横沢入
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 「人と生き物たちが同じ青空をながめて
 いる。同じきせつをかんじている。耳を
 すましてごらん、きこえてくるかナ・・・・」

地元小学校自然クラブの案内板より

五日市の横沢入は都市近郊に残された貴重な自然であり、開発か保護かで揺れた地域でもあります。一時期かなり新聞紙上などをにぎわせましたが、その後多くの人の努力により開発中止の英断がなされ、現在は手軽に訪問出来る里山として人々を迎え入れてくれます。これは 95年6月に訪問した際の記録です。


青梅から多摩川右岸を南下し、福生から平井川に沿って西へ進みます。ここらもありふれた郊外の風景ですが、ごみ処理施設とか、圏央道なんかで波風の立っている場所で、滝山街道をクロスして少し進むと、田んぼの真ん中を貫いて圏央道の橋脚が立ちはじめています。平井川を離れ、武蔵増子から五日市線の線路際をしばらく走ると、横沢入の入口に着きます。たずねる人が多いためでしょう、右手の路地入口に手書きの小さな看板が「横沢入は、この奥です」と教えてくれます。

何軒かの民家の間をすり抜けるとすぐにそれは出現します。というよりその空間にスポッとどこかから降り立った様な不思議な感覚です。三方を山に囲まれ、小さな田んぼと草地、その真ん中を小川がちょろちょろ流れ、外界の騒音はいっさい聞こえて来ません。山へ行けばいくらでも自然はあるけれど、鉄道や道路が周りを走り、住宅がすぐそこまで迫っているこんな場所に、こんな自然が残っているというのは実に不思議なものです。

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しばらく砂利道を進むと、地元小学校の自然クラブが書いた案内板が立っており、この地域の生態について説明されていました。自転車を降り、小川のほとりで朝食の店開き。ガスストーブの音さえはばかられる程にあたりは静かで、こういう所では、メタでとろとろとお湯を湧かすのが似合ってるなぁ....と思いました。からころと流れる小川を見つめながら、誰もいないこの空間を、一人で充分満喫しました。

腰を上げて横沢入を後に、峠を目指します。標高300にも満たない小さな峠ですが、途中で切り返しがあったりして、意外に侮れません。汗かきかき登っていると、上から下って来た車が静かに停車して、こちらの通過を待っていてくれます。片手で挨拶して通り過ぎましたが、こういう所では車も親切になってくれる様です。

辿りついた切り通しは、近くに送電鉄塔がある以外何もなく、殺風景な所でした。何かこのまま下ってしまうのは惜しいような気がして、振り向いてみても、もう横沢入の風景は見えません。子供にもあの風景を見せてやりたいな....下りながらそう思いましたが、同時に、それまであの自然が残されているだろうか..と、多少不安になったのも事実です。

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