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8. 土佐電:桟橋線

夕暮れの高知市内、予約した宿でチェックインを済ませ、最寄りとなる蓮池町通から手ぶらで桟橋線の南行き電車に乗る。 信号を待って、道路中央のホームへ向かうべく横断歩道を渡ると、間違って逆方面の乗り場へ行ってしまった。 この電停は、上下線のホームが交差点を挟んで向かい合った位置にあるのだ。 結局、さらに横断歩道を3回渡って十字路をグルリとほぼ一周する形になったが、駅前通りなので信号待ちの長いこと。 その間に電車が行ってしまったりもして、かなりのタイムロスとなった。

Photo 蓮池町通ホームより、一本乗り逃がした電車を後追いで撮影。スカーレット色を纏ったこいつは、名鉄美濃町線を走っていたモ590ではないか!

やって来た次の600形電車にようやく乗り込み、桟橋通五丁目の終点へと向かう。 外はまだ蒸し暑かったが、電車に乗るとかなり冷房が効いていて寒い位だ。 車内は空いており客はそれほど乗っていないが、それも次のはりまや橋で大半が降りてしまった。 残った客の中に浴衣姿の親子連れがいる。 これからどこかで花火大会でもあるのだろうか。 その二人も鏡川を渡ったあたりで下車してしまい、終点が近づく頃には車内は私一人になっていた。

Photo 桟橋線の終点、桟橋通五丁目に到着。直前で単線となった線路を囲む頭端式ホームにはモダンな屋根が付いている。かつては何もない簡素な終点だったという
Photo 桟橋通五丁目停留場。48年前はもっと堤防が低く、海面も見えた。後方の建物は鉄道関係ではなく、海事代理士事務所と書いてある

長いこと信号待ちをして、斜めに道がクロスするだだっ広い交差点を電車が渡ると、そこが桟橋線の終点、桟橋通五丁目だった。 桟橋とは言うものの、このあたりでは高い堤防に視界を遮られて、残念ながら海はよく見えない。 電車を降りると私は、今来た交差点を戻って車庫を見学に行った。 終点の一つ手前が桟橋車庫前電停だが、終点からは信号を間に挟んですぐ向こう側の位置にあるので、大して離れてはいない。

Photo 桟橋車庫前電停から至近の桟橋車庫、転線して右はじへ入っていったハートラムが見える。奥に大きな車庫の建物、その背後は高知の南嶺、鷲尾山だ

向かっている最中に、車庫からその前の路上に最新型のトラムが出て来た。 そのままどこかへ走り去るのかと思ったが、一度停車した後しばらくすると再び車庫に入ってしまった。 どうも入れ替えで転線をしていたようだ。 広大な桟橋車庫は土佐電の電車を一手に引き受けている。 以前は各線毎に車庫があったようだが、現在は一部の留置線を除いてここだけに集約されている。 入口から覗き込むと、オリジナルや他社からの譲渡車など、色々な電車が停まっていて興味は尽きない。

申し出れば見学もさせてもらえるようだが、時間もだいぶ遅くなって来たので今回は見送りに。 しばらく観察した後ふと気づくと、山の方から真っ黒な雲が上空を高く覆って来ている。 これは夕立でも来そうな気配、日が沈んでだいぶ暗くもなって来たのでそろそろ切り上げ時とし、そこから電車に乗り込み駅前へ向かった。 JRの高知駅前は初めて訪れるが、高架化により整備される際に、路面電車も駅に接する位置に延長されて便利になった。 さらに高架下を潜って駅北側へと路線を延ばす構想もあったが、さすがにそれは実現しなかったようだ。

Photo 高知駅前停留場に到着。3面2線の櫛形ホームは、JR高知駅高架化に際して2009年に従来より30m前進して整備されたものだ

高知駅の構内でお土産を物色した後、ホテルへ帰る前に、この日の最後として再び電車に乗って播磨屋橋を見物に出かける。 もちろん電停を通るたびに車内からチラチラと眺めてはいたが、実際にまだ橋を間近で見ていない。 そこは以前の出張の際にも通りかかったが、タクシーの中から同行の人に「ここがはりまや橋の橋ですよ」と教えてもらった程度。 「はりまや橋の橋」と言われないと気づかない程の目立たない観光地であるのは、かねてより認識はしていた。

Photo 昔の姿を復元した播磨屋橋。本物は国道上の橋になるので、背後に見えている灰色の親柱が現在の播磨屋橋という事になる

よさこい節…、いや私の中では、ペギー葉山の「南国土佐を後にして」の間奏で流れるよさこい節の一下りの中に出て来る「はりまや橋」である。 その下を流れる川は既になく、やたら広くなった道路により、橋の長さよりも幅のほうが長くなった。 現橋の横には昔の姿を再現したレプリカが出来ていて、そちらの方が写真スポットとなっている。 日本三大がっかりとも言われているが、橋で言ったら東京の日本橋の方がまだガッカリだろう。 そんな事を思いつつしばらく見学した後、宿に帰ってこの日は終了となった。

9. 土佐電観察

翌日は朝8時にホテルをチェックアウト。 今日は徳島への移動日なのだが、普通列車で時刻上繋がるのが10時過ぎなので、駅へ行くにはまだ早過ぎる。 ならば宿でゆっくり寝ていても良かったのだけど、せっかく遠路来ているのに勿体無いから、時間まで電車の撮影でもしようと考えた。 普通なら高知城あたりを見学に出かけるところだが、今回は全くそんな気が起きなかった。 まだシャッターの開いていないアーケードの商店街を抜け、公園の脇を通ってはりまや交差点へ。 少し西側に大通りを渡る歩道橋を見つけて、その上から撮影を試みる。

Photo 歩道橋上から、はりまや交差点を望む。手前が伊野・後免線のはりまや橋電停、奥が後免線のデンテツターミナルビル前電停、直交しているのは桟橋線で左が高知駅前方向
Photo 同じ場所で反対方向を向くと、次の掘詰電停が見える。土佐電のトレードマークとも言える「ごめん」の表示板を掲げた600形が発車しようとしている

日曜朝ではあるが、電車は次々やって来るので撮影するに苦労はない。 だが、ひらがな書きで「ごめん」行きの札を掲げた電車を撮ろうと思うと、これが意外と少ない事が分かってきた。 もう一つ、交差点に4方向の電車が揃う瞬間を狙ったが、こちらもなかなかタイミングが合わず、時間切れで諦めざるを得なかった。 こういう時は変に作った構図でなく、自然に任せた方が良い写真が撮れるだろう…というのは負け惜しみか?

Photo 時間待ちの間、歩道上で電車ウォッチング。車庫からの回送だろうか、桟橋線から伊野線へとポイントを渡っていった電車があった
Photo 飛び乗った電車は、冷房の良く効いた古豪200形初号機だった。日曜朝、桟橋線高知駅前行きの乗客は7~8名、うち観光客の占める割合は半分程度だろうか

歩道橋の上は日差しを遮るものが無いので、しばし撮影ののち階段を降りてはりまや交差点へと移動。 繁華街の大通りを縦横に通過して行く電車を眺めているだけでも、なかなかに楽しい時間だ。 という事で、朝の撮影はこの辺で終了。 一日乗車券は昨日で終わってしまったので、この後は駅まで歩こうと思っていたが、長いこと路上にいたからか暑さで頭がクラクラして来た。 桟橋線は全線が200円均一のエリア内なので、コインを握って電停から駅前行きの電車に飛び乗った。

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