りんりんロード.1(2019/04)

ここ5~6年、行きたい行きたいと思って計画したものの、行き逃していた場所がある。 それは、ジャストのタイミングの日に何かの用事があってダメだったり、たまたま空いていても天気が悪かったりで、例年見送っていた為である。 それが茨城にある筑波鉄道廃線跡、かつてNiftyの自転車フォーラムでオフ会が何度か開催された事もあり(私は参加出来なかったが)いつか訪問したいと思っていた。 心の中で長年温めていた念願のその場所を、今年の春ようやく訪れ走破する事が出来たのだ。

この季節に拘った理由は勿論、満開の桜を観るためだ。 現在そのほぼ全線がサイクリングロードとして整備され、沿線に植えられたものや鉄道時代から駅を囲む様に育った桜が、随所で春の訪れを楽しませてくれるという。 特に雨引駅跡に咲く桜は見事で、静かなお花見が出来ると聞いている。 だから筑波鉄道を訪問するのだったら、絶対お花見日和の日を選んで行くと心に決めていたのである。

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土曜早朝、久々の輪行で余裕を持ち過ぎて最寄駅に来てしまったが、自転車は予想以上にすんなりと輪行バッグに収まり、予定していた東京行の前に2本も電車を見送る結果となった。 その心は、重い自転車を担いで階段の昇り降りを繰り返したくないから。 目的地の土浦まで、乗り換え2回のみで到達する計画をたてて来たからなのである。 中央線直通の青梅特快に乗り、神田で山手線に乗り換えて上野へ。 高架の常磐線ホームへ降りて行くと、既に勝田行きの列車がドアを開けて待っていた。

やはり目当ては同じなのか最後尾の車内にはグループの輪行客が陣取っており、集中を避けるため私はその前の箱へ。 発車してしばらくすると車内には案内音声で「輪行の方は自転車が倒れないように…云々」等と注意が流れ出す。 アナウンスで自転車に触れるのは珍しいなと調べてみたら、常磐線ではこの時期に輪行推奨列車を設けており、私の乗ったこの列車この車両(上野方3両)がまさにそれに合致していたのである。

早起きがたたってウツラウツラしている間に、列車はいつしか江戸川を渡り利根川も渡り、茨城の平野部を疾走して行く。 やがて降車準備客で車内がざわつき始めると土浦駅に到着、重い輪行袋をかかえて階段を登り改札を抜ける。 改札を出た所すぐには自転車とサイクリストが多数、橋上駅舎のコンコース内で組み立てる人がいるのかとビックリしたが、一般客の邪魔にならないだろうか?

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駅ビルにはサイクルベースが設けられていてレンタサイクルやシャワーもあり、色々とメカ的なサポートも受けられる。 至れり尽くせりだが、私はそれに甘えず(笑)、駅前を外れた小広場で一人自転車を組み終えて走り出す。 駅外れの信号を渡った所が自転車道「つくば霞ヶ浦りんりんロード」のスタート地点だが、そこはまさしく筑波鉄道の線路敷跡。 後ろを振り返って駅構内を覗いてみたが、ホーム跡の敷地はすっかり駅ビルに飲み込まれてしまったようだ。

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しばらく線路沿いに走り、やがてゆっくりと左カーブを切って常磐線から離れると、目の前には新川が現れる。 その手前にちょうどコンビニがあったので、ここでトイレを済ませてお昼の食材も調達しておいた。 新川沿いの桜は満開で見頃を迎えているが、今日はこの先が長いのでここでゆっくりはしていられない。 川を渡り再びりんりんロードに入ると、そのすぐ先にいきなりホーム跡が現れる。 ここは「新土浦」駅があった場所との事だが、土浦との駅間はかなり短かったとみえる。

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線路跡は市街地を抜け、徐々に郊外へと進む。周囲に田園地帯が広がって来ると、そのあたりから思わぬ伏兵が現れた。 それは筑波降ろしと言うのか、真っ向から強烈な向かい風が吹いて来るのだ。 これにはこの先しばらく苦しめられる事になるのだが、何しろ漕いでもまったくスピードに乗らず、道は平坦なのにずっと緩い勾配を登っているかのような脚の重さなのである。

今日は坂道もないので、惰性で軽くササーっと走り切ってしまおうと考えていたのだが、これには参った。 風の影響を受けないよう頭を下げ、地面を見ながら黙々とペダルを漕ぐ。 パワーのある若いローディ達はそんなのお構いなしで、後ろからビュンビュンと抜いて行く。 途中でツーリスト風のグループに追いついたので、しばらくその後部にひっついてズルをし、風を除けさせてもらった。

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サイクリングロードは所々で車道と交差する。 当然、鉄道当時は踏切だった場所だが、地元の車は概して親切で、こちらがかなり手前にいても視界に入ると必ず停車して待っていてくれる。 もう、踏切だった頃の名残で一時停止するような人はいないだろうが、サイクリストに対するやさしさが感じられてとても嬉しい。 一方で大きめの道路で横断歩道だけの所では、地域外の車が多いためか、こちらが待っていても停まってくれるとは限らないので、注意が必要だ。

虫掛、常陸藤沢を相変わらずの鈍足で通過。 各駅跡には総じてホームが残っており、基点からのキロ数も書いてあるので位置確認は容易だ。 走りはつらいが、沿道や駅周辺の桜が満開に近く、気を紛らわしてくれる。 田土部駅あたりまで来ると、右手には大きな山塊が迫って来る。 一瞬その頂の一つが筑波山かと思ったが、どうもあまり高くないので、見えているのはまだ前衛の山々のようだ。

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やがて行く手の正面に低い土塁が見えて来て、自転車道はその周囲に沿うように左手へと迂回する。 これは小田城郭跡の史跡で、かつては筑波鉄道がその真ん中を貫いていた。 最近と違って昔は文化財を守るという意識が社会的に然程無い時代だったから、こういう敷設でも許されたのだろう。 現在では発掘調査と整備を終え、2016年から「小田城跡歴史ひろば」として公開されている。 休憩所があったので自転車を降りて一休み。 真新しい立派な水洗式トイレがあるので、用を足すなら(笑)お奨めの場所だ。

しばし城跡を観察しつつ休憩し、また走り出す。 すぐ先にある常陸小田駅のホームを通過すると再び周囲の風景は開けて来て、気がつけば、右手前方に筑波山が優美な姿を見せている。 風は止むどころかますます激しく吹いていて、油断すると押し戻されてしまいそうだ。 楽勝気分で出かけて来たが、最近は全然走ってなかった事もあり、ゴールまで辿り付けるだろうかと少々不安になる。 案内板によると先程の小田城跡で土浦からまだ13kmほど、終点の岩瀬まで40kmとすると全体の1/3程度しか進んでいないのだ。

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