ編成だ。

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中学校駅で途中下車し、列車を見送る

途中で突然狭いトンネルに入ったりして遊園地のライドかと思う一瞬もありつつ、始発駅かつ終着駅であるユーカリが丘へと戻って来た。 せっかくなので少し街歩きでもしようかと、コアラ号を降りて駅前のペデストリアンデッキを渡ってみる。 そこから見上げるユーカリが丘駅の上にはやはり山万の経営するウィシュトンホテルが聳え立ち、駅付近にはイオンや系列のシネコン等もあってニュータウン然として賑わっている。 駅前の広場では何やらイベントを開催中、聴衆が出演者を囲んでしきりに拍手をしている。 オーガニック、ファーストフードショップ、イタリアンキッチン…、お昼をだいぶ過ぎたがここでは好みの食事処が見つからず、勝田台へ期待を込めて戻る事にした。

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中学校駅ホーム
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ユーカリが丘駅前
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ユーカリが丘駅前

勝田台は以前はどちらかと言うと無名な駅の印象があったが、東葉高速線が開通してその終点かつ乗換駅となってからは、かなり名が知られるようになったと言えるだろう。 何しろ中央線沿線で頻繁に「東葉勝田台」行きの電車を見かけるのだから、人々の脳裏には自然と刷り込まれるわけだ。 大屋根に覆われた勝田台駅ホームに停車した電車を降り、改札口へと階段を下る。 駅構造は相対式ホーム2面2線で単純だが、地上駅で地下に改札があるのが京成線の中ではちょっと異色だ。 以前は橋上駅舎だったそうだが、東葉線との乗り換えをスムーズにする意図もあって地下に持って来たのだろう。

京成の自動改札を出ると左手にはもう東葉の改札口が見えているが、とりあえず少し地下通路を歩いてその先から一旦地上へと出てみた。 駅北口の街並みは特に大きな商業施設等は見当たらず、2路線の乗り入れる駅前としては少し寂しい感じがする。 こりゃ食事をあてにするのはしくじったかと思ったが、どちらかと言うと南側が繁華なのかも知れないと考え直し再び地下道に潜る。 そして南口の階段を登って行くと、目の前のロータリーにリブレ京成があった。 CIで名前がこうなったがこれは昔で言うところの「京成ストア」であり、幼い頃に新京成沿線で育った身としては大変に懐かしい。 上に団地の高層階を背負っているのも、どこかで見かけた構造だ。

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勝田台駅改札
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東葉勝田台駅
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勝田台駅北口

外観はリニューアルされているのだろうが、やはり建物の中に入ってみるとその作りは昔のスーパーの匂いを感じさせずにはおかない。 レジの並ぶ脇からエスカレータで2階に上ると静かな売場の片隅に「レストラン」の看板がある。 店頭のメニューを見ていると「いらっしゃいませー」と女店員の声がかかり、迷わずここでランチにする事にした。 駅前ロータリーを眺められる窓際に席をとり、てきぱきと一人でフロアを切り盛りする感じの良い年配のお姉さんに「牡蠣フライ定食」を注文。 店内は数組が静かに食事をしているだけで、どことなくユッタリとした空気が漂っていて落ち着ける。 BGMも曲名は忘れてしまったが、懐かしい感じのものが流れていた。

オーダー待ちの間に駅を見下ろしていて思い出した、勝田台は上り方面に限り地上からホームへと直結する入口もあり、階段無しで電車に乗れる便利な構造になっている。 ならば他でもと思うが、小規模の駅では改札口が分散するから管理的に無理なのだろう。 席からはホームの壁と屋根に阻まれて電車が見えないのが残念なものの、駅前には出入りするバスが頻繁にやって来て、乗り降りする人達を観察していると見飽きる事がない。 その流れから外れ、さきほどから一人、若い女性がバス停前やタクシー乗場を覗いたりしている。 どうも迷っている風だが、時計を確認して誰かを待っている様子でもある。 「お待ちどう様でした」「どうもー」ウェイトレスと短いやりとりをして目を外へ戻すと、もうそこから彼女の姿は消えていた。

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リブレ京成から眺める勝田台駅南口

運ばれて来た料理の上に檸檬を搾りながら、こう考える。 昼食と言ってももう3時に近いから、今日の探索はこれでお終い。 津田沼からユーカリが丘まで乗って、成田までのちょうど半分位だろうか。 成田へ、そして成田空港までもう一回位で到達するかは甚だ心もとないが、そのうちまた暇を見つけて出掛けて来るとしよう……。 予想外に柔らかで美味しい牡蠣フライに舌鼓を打ち、食後は階下のパン屋さんでしっかりお土産も買い込んだ。 帰りは未乗だった東葉高速線に浮気してショートカットで家路に就く事にしよう。 もちろん、そういう下心があって勝田台を後回しにしていたのは言うまでもない。

- おわり -

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