90 年の夏は3人で美ヶ原へ行きました。地上は熱帯夜の続くなか、天上世界で夢の様な涼しい一時を過ごしました。


美ヶ原〜蝶ヶ原林道〜別所温泉

 前夜の夜行にて早朝上諏訪着。乗り継いで下諏訪下車。駅前よりTelにてタクシーを呼ぶが、輪行袋が乗車拒否にあい、しかたなく8:41の樋橋行きのバスにて途中まで運ぶ。バスの転向場にて組み上げ、出発。和田峠へ向けて登坂車線を行く。ビーナスラインの下をくぐるトンネルは、信号付きの片側交互通行で、ライトのない我々は車に追い縋って必至で走る。料金所手前でひとやすみ。

 ビーナスラインを登る程に霧が立ち込め、扉峠手前の展望台に着く頃にはかなりの強風で寒い位。一度下り、台上への登り口にて軽く腹ごしらえ。気合を入れて登りだすが、途中の料金所あたりまでで力尽きる。料金所の係員が何か叫んでいる。よく聞くと「サービスサービス」だった。たった50円だがその気持ちに元気付けられ最後のアタック。急坂でカーブはアウトを行きたいが、車が多くて出来ないのがつらい。おまけにディレイラーの調整不足で、リアが最ローに入らないときた。ようやく山本小屋への分岐点に付き、その場にへたりこんだ。

 しばらく後続の二人を待ち、王ヶ頭へ向かう。後はたいした急坂はないし、車の入ってこない道なので、ポタリング気分でブラブラ走る。ハイカーの羨望のまなざし。しかし霧が濃くて何も見えない。途中、中年の女性ハイカー組にシャッターを押してもらい、おかえしにこちらも撮ってあげた。「美人に撮れてますよ。」に対して、「当然!」とのお言葉。最後のひと登りで、霧の中から忽然と鉄塔が現れ、スピーカーから流れる休憩所の名物おじさんの声に迎えられて自転車を降りる。

 寒いので早々に中に入って昼飯にする。麦ジュースで乾杯。カツ丼がないので牛丼にする。食後は夜行の寝不足もあって、テーブルでついウトウト。この間に全身の筋肉が緩んでしまった。さあ気を引締めて下るぞ。下の駐車場まで出るとそこから舗装になる。霧も晴れていい気分で飛ばして行くと、予想外の登り出現。勢いで登ろうとするが、中程まででクランクが回らなくなる。トロトロ登るが、食後すぐなので皆気持ちが悪くなり、頂点で息を整える。

 後は下る一方で、武石峠まで。林道に入るが、相変らず舗装が続く。但し道幅は狭く、さらに両側から雑草が覆い被さっているので、心細い道だ。鹿教湯への道を右へ分ける所からダートになる。台風通過後間もないためか、道はゴロゴロ、崖は今にも剥がれそうな岩盤の連続で、緊張する。烏帽子岩の見える辺りで、休憩。三才山トンネルからの道の見える見晴し台で再度休憩。先が見えて来たので、安堵感が漂う。途中で抜かさせてくれた軽バンが追い着いて来たが、やはりここで休憩タイム。我々は、一足先に出発する。最後に若干登って尾根を回りこむと、保福寺峠の屋根が見えてきた。やっと舗装に出て峠に到着。残念ながら、北アルプスは逆光でうっすらと。

 しばらく休んで下り出すが、あれっ舗装だ。黒々としてゆげの出そうなアスファルトがそのまま続く。何年かまえチューブラーで苦労して登ったガタガタ道を、皮肉にも650Bでスイスイと下る。保福寺もついにロードコースになったか。別所へ行くため、途中から大明神岳の肩を回る道に入るが、こちらは昔のままだった。しかし、途中で大規模な工事をやっており、別荘村か何か出来そうな雰囲気だったので、こちらも後何年もつか。鹿教湯への分岐を左へ、少し下って分岐を別所方面へ右折する。舗装の細道だが、結構尾根筋の高い所を通っており、仲々良い道だ。三人で流れる様に下って行くと、真正面に夫神岳が伸し上がってきて、村の中を行く最後の急登だ。一気に切り通しまで駆け上り、別所の市街地を下に見て、先行する車をあおりながら下って行った。

 駐車場の見えた所で道を尋ね、大師湯へ向かう。街中を流れる川沿いの小さな建物がそれだった。横に自転車を立て掛け、自動販売機で入場券50円を買って入る。小さな湯舟だが、満々とたたえられたお湯は程好い熱さで、日焼けの肌には多少ヒリヒリくるが気持ち良かった。上がって外へ出れば、炎天下ではあるがそよ風が気持ち良く、このまま帰りたいがまだ駅まで下って自転車をたたまなければならない。

 上田交通の別所温泉駅は、こじんまりとまとまった好ましい駅だったが、名物の丸窓電車は既になく(電留線に展示されており、喫茶W丸窓電車Wなんていうのも有る)、入って来る電車は元東急の青ガエルやらステンレスカーで、かなり異和感が有る。ともあれ、車上の人となってしまえば後は沿線風景を楽しみながら、レールのジョント音を子守歌に夢の世界に入って行くだけである。まだ、輪行バッグの階段登りという難行が待っているのだが。


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