小さな金田漁港を過ぎると道はやおら丘へ向かって登り出す。 いきなりなので少々あせりながらシフトダウン。 心の中でひぃひぃ言いながらペダルを押して行くと、坂道のカーブの途中、ガードレールの脇に何かの固まりが落ちている。 いや違う。 近づくとそれがゴソゴソ動き出したので面食らったが、よく見ると先程のバイクの女性がしゃがみ込んでカメラを構えているのだ。

「何だ？海をバックに坂を登る俺を写すつもりか？」なんて思いながらその前を通過。 彼女のバイクはその先の路肩に停めてあった。もう少し登ったところで力尽き、私も地面に脚を着いてしばし息を整える。 そのうち遠くから「ドっドっド」という重低音が響いて来て、ツーリングのバイクグループが一陣の風を残して坂を駆け上がっていった。 彼女は一人先行し、その雄姿を写真に収めるべく待っていたのだった。 レンズの前で緊張してばかをみた。