河原の土手を走っていたら、面白そうな小径を見付けた。
博物館の脇から裏手の山へ向かって、藪へと分け入っている。
最初は腹ごなしにちょっと登ってみようか、程度で気軽に踏み込んだが、
沢沿いの道が斜度を増し、砂防ダムを二つ三つ乗り越えたあたりで
だんだんと後悔が頭をもたげて来る。
えーいままよ、と自転車を引きずりつつ高みを目指すと、
じきに頭上の樹林が切れ、枝の間から青空が覗く。
登り着いたそこは羽村神社という山上のお社。
境内の一番奥手には多摩川を見下ろす展望台があり、なかなかの景観。
自分の住んでいる街をこうして俯瞰出来るのは、新鮮な驚きだ。
展望台を後に稜線上を少し移動すると浅間岳。
山頂の東屋には初老の男性が一人、草笛を吹いていた。
かなり山深くまで入り込んで来た気分で向こうを見下ろすと、
そこにはゴルフ場の芝生が広がっていて少々ガックリ。
そこから尾根伝いに西へ行けば満地峠がある筈だ。
と思って、グリーン外周のフェンスに沿って、自転車を走らす。
途中で先程の展望台を見上げられるスポットを通過したが、
足元が予想外に断崖絶壁だったので驚いた。
こぶを幾つも越え、まだかまだかと自転車を押してトボトボ歩く。
山道と獣道が直交したような谷を通過したが、ここが満地峠か?
そのうちに左手は宗教団体の敷地境界となり、コンクリート塀の下を
しばし進むと、ポッカリと山中に開けた旧道の開削空間へと降り立つ。
トンネルの抜ける前はここが滝山街道だったわけだが、
そのトンネルですら新トンネル開通で今や旧道となり、ここは旧々道。
とするとさらにその上の山道は、旧々々道になるわけかな?
現在この旧々道は羽村側のみ通行可能で、秋川方面は
先程の団体敷地にすっぽりと吸収されてしまったようだ。
人も車も通らないこの場所は、山中を風が通過して行くばかり。
切り通しに嵌め込まれたフェンスに背を向け、
自転車に跨り一気に多摩川まで駆け下りる。
苦労して稼いだ高度だが、一瞬のうちに下りきって
交通量の多い滝山街道へと飛び出した。
車を避けて、小作堰の管理橋へとハンドルを向ける。
橋上から振り返って見ると、こんもりとした山稜が
早春の空の下に寝そべっていた。
多摩川サイクリングロードを福生、羽村あたりまで遡上して来ると、川向こうに緑の丘が段々と膨らんできます。このあたりが羽村草花丘陵と呼ばれるエリアで、実は丘の上には住宅地やゴルフ場が散在しているんですが、こちら側から見る限り、それはちょっとした山岳地帯。なかなか魅惑的な道が手ぐすね引いて待っているのです。
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