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【1日め】立川0525発の甲府行きに乗り、甲府から松本行きに乗り継いで茅野着は0820。なんやかやと組み立てているうちに時計は9時を回ってしまった。午後からくずれるという予報だが、今の所天気はいい。Kintaro氏と二人走り出す。茅野の街中をはずれて、三井の森方面へと右折する。途端に道は上りだすが、まだまだ元気でグイグイ登れる。暑いとはいうものの、空はもう秋空めいて、すがすがしい気分だ。上りが少し落ち着いて来ると、景色は高原状となり周囲に畑や牧草地が広がる。遥か遠くには八ヶ岳がおいでおいでをしている。あんな高いとこまで行くのかと思うと一瞬気が遠くなりそうになるが、今夜は上で泊まりなのでジワジワと行く事にしよう。 尖石遺跡まで来て、木陰で少し休む。陽射しがかなり強くなっており、夏が又舞い戻った様な陽気だ。再び走り出して少し行くと三井の森の別荘地帯へと入って行く。道は広い舗装路がまっすぐ続いているがずっと上りで、時々平らになったかなと見える場所があるが、単に勾配がゆるくなっただけで相変わらず上っており、がっかりする。三井の森はかなり大規模な別荘地である。「こんなとこに別荘を建てられる様な人は、どんな人種なんだろうか。」等と思いながら黙々と登っていく。さて、地図の上ではとっくに一本線の道になって、林道へ入ってもいい頃なんだけど、相変わらず別荘地が延々と続いている。頭の中では舗装路はアプローチで、ダートになってからが本番という意識があるので、少々あせり出す。 結局、やっとこさ舗装路を突破して唐沢分岐までたどり着いた時は、もう疲労困憊だった。どこまでも続く別荘地は、精神衛生上よろしくない(特に自転車乗りには)。あんなに舗装が伸びているとは予想外であった。山の神様に道程の無事をお願いした後、すぐ脇を勢い良く流れる冷たい水で顔を洗って、やっと息を吹き替えす。その先は、道の締まった林間のダートで、しばらくは気持ち良く走れる。少し下りだしたなーと思うと、最初の徒渉地点へと到達。目の前にはこれでもか〜という感じで坂がそびえ立っており、思わずへなへなと腰をおろして休憩に入る。 その先は、等高線もグッと詰まっており、みんな乗って走るんだろうなぁーと思いながらも、ためらわず押しで行った。12時を回っているが、相棒のキャメルバッグの中が渇水状態で、水場まではお昼に出来ない。やっぱりアプローチをひよるのが正解だよなー、等と愚痴をこぼしながら、二人でとぼとぼ歩いて行く。テント場らしき場所を左に見ると、間もなく駐車場が見えて来て、桜台のゲートに到着。ヤッター!と、二人で下の滝を目指してふっ飛んで行く。 せっかくの水場だが、あまり飲用には適さない様だ。私は、レトルトのおかゆを暖めたので良かったが、相棒は水を使って調理しなければならず、苦労していた。お茶も沸かしてみたが、一くち飲んでやめてしまった。疲労回復には食後の昼寝が一番。沢音を聞きながら、私は河原の岩の上、相棒は止めてあったブルの運転席でしばらくウトウトする。ここまで、ちょっと時間をかけ過ぎたなぁ〜と思いつつ、まだ半分は本沢まで行くつもりでいた。 |
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そこから先は樹林帯に入り、道はさらに勾配を増す。空も曇って来ており、少し急いだ方がいいみたいだ。とはいうもののもうかなりバテバテで、足が思うように上がらない。乗ったり押したりしながら黙々と行き、沢を渡ると上の方に屋根が見えて来て、夏沢鉱泉へと到着。ここでやっと、おいしい湧き水をもらう事が出来た。一服していると、泊まり客らしいおじさんが出て来て、しきりにオーレン小屋を薦める。我々の結論が出るのに時間はかからなかった。躊躇なく、今夜はオーレン泊まりとする事を決断した。 ジープの止めてある脇をすり抜けて、いよいよ山道へと突入。空は薄暗くなって来たが、時間の余裕が出来たので心は軽い。何度かの休憩を経て、オーレンの前庭にころがり出た。オーレン小屋を皆が薦めるのを、この日泊まってみて納得した。部屋は新館の個室(料金は通常)、水はうまいし、料理も最高(この日はジンギスカン)、従業員も礼儀正しく、おやじさんの教育がすごくいいみたいだ。おまけに、新登山道開通記念とかで、オリジナルのTシャツまでもらってしまった。少し悔しかったのは、消灯後に窓から外を見るとこうこうと月が出ており、硫黄岳のシルエットが見えた事だった。次回はぜひ、本沢の露天風呂から眺めたいものだ。 【2日め】朝、雨音と共に目が覚めた。外を見るとジャブジャブと降っている。朝から気分が滅入るなあ、と話しつつ、峠で食べるつもりで宿に作ってもらったお弁当を部屋で寂しくかっこむ。雨足の少しおさまったところで、雨具をつけて出発。今日は、ここから峠まで30分程登れば、後は下る一方なので気が楽だ。雨は少し降っているものの、木が茂っているおかげで下へはあまり落ちて来なくて助かる。だんだんと、森が切れて来て風が強まり、峠の近い事を暗示する。そのうち発電機の音が近づいて来て、ついに白一色の霧の世界、夏沢峠に到着した。 小屋の前で行程を相談していると、窓から主人に声をかけられた。招き入れられるままに小屋に入り、暖かいストーブの前で熱いお茶をごちそうになる。相棒は、ここでやっとタバコを仕入れる事が出来てほっと一服している。オーレンにはタバコは置いてなく、小屋の従業員もここまで買いに来るそうだ。ふと柱にかかっているノートが目についた。開いて見ると「FCYCLEのみなさんへ」という書き出しで、お座敷さんの筆跡を確認する事が出来た。しばらく休憩の後、主人にお礼を行って下りにかかる。 |
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スペシャリストは乗れてしまうんだろうなと思いながら、安全を考えて無難に押して行く。下るにつれて霧が切れて来ており、木立の向こうに硫黄の爆裂火口壁がちらちらと見える。天気も回復に向かっているらしく、うっすらと日が射して来た。ちょうど、本沢に泊まった人達が登り出す時間帯と見えて、ターンを繰り返すたびに登山者と遭遇する。道を空けて待っていて、すれ違う時に挨拶を交わすが、「おー自転車ですごいね。」「いやいや...」というやりとりが最初は快感だったが、繰り返す内にさすがに疲れて来た。下りついて、本沢の露天風呂が眼下に望める所で、ティータイムとする。露天風呂は次回再訪のネタに取っておく事にして、今日は稲子湯を目指すとしよう。 本沢温泉でしばらく休憩の後、いよいよジープ道を下り始める。所々、木橋が渡してあったりしてなかなか面白い道だ。...と言っていられたのも最初のうちだけで、だんだんとジャリジャリになって来て、パスハンの650Bにはちとつらい下りが続く。相棒のMTBに後ろから煽られながら、必死で下って行く。途中一度、私が前輪を滑らして軽く転倒したが、二人ともパンクもメカトラもなく大幹線林道との交叉地点へ到達した。 後は大幹線林道を稲子湯へと下り、温泉で疲れと汗を落とした。さらに松原湖までのオンロードダウンヒルを楽しんで、松原湖畔で打ち上げのお昼を食べ、松原湖駅発1320の列車で帰途に就いた。列車から八ヶ岳を眺めながら、しばらくは心地よい疲労感に酔いしれていた我々であったが、清里からの観光客の大混雑でもみくちゃになろうとは、この時は予想していなかったのだった。 |