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2012/07 中央本線:富士見
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夏が来る。 草いきれ漂う農道から空を見上げていると、水を張った田んぼのどこかで蛙が鳴いているのが聞こえる。 上空には赤錆色の鉄骨が、白いムクムクとした雲を背景にその圧倒的な存在感を見せている。 川向うの緑濃い丘陵から唐突にトンネルを飛び出して来た線路が、空中を武骨な上路トラスで渡っているのだ。 だがその上をもう列車が走る事は無い。 なぜなら、中央本線の信濃境~富士見駅間で立場川を渡るこの区間は、今から30年以上前に新線へと移って行ったから。 そして残された鉄橋はそれ以来ずっと今日に至るまで、こうして静かに何事もなくここへ佇んでいるというわけだ。

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