さらに前になりますが、昔からのパートナー土田氏と一ノ瀬へ行った時の記録です。
車にて丹波山村外れのきのこ即売の露店近くまで運び、そこからスタートする。天候は今一晴れず、かといって雨が降るでもなく気持ちの上では憂欝であるが、坂道登りの条件としてはまずまずか。しばらくいつもの青梅街道をダンプやバイク等におどされながらよたよた登るが、3連休のせいか、今日は大型バスの姿もチラホラ見掛ける。大崩落跡の工事中個所を、対岸に迂回させられたりしてしばらく走り、おいらん淵の先の切り返し(ここのカーブに一ノ瀬からの出口がある。)を登る。あれほど深かった渓谷が不思議な程おとなしい流れとなって道に寄り添って来ると一ノ瀬落合に着く。ここまで約1時間。こんな山の中に集落がある事自体が信じられないが、さらにここから支流に沿って遡った奥の谷あいに、生活している人々がいるのだ。消防団車庫前にてしばらく休憩。正月にこの近辺で行なわれる祭りの由来等が案内板に書いてある。
■■■■■■■■■■一ノ瀬方面の看板に従い、脇道に入る。道は細いながらもちゃんと舗装されており、すぐ脇を、小川の様になった丹波川の支流が流れている。よいしょと登ると、かなり由緒有りそうな萱葺き屋根に、衛星放送のパラボラを乗せた農家が見えたりする。10分程度でさらに右犬切峠方面の分岐となり、ここから本格的な坂である。時々下って来るのはほとんど4駆かオフロードバイクで、もちろん自転車等は見掛けない。しかし、ほんとうに静かな登坂だ。よほど山深く入ってもどこかで車道の車の響きがするものだが、ここは全く人工の物音がしない。自分の発するタイヤと地面の擦れる音が唯一の人工音である。さて地図上では途中から一本線の道が右手に分岐している筈なのだが、それらしい入口を見付けられないまま、舗装の坂を登りきって峠に着いてしまった。
峠では、逆の林道側から上って来たオフロードバイクが、2〜3台休憩中だった。しばらく土田氏を待って、12時少し前であるが昼食にする。途中で仕入れたおにぎりを食べ、熱い紅茶を飲む。峠上は3叉路になっていて、さらに舗装の道が尾根上を右手へ進んでいる。その先は、一本線の道と合流して一ノ瀬高原側に下っている筈である。そう思って合流点を偵察に行ったが、やはりそれらしい道は見当らず、そのまま下ってしまいそうだったので、引き返した。峠に戻りダートの林道を下りだすが、周囲の山は広葉樹の原始林で、紅葉の頃に訪れたらさぞ素晴らしい景色が見られるだろう。ほどよい下りである。特にマウンテンで走れば楽しい下りとなろう。但し、休日なので時々4駆が登って来るので注意しなければならない。私も、危うくパジェロのラジエターグリルと仲良くなるところだった。
■■■■■■■■■■しばらくチェーンをガチャガチャ言わせて楽しんだ後、左からの里道を合わせ、さらに笠取山の登山道入口を横目で流し、砂防ダムの工事中の所で一息入れる。ボトルに手をやるが、泥を跳ね上げて斑点模様が付いている。飲み口の周りだけ手で拭き取って、ゴクリと飲む。路面は舗装となり、さらに下るとだんだん民家もちらほらして来て、あたりは高原村の様相を呈して来た。地図で一ノ瀬高橋とあるのを、最初一ノ瀬高原と誤読したりしていたが、案内板を見ると実際そう呼ばれているらしい。ちなみに、越えてきた峠も5万図では大切峠となっているが、地元の案内板では犬切峠であり、点一つの差でだいぶ物騒な名前となっている。白樺林の中にコテージなんかが有ったりして、中々雰囲気はよろしい。東京から安上りの交通費で高原気分を味わえるとっときの穴場だ。
■■■■■■■■■■さらに下ると道は一転して穏やかな高原から、断崖絶壁を這ううねうね道となる。かなり遠くの下の方に青梅街道のヘアピンが見え、切り返す車の窓がキラリと光る。いくつか谷を回り込んだ後、いつの間にかそのヘアピンカーブの頂点にストンと降りた。街道を行く車の騒音が、やけに懐かしい響きに思えた。