踏切跡から加賀一の宮駅構内が見える。右手に樹木の多い公園があるので、そこからホーム側の様子を観察してみよう。

構内も枯草に覆われているがレールはまだ残っている。末期は無人駅で1面1線だったようだが、かつては金名線との接続駅として手前側にもホームがあった。

ここから奥手は金名線の区間となるが、廃線跡の大部分はサイクリング道路として整備され、「手取キャニオンロード」となっている。

踏切を渡り鶴来街道に出て、加賀一の宮駅正面にまわる。金名鉄道神社前駅として開業したこの駅、本屋は小さいながらも重厚な造りでその意気込みを感じる。

駅入口の庇の下には「一の宮」のバス停標識とベンチがあり、待合所として機能しているようだ。玄関が全面板張りで閉鎖されており、駅舎内部の様子を窺い知れないのが残念だ。

駅舎の脇からホームの方を覗いてみる。改札から短い階段でホームに降りる構造だったようだ。上屋は撤去され、それを支えていたレール製の柱が数本立っている。

上を向くと意匠を凝らした鬼瓦が見下ろしていた。この駅は全国の白山神社の総本山である白山比咩（しらやまひめ）神社の最寄駅として、年末年始は多くの参拝客で賑わっていたという。

この駅舎もいずれ取り壊されてしまう時が来るのだろうか。写真を撮りながらのんびり廃線散歩して来たが、帰りの電車まで残り30分を切ったので、名残惜しいがもう戻らねばならない。

ほとんど小走りに近い状態で急ぎに急ぎ、汗だくになって鶴来駅に戻って来た。ベンチに座って一息つくと、ガラスケースの奥に「加賀一の宮」のサボが置かれているのに気付いた。

3～4人の客が待つ待合室にはまだストーブが備え付けられていた。いずれ輪行ででも、白山下を目指して走りに来ようか。改札を待ちながらボンヤリそんな事を考えていた。