~ 富山, 高岡 ~

富山ライトレール

通過特急の遅延に影響されて数分遅くなったが、何とか次の電車に間に合う時刻に富山駅へと戻って来た。 今度は駅の北口にまわり、もう一つの会社線に乗る。 そう、かつての富山港線が発展的にLRT化された富山ライトレールだ。 JR富山駅北口の改札を出ると、富山ライトレールの富山駅北駅はすぐ目の前に。 そこまで屋根が繋がっていないので雨天時も濡れずに乗換えというわけにはいかないが、北陸新幹線乗り入れに伴う富山駅の高架化後はどうなるのだろうか。 そういえば市電との相互乗り入れも計画されているようなので、このまま高架下をくぐって南口へ抜けるのか? ホームは2面2線でさすがに新しく、路面には芝生も生えていてちょっと良い感じ。 観光客、地元民も含め、多くの人たちが嬉々として電車を待っている様は何だか晴れがましいものがある。

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富山ライトレール 富山駅北駅

すぐに真新しいスマートな流線型の電車「ポートラム」がやって来た。 大きなプラグドアを開け、行列していた乗客達を吸い込む。 たちまち車内は満席になって立ち客も多く、ちょっとしたラッシュアワー状態である。 夏休み中の日曜日という事もあろうが、社会的に大きな話題となった軽快電車はすこぶる乗車率が良さそうだ。 チャイムが鳴ってドアが閉まり、静かに発車する。 低床車だけあって、吊革につかまって立っていると窓外の景色は歩行者の目線に近いものがある。 駅前通りを右折しインテック本社前電停に停車後、しばらく走るとやおら左にカーブして道路を外れ奥田中学校前。 ここからが旧富山港線の線路敷を利用した専用軌道になる。

直線区間が続くのでスピードもあがり、なかなか快速な走りで小気味良い。 各駅は統一されたデザインが都会的で小洒落ており、バリアフリーも考慮されている。 そのまま満員の状態で終点まで行くのかと思ったが、途中の蓮町で大多数が降りてしまい車内は見通しが良くなった。 どうやら隣接の公園で何か大きな催しが行なわれているらしい。 競輪場前でもさらに多数降車した後、終点の岩瀬浜に到着。 そのまま折り返す人と、連絡するフィーダーバスに乗る人がほぼ半数位だろうか、でも私はそのどちらでもない。

実は北陸本線の富山駅から出ている富山ライトレールと、同じく高岡駅から出ている万葉線の先端部をつないでグルリと周遊する公共交通ルートが存在し(パンフPDF)、今日はそれに乗ってみようとプランを組んで来たのである。 しかし休日のしかも日に3便しかないこのコース、富山12時発のライトレールがちょうどその2便めとなるのだ。 早朝からモソモソと動き出し、急いで富山駅まで戻って来た理由はここにある。 ライトレールに続いては岩瀬浜から射水市コミュニティバスで新港東口まで行き、すぐ目の前の堀岡発着場からフェリーで港を渡って対岸へ、そこで万葉線に乗り継いで高岡まで至るという形だ。

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射水市コミュニティバス 岩瀬浜

射水市コミュニティバス

ライトレールの低いホーム上で少し待っていると、そのコミュニティバスらしき車がやって来てロータリーの片隅に遠慮がちに停まった。 しかし周囲にいた人達は誰も乗り込もうとしない。 私は一人歩み寄り、開いているドアの外から「これ、フェリーへ連絡するバスですか?」と尋ねてみた。 暑そうにタオルで汗を拭いていた運転手さんは「はい、そうです。」と答えてくれたので、安心してステップを上がり席に着いた。 結局、後に続いて乗って来る客は誰もおらず、時間が来ると「ビーッ」とひずんだ音のブザーが鳴って折戸が閉まり、バスは貸切状態のまま発車した。 もっと観光客がいるのかと思っていたが、こんな酔狂なルートを好んで乗るような人はあまりいないのだろうか? そういえば内装もかなりくたびれた感じで、あまり厚遇された路線ではなさそうだ。

出発すると一旦ライトレールに沿って蓮町まで南下し、そこから西へと向きを変えて進む。 蓮町からはフィーダーバスも出ているので、普通の人なら岩瀬浜まで行かずにここで乗り換えるだろう。 とすると、私は普通の人ではないという事になるが… まぁいいか。 港湾地区の広い直線道路をひとしきり走った後、バスは旧道らしき緩いカーブの続く狭い道へ入った。 乗るときに尋ねたので終点まで行くのはわかっている筈だが、運転士さんは律儀に停留場の案内テープを回し続ける。 もちろん、誰も「次降ります」のボタンを押す人はいない。 一方私は先ほどから、左手に遊歩道がずっと併走して続いているのを気にしている。 実はこれ廃線跡なのだが、今日は時間もなく残念ながら探索はお預けだ。

30分ほど走り続け、漁師町裏手の空地のような場所にバスは静かに停車した。 500円のワンコインを料金箱に入れ、砂混じりの地面に足を付ける。 目の前には小さな待合所があり、ここが富山県営渡船堀岡発着場、その向こうは新港の湾口だ。 フェリーが着くまで海でも眺めながらしばし待つ事にしよう。 ところで先ほどの廃線跡だが、かつて富山市電の新富山から神通川の西側を北上し、富山湾に突き当たると左に折れ、万葉線の新湊(現:六渡寺)駅へと繋がっていた路線があった。 それが富山地方鉄道射水線だが、新港が開設されたため湾口で路線が分断される形となり、港の西側に残った部分を万葉線に譲渡してそれ以外は後に廃止されてしまったという歴史を持つ。 本日の回遊ルートはそれを一部なぞったような形になっていて、これも私としてはぜひ乗ってみたかった理由の一つなのだ。

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バスと並走する射水線廃線跡